2016年9月28日(水)
立憲主義破壊の自民改憲案
衆院本会議で首相が撤回「拒否」
安倍晋三首相は27日の衆院本会議の答弁で、自民党改憲案の撤回を求めた民進党の野田佳彦幹事長に対し、「撤回しなければ(憲法審査会で)議論ができないという主張は理解に苦しむ」と述べ、「拒否」する姿勢を明確にしました。
安倍首相は「わが党の案をベースに」改憲論議を構築すると公言しています。しかし、自民党改憲案は、「個人の尊厳」を根本とする立憲主義と、日本国憲法の基本理念を全面破壊するものです。憲法の名に値しません。
憲法の「改正」とはあくまで、憲法の基本理念を維持しつつ、その実現に必要な改良を図る範囲で許されるもの。基本原理を全面破壊するような「案」は論議のベースになり得ません。
自民党改憲案の中身は、憲法13条の「個人の尊重」原理から、「個人」という根本概念を消し、97条の人権の永久不可侵規定は全面削除しています。99条の趣旨を曲げて「国民」が憲法を守るものとされており、国家権力を縛るという憲法の意味が自民案では百八十度逆転してしまいます。さらに自民案は、「公の秩序」による人権制約を認め(13、21条)、時の権力者の恣意(しい)的判断で人権制約が可能になります。個人を消し国家最優先の「憲法」へ逆戻りさせます。
9条については、戦力不保持を定めた2項を全面削除し、世界中で無制限の武力行使を可能にします。前文にある侵略戦争への反省・不戦の誓い、平和的生存権の規定をすべて削除しました。平和主義の全面否定です。
天皇の元首化や表現・結社の自由に対する「公益」による制約は、国民主権・民主主義の否定につながります。
立憲主義を根本破壊するこうした自民党改憲案に固執する安倍首相と自民党自身に、憲法を論ずる資格がないというべきです。
(中祖寅一)