2016年9月24日(土)
きょうの潮流
1兆円を超える事業費を投じたすえに廃炉へ動きだした高速増殖炉「もんじゅ」。ここまで野放図に継続したのも、同炉が日本の原子力政策の本命として位置づけられてきたためです▼その国産化が目標に掲げられたのは60年前のこと。国の原子力長期計画に「原子燃料資源の有効利用の面から見て、増殖型動力炉が、わが国の国情に最も適合すると考えられる」と明記されました▼高速増殖炉の実用化の目標は当初1980年代後半とされましたが、95年のナトリウム漏れ・火災事故をはじめ事故やトラブルでほとんど運転していません。安倍政権の「エネルギー基本計画」では、ついに「高速増殖炉」の言葉さえ消えました▼核燃料サイクルは、原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して再利用します。炉内で消費するプルトニウムより多くのプルトニウムを生むとする高速増殖炉は、サイクルの柱です。「夢の原子炉」と宣伝され、重大事故が起きても政府は強引に開発を進めてきたのです▼政府の原子力関係閣僚会議が、もんじゅについては「廃炉を含め抜本的な見直しを行う」との方針を確認しました。もんじゅの廃炉が検討対象なら、プルトニウム循環を中心にした核燃料サイクル政策の破たんを意味します。世界から、大量のプルトニウムを保有する日本に対する核兵器開発の疑惑の目も強まります▼にもかかわらず閣僚会議は核燃料サイクルを推進する新計画も発表しました。内外に破たんを取り繕う姿でしかありません。