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2016年9月21日(水)

きょうの潮流

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 漫画から翼を奪う。何も描けなくなるかもしれない―。6年前、表現の自由を規制する動きに、そう言って危機感を募らせたのが「こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)」の作者、秋本治さんでした▼当時の石原都政が、漫画やアニメの性描写を規制する条例改定をごり押し。恣意(しい)的な規制は創作活動を萎縮させるとして、漫画家や出版関係、法曹界をはじめ、広範な人びとから反対の声が上がりました▼「こち亀の両さんが普通の生活をするようになったら、漫画として成り立たなくなる。自由度があるのが漫画の世界」。秋本さんは、都庁で開いた反対会見で仲間とともに訴えました。なにものにも縛られず、なによりも自由な発想を大切にしてきた漫画家の叫びでした▼1976年から週刊少年ジャンプで連載を続けてきた「こち亀」が終わりました。幅広い年齢層の多くの読者が別れを惜しむ中、最終話は大団円。自然な形がいいと話していた通りの幕引きでした▼浮き沈みの激しい連載漫画の世界で40年も続いた長寿作品。週に1話を絞り出すために気が狂うほど苦しんだという漫画家の話を聞いたことがありますが、秋本さんは「描いていて楽しかった」。ハチャメチャでパワフルで下町の人情が流れる主人公の“両さん”にいつも助けられたと▼筆者が初めてこの漫画にふれたのは中学生の頃。ともに歩んできた時を振り返りつつ、ときの権力者によって表現の自由が脅かされている今、それとたたかった作者の思いも胸に刻んで。


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