2016年9月27日(火)
主張
首相所信表明演説
国民に隠しての暴走は許さぬ
参院選後初の安倍晋三首相の所信表明演説を聞きました。「国民の負託に応える」「結果を出していく」といいますが、国民が懸念を強めている戦争法の具体化や沖縄の基地問題、経済政策などについてはまともな説明はありません。環太平洋連携協定(TPP)の批准や憲法改悪の推進については強硬姿勢があらわです。安倍首相は演説の中で「未来」や「世界一」といった言葉を乱発しましたが、国民に隠れ、国民の意に背いた暴走を押し付けるのは絶対容認できません。安倍政権に国民の未来をゆだねることはできません。
戦争法には一言も触れず
安倍政権が国民に隠れて暴走している最たるものは、戦争法の問題です。所信表明演説では「戦争法=安保法制」について一言も言及しませんでした。
1年前、昨年9月の国会で安倍政権は国民多数の反対を押し切って戦争法を強行しました。憲法学者や法曹関係者からも相次いだ憲法違反との批判に対し、安倍首相は成立後も丁寧に説明すると弁明しなければなりませんでした。ところが安倍政権は国民に説明するどころか、今年の通常国会でもまともに議論せず、3月には施行を強行しました。
しかも参院選がすむまでは戦争法発動の具体的内容を示さず、参院選が終わった途端、南スーダンで活動する自衛隊への「駆け付け警護」「宿営地共同防護」などの任務付与を念頭に置いた訓練を開始するありさまです。着々と具体化を進めながら、文字通り国民に隠れてことを進める態度であり、戦争法の発動に反対し、廃止を求めるたたかいがいよいよ重要です。
安倍首相の所信表明演説は、参院選が終わった途端強行している沖縄・東村高江の米軍オスプレイパッド(着陸帯)の建設や、辺野古での米軍新基地建設のための策動などについてもまともに説明しません。常軌を逸した暴走を繰り返しながら「負担軽減のため」などとごまかすのは、まさに国民・県民の感情を逆なでするものです。沖縄県民は決して強行を許しません。
今度の臨時国会は、安倍政権が参院選後発表した事業規模で28兆円に上る経済対策を具体化した補正予算案が最初の焦点です。大型の対策を持ち出したこと自体、「アベノミクス」の行き詰まりを証明するものですが、演説は相変わらず“自慢話”の連続です。「政策総動員」という以外、なぜ大型対策が必要なのかの説明さえありません。補正予算案が大型開発を借金で賄っていることと合わせ、国民に対して不誠実この上ない態度です。
首相はTPPでも「早期発効」というだけで批准を急ぐ姿勢です。
自民案ベースの改憲誘導
安倍首相の所信表明演説で見過ごせないのは「憲法審査会での議論を深める」と改憲を推進する姿勢をあらわにしていることです。首相は国民に改憲案を示すのは国会議員の責任だと、改憲の具体的な中身は示さないまま、議論を誘導しようとしていますが、それこそ改憲のための改憲です。
自民党は自衛隊を「国防軍」にするなどの改憲案を準備し、それが「ベース」だと公言しています。自民党の改憲案を「ベース」にすることさえ隠す首相の改憲誘導の危険性は明らかです。改憲策動の阻止がますます緊急の課題です。