2016年9月15日(木)
台風被害から2週間 電気・ガス・水道まだ
元の生活 戻りたい
岩手・岩泉町
台風10号の記録的な豪雨によって、死者19人、行方不明者3人(14日午前6時現在、岩手県調べ)という甚大な被害を受けた岩手県岩泉町。被災から2週間を経ても、現地は復旧にはほど遠い状況です。
(高橋拓丸)
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同町の面積は東京23区の約1・5倍(992平方キロメートル)。各地に集落が形成され、人口約9700人が生活しています。被災直後、町内各地の道路が崩落、冠水で寸断され、一時は約900人が孤立していました。
人手足りない
9人が亡くなったグループホーム「楽ん楽ん(らんらん)」がある乙茂(おとも)地区から町中心部へ向かう国道455号は、通行は再開したものの片側1車線に制限された区間もあり、道路脇には木や横転した乗用車がいくつも残されたままです。電気も復旧しておらず、トンネル内は完全な暗闇でした。重機で作業をしていた建設業の男性(52)は「まずは通れるように道を開けています。申し訳ないけど、それ以外は後回しになってしまう。手が全然足りていません」と話します。
乙茂地区から下流に進んだ袰野(ほろの)地区は、元は田園地帯でしたが、低地にあったため、被災した夜は一面が巨大な川のようになりました。道路も田畑も濁流に流され、今は面影もほとんどありません。元は道だった部分に応急で砂利を敷いた道路を、新設する電柱などを載せた作業車が通ります。
同地区では、家が1軒まるごと流され、1人暮らしのお年寄りが亡くなっています。ほぼ全ての家が1階の中ほどまで浸水し、住民の多くが「2階に避難して助かった」と話します。
農具倉庫の清掃をしていた男性(70)は、軽トラなど4台あった車がすべて水没して壊れたため、買い物も満足にできません。同地区はいまだに電気、水道、ガスとも復旧していません。「ここは湧き水があるからまだ助かるけど、とても暮らせる状況ではない」と述べます。
外に運び出した家財を洗っていた女性(53)は、東日本大震災で被災し同地区に自力で家を新築していましたが、浸水被害に遭いました。外壁は濁流で流されてきた木やアスファルト片が当たったためか、何カ所も陥没しています。「30年ローンで新築して、子どもや孫と一緒に暮らしてたんだけどね。早く戻れるように頑張らないと」。避難所から被災した自宅に毎日通い、清掃作業をしています。
迫る冬に不安
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和室の床板をすべてはがして泥出しをしていた男性(70)は「今は掃除で頭がいっぱいだけど、ひと段落してそのあとの生活はどうするのか、考えるのが怖い。床のない家で冬を越すのか…」とこぼします。
取材中、水道管の試験運転が始まり、女性(47)宅の壁の配管から水が噴き出しました。「水がくるのはうれしいけど、家の設備のほうが壊れているみたいです。直すものがまた増えた」。
自身も被災しながら、被災者を連日訪問し状況や要望の聞き取りを行っている日本共産党の林ア竟次郎町議は「局地的には東日本大震災を上回る被害となっており、そんな集落がいくつもある。町だけでなく、県や国の大震災時並みの厚い支援が必要だ」といいます。