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2016年9月5日(月)

米中のパリ協定批准 温暖化対策に弾み

原発・石炭火力に固執 際立つ日本の異常

「基準年」ずらし見せかけの排出削減

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 温室効果ガスの2大排出国である米中が温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」を批准したことで、温暖化による世界の破局を防ぐ取り組みは新たな段階に入りました。原発と化石燃料に固執し、温暖化対策に背を向ける安倍晋三政権の異常さが際立っています。 (杭州〈中国〉佐久間亮)


 「気候変動という増大する脅威は、今世紀の課題のなかでも重要だ」

 20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれている中国・杭州で、パリ協定批准に関する書簡を潘基文(パン・ギムン)国連事務総長に提出したオバマ米大統領は、そう強調しました。さらに、両国の批准によって「世界が低炭素社会に向かっていることを、他の国に対し確信させるものになる」と指摘しました。中国の習近平国家主席も「他国が同様に努力するよう望む」と語りました。

目標への第一歩

 パリ協定は、昨年末にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、京都議定書に代わる新たな国際的枠組みとして採択されました。産業革命前に比べ地球の温度上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えるため、京都議定書では対象となっていなかった途上国にも目標提出と削減を義務づけています。

 協定発効には55カ国以上の批准と、批准国の温室効果ガス排出量が世界全体の排出量の55%を上回ることが必要。世界全体の排出量の4割を占める米中の批准が決定的です。京都議定書から離脱した米国と、途上国の立場を強調してきた中国が、温暖化防止という人類共通の課題で共同歩調をとったことは重要です。

 「米中2大排出国が批准したことは、日本などまだ批准していない国々に対していい意味でプレッシャーを与えることになる」

 東北大学の明日香壽川(あすか・じゅせん)教授は、京都議定書の枠組みに入っていなかった米中のパリ協定批准を歓迎します。米中の削減目標は2度目標の実現には不十分だとしつつ、「協定が動きださないことには始まらない。米中の批准が、各国が野心的な目標を掲げる第一歩となることを期待している」と語ります。

 2度目標達成には世界の温室効果ガス排出量を2050年までに4〜7割削減し、今世紀末にはゼロまたはマイナスにしなければいけません。米国は25年までに26〜28%削減、中国は30年までに国内総生産(GDP)当たり排出量を60〜65%削減するとしています(ともに05年比)。

 パリ協定は各国の目標を5年ごとに引き上げる仕組みを設けています。米中はじめ各国が競い合うように目標を野心的なものに引き上げていくことと同時に、各国がそれぞれの目標に向けて実効ある取り組みを進めることが必要です。

国際社会に逆行

 世界が温暖化防止で前進するなか、逆行しているのが安倍政権です。

 日本は民主党政権時代の09年、温室効果ガスを20年までに1990年比で25%削減すると国連で公約しました。安倍首相は政権交代後、東京電力福島第1原発事故による火力発電の稼働増を口実に25%削減目標を破棄。13年のCOP19では90年比3%増という“増加目標”を表明し、世界のひんしゅくを買いました。

 昨年7月には、30年までに13年比で26%削減するという目標を国連に提出。安倍首相は「国際的に遜色のない野心的な目標」と誇りました。

 しかし、13年比26%削減は、90年比では18%削減にすぎません。09年に世界に公約した25%削減にすら届かず、90年比40%削減を掲げる欧州連合(EU)の半分以下です。環境団体は「『基準年ずらし』で排出削減を大きく見せようとするのは、国際交渉で日本の信用をますます失墜させることになる」(環境NGO気候ネットワーク)と批判しています。

 大本には、危険な原発と温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電に固執したエネルギー政策があります。安倍政権のエネルギー基本計画は、原発と石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置づける一方、再生可能エネルギーは不安定で非効率だとしてお荷物扱いにしています。原発と石炭火力優先のエネルギー政策が、再生可能エネの普及の妨げとなり、日本の温暖化対策を遅らせています。

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