2016年9月25日(日)
主張
核兵器廃絶国際デー
禁止条約への扉を開くとき
あす26日は、国連の「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」です。2013年の国連総会「核軍縮ハイレベル会合」にちなんだもので、各国で核兵器廃絶をめざす多様な行動が繰り広げられます。
歴史的な国連総会に
9月13日に開会した今年の国連総会は、「核兵器のない世界」への具体的な一歩を踏み出せるかどうか、大きな注目が集まっています。
今年2月から行われてきた、「核兵器のない世界」のための法的措置を議論する作業部会は8月19日、17年に核兵器を禁止する条約などについて交渉を行うことを国連総会に勧告する「報告」を採択しました。国連総会が、交渉開始の決議をすれば、新たな前進が期待できます。すでにオーストリアのセバスチャン・クルツ外相は9月22日、「核兵器を禁止する包括的な協定の交渉を2017年に開始するための(総会)決議案」を他国と共同で提案することを表明しました。10月3日からの第1委員会の討議が焦点となっています。
長年にわたって、世界の反核平和運動と多くの非核保有国が求めてきた、核兵器禁止条約の交渉が提起される画期的な情勢がうまれつつあります。
これは世界の反核世論が、切り開いてきたものです。とりわけ被爆者を先頭とする日本の原水爆禁止運動の果たしてきた役割は大きなものがあります。この10年間だけでも、国連と核不拡散条約(NPT)再検討会議に日本から寄せられた署名は3600万人分を超えます。これらは国連や諸国政府からも高く評価されてきました。被爆者の被爆証言が、国際政治に大きな影響を与えてきました。こうした市民のたゆまぬ活動が、「核兵器のない世界」をめざす諸国政府の努力とあいまって、新しい画期的な情勢を開いてきたのです。
それだけに、追い詰められた米英仏中ロの核保有国は、この流れに抵抗し、対立の姿勢を強めています。米国務次官補は、国連作業部会の勧告を「国際社会の溝を深め、現実的で実際的な段階を踏みながら前進することを、より難しくさせる」と非難しました。しかし、「段階的にすすむ」(ステップ・バイ・ステップ)というやり方は、「核兵器のない世界」を永遠のかなたに追いやるものでしかありません。それは戦後の核兵器をめぐる交渉の現実が示しています。
核兵器に固執する勢力を包囲し、その抵抗を打ち破って、核兵器禁止条約の交渉開始への扉を開くことができるかどうかは、今後の世界の世論の発展にかかっています。反核平和運動にとっても、国際政治にとっても、正念場といえる重要な局面を迎えています。
国際的責務をはたして
被爆国である日本の政府が、核保有国と同様に「段階」論を主張し、核兵器禁止条約に背を向けていることは重大です。核軍縮をいいながら、それに背く行動は、作業部会でも「詐欺的で不誠実」(元オーストラリア外交官)と批判されました。
この姿勢をただすのは、日本の運動の国際的責務です。全国では、「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(ヒバクシャ国際署名)が、従来の運動の枠をこえて広がりつつあります。9月末までに集めた国際署名は国連総会に提出されます。国民的な運動の発展が強く期待されます。