2016年9月20日(火)
主張
高齢者の暮らし
安心の長寿社会の基盤壊すな
今年発表された日本の平均寿命は男性80・79歳、女性87・05歳へと記録を伸ばし、世界トップ水準を維持しました。「人生80年」時代がいよいよ本格化する中、「敬老の日」の19日には、人生の先輩をお祝いする大小さまざまな催しや交流が行われました。「戦争法強行1年」の節目の行動に取り組んだ高齢者の方々もいらしたことでしょう。それぞれの持ち味を生かして、個性豊かに暮らす高齢者の姿は、次の世代の大きな励みです。誰もが年齢を重ねても平和で安心して暮らせる社会にしていくことが、ますます大切になっています。
病気や介護への不安強く
100歳以上の人は昨年より4千人余り増えて推計6万5692人となり、過去最高を更新しました。今年は、「敬老の日」が祝日になってちょうど50年ですが、当時100歳以上は252人でした。日本が世界に誇れる長寿社会へ成熟を遂げてきたのは、医療技術の進歩とともに、日本国憲法の下で、医療や福祉、暮らしの諸制度を守り発展させてきた国民のたゆまぬ努力と運動のたまものです。今後も長寿社会の進展に合わせ、高齢者の安心を支える社会保障などの仕組みをさらに充実させていくことが重要なのは明らかです。
ところが、いま日本の高齢者をめぐる現状は、長寿を心から喜べるものとはいえません。公的年金だけではとても生活が維持できず、多くの高齢者は無理をしても働き続けざるをえません。医療や介護の費用がかさむことへの不安は大きく、政府の60歳以上に対する調査でも、62・3%が貯蓄目的に「病気・介護の備え」を挙げています。貯蓄も尽きて生活保護を受給する高齢者も増え続けています。
1人暮らしの高齢者が増える中、「孤立死・孤独死」を身近に感じる65歳以上が増加傾向なのも深刻です。実際、東京23区内では年約2900人が自宅内で誰にもみとられずに亡くなっています。あまりにも痛ましい事態です。
長寿社会の土台を揺るがす制度改悪などを繰り返し、高齢者と家族に負担と苦難を強いてきた自民党政治の責任は重大です。安倍晋三政権が進めている社会保障大改悪は、安心の老後を求める国民の願いに真っ向から逆らうものです。高齢者人口が増えて社会保障費が増えるのは避けられないのに、予算編成のたびごとに、高齢化にともなう「自然増」を無理やり削減するやり方は、高齢者にたいする冷たい姿勢を象徴しています。
高齢者を大切にしない政治では、若者など次世代の未来も開けません。医療や介護、生活保護など社会保障の各分野で、負担増と制度改悪の具体化を加速させている安倍政権の暴走にストップをかけ、暮らしを守る社会保障へ再生・拡充させるために、全ての世代が力を合わせることが必要です。
災害や事故から命を守り
先の豪雨災害では岩手県岩泉町の高齢者施設が濁流にのまれ9人もの命が奪われました。災害が多発する中、避難に時間がかかり、手助けが必要な高齢者のような「災害弱者」を守る仕組みと制度の再点検と改善・拡充は急務です。
認知症の高齢者が事故などにあわず安心して暮らせる地域づくりも必要です。高齢者に優しいまちをつくることは、障害者や子どもをはじめ多くの住民の安心・安全を保障する基盤にもなります。