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2016年9月6日(火)

プリントパック 全印総連のたたかい

人間らしく働ける職場へ

組合つぶし攻撃に府労委が是正命令

京都

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 インターネットで注文を受けると、すぐに印刷物を完成させて引き渡す「印刷通販」で急成長したプリントパック(本社、京都府向日市)。「安くて早い」の裏には、長時間・低賃金の過酷な労働がありました。人間らしく働ける職場をつくろうと立ち上がった全印総連ユニオン京・プリントパック京都分会は、京都府労働委員会で、会社からの組合つぶしの攻撃について不当労働行為認定を勝ち取り、たたかいを前進させています。(田代正則)


写真

(写真)プリントパック本社=京都府向日市

 職場はネット注文を受けるとすぐに印刷・加工・発送するので、昼夜2交代勤務で24時間フル稼働です。1シフト12時間勤務なので、「1日8時間労働」から毎日4時間オーバーし、月に勤務日が20日あれば80時間。すぐに「過労死ライン」に達します。休憩を1時間差し引いたとしても60時間残業となり、厚労省の示す残業時間の限度である月45時間を超えます。

 給与明細書には、「固定残業手当」という項目があり、時間通りに残業代が支払われていません。会社は、事実上、労働者の残業時間を気にせず働かせ続けられる、という仕組みです。

 全印総連によると、「プリントパックは、3交代勤務にしている同業他社より3割安い」。売り上げを十数年で100倍以上に伸ばし、今や全国九つの工場や事業所に837人が働き、売上高200億円を超えます。

ビラを受け取り

 2010年3月には、入社1カ月半の当時26歳だった若者が大型印刷機に頭を挟まれて死亡しました。しかし、その後も長時間過密労働は改まりませんでした。

 このプリントパックに労働組合を結成したのは、13年10月20日でした。

 中山悠平さん(33)はヘトヘトになった夜勤明け、帰宅途中に全印総連の朝宣伝でのビラを受け取り、内容も確認しないまま、帰宅し眠りにつきました。家でビラを見つけた妻は、中山さんが「食事しても味がしない」というほど疲れていることを心配して、全印総連に相談の連絡をしました。

 その後、組合役員と会うことになった中山さん。「組合が何なのかも分かりませんでした。でも、体は限界。会社をやめるか、組合に入って会社を良くするかの2択でした。悩んだ末に組合の結成を選びました」

 組合加入を呼びかけられた大橋貴之さん(27)は「同期入社の半数以上が1〜2年でやめていった。自分もやめようかと思ったが、全印総連の方々に励まされて、やってみるかと思った」と語りました。

 中山さんが組合分会長、大橋さんが書記長となって、13年11月1日に会社に団体交渉を申し入れました。ところが、1週間のうちに2人とも異動命令を受けました。

 2人は印刷オペレーターを外され、中山さんは発送・梱包(こんぽう)作業、大橋さんは、少部数のオンデマンドポスター印刷の部署にされました。

賃金増額「0円」

 組合として初となる14年の春闘。会社は、賃金支給額(月額)の増額について、中山さんは0円、大橋さんは500円という極めて低い回答を示しました。組合の職場聞き取り調査では、非組合員は5000〜1万円の支給額アップでした。

 会社側が示した「賃金査定」は、残業時間の長さによって「会社に対する貢献度」を評価するというもの。

 2人はきちんと所定労働時間を働いています。残業についても無理やり拒否しているのではなく、組合結成後、会社が一方的な部署異動を命じ、残業させない勤務にさせたことが原因です。

 夏季一時金は、平均19万6000円にもかかわらず、中山さん0円、大橋さん3万円。年末一時金は、ついに2人とも0円となりました。明らかに、待遇改善を求める組合への賃金差別の攻撃でした。

 これだけ嫌がらせを受けても負けない中山さん。「全印総連の組合の温かい人たちに支えられています。組合に入って、人間らしくなりました。何も考えず、思ったことも言えず働いていては、血が通っていないのと同じです」

 15年4月、会社の不当労働行為を京都府労働委員会(府労委)に救済申立てを行いました。

 府労委の尋問では、会社取締役が「組合員の異動は、ストライキを回避するための予防処置」だったと、組合攻撃の目的を明言しました。さらに「定時に退社することは、会社に対する抗議行動であり、ストライキと一緒である」と述べ、労働時間短縮を求める組合への敵意をむき出しにしました。

 今年7月19日、府労委は、組合員に対する不当労働行為を認定。プリントパックによる「(残業時間を含めた)総労働時間を重要な考慮要素として行われた査定は公正さを欠き、合理的なものとはいえない」と指摘、「他の従業員の平均値を用いて再査定することにより、算定し直して得られる賃金の額」を支払うよう命令しました。

 中山さんは「組合の主張が認められ、自分たちは間違っていなかったと確信になりました」と振り返ります。

 職場でも、組合の活動で労働者の利益を守る成果をあげました。15年末、半年に1回支払われるはずの食事手当が支払われていませんでした。組合が調査して、団体交渉で会社に指摘し、全従業員に支払わせました。この一件で、組合による門前宣伝の反応も好意的になりました。

仕事にやりがい

 大橋さんは、印刷の仕事のやりがいについて「自分がたずさわったポスターを街中で見かけると、うれしくなります」と話します。

 中山さんは、京都造形芸術大学で学び、色彩に関わる仕事を探して、印刷オペレーターになりました。

 いまでも2年に1度、描きためた油絵の展覧会を開いています。案内メールは、自ら勤めるプリントパックに発注しています。印刷物が届いたときの感激はひとしおです。「お客さんも、印刷物が届いたとき、きっと同じ気持ちのはず」と語ります。

 会社は、府労委命令を不服として、即日、中央労働委員会に再審査を申し立てました。やりがいのある仕事を続けられる職場に変えるため、全印総連ユニオン京・プリントパック京都分会のたたかいは続きます。


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