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2016年9月5日(月)

アジア政党国際会議総会

「クアラルンプール宣言」と日本共産党のとった立場

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 歓迎された日本共産党の事前の提案

 日本共産党は、ICAPP総会にさきだって、総会宣言に含まれるべき内容として、核兵器廃絶、地域の平和・協力の枠組みの構築、国際テロ根絶の三つの問題をICAPP事務局に提案していました。

 そのなかで核兵器廃絶については、以下の内容を総会宣言に盛り込むことを提案しました。

 「核兵器の非人道性を強調する国際的議論の最近の高まりの中で、核兵器の禁止・廃絶に関する法的措置を議論する国連の新たな『作業部会』が核兵器禁止条約の締結交渉を来年中に始めるよう国連総会に勧告する報告書を賛成多数で採択したことを歓迎し、潘基文(パンギムン)国連事務総長によって提案されているように、核兵器禁止条約の国際交渉の速やかな開始を呼び掛ける」

 総会前には、鄭(チョン)事務局長は「積極的なこの提案に感謝する」と応えていました。

写真

(写真)総会で発言する志位委員長=3日午前、クアラルンプール(田川実撮影)

配布された宣言案に対して修正案を提起

 総会初日の2日、宣言起草委員会に参加しているある代表団から日本共産党代表団に提供された宣言案には、日本共産党が提案した「核兵器禁止条約の国際交渉の開始」という内容が明記されていました。

 ところがその後、総会参加者に配布された宣言起草委員会の草案は、核兵器禁止条約も国連事務総長の提案にもまったく触れていないものでした。さらに、領土に関する紛争問題を国際法にしたがって解決するという当然の内容も含まれていませんでした。宣言起草委員会に参加しているあるメンバーから、「中国共産党代表団が、日本共産党の提案を採用することに否定的な態度をとっている」ということが伝えられました。また紛争問題を国際法を基礎として解決することを宣言に書き込むことに、中国共産党代表団が強く反対しているということも伝えられました。

 こうした事態をふまえて、日本共産党代表団は、次の修正案を作成し、ICAPP常任委員会、宣言起草委員会のメンバーになっている各党に渡して、協力を要請しました。

「宣言草案に対する修正案

 1、第5項(核兵器問題の項)の最後に以下の文章を加える。

 『われわれは、潘基文(パンギムン)事務局長が提案しているように核兵器禁止条約のすみやかな国際交渉開始をよびかける』

 提案理由―

 核兵器のない世界を実現するうえで、いま決定的に重要なことは、核兵器禁止条約の交渉を開始することです。それは、マレーシアなどの提案で毎年の国連総会で圧倒的多数の賛成により採択されていることです。それはまた、被爆者をはじめとする被爆国・日本の反核平和運動が切実に求めていることでもあります。

 今回の総会宣言から、この命題が削られる理由はないと思います。もしこの重要な命題が欠落するなら、ICAPP総会の宣言としては、重大な後退となることを率直に指摘しなければなりません。

 2、第5項6行目の最後の文章に以下の言葉を挿入する。

 『国際法を基礎とし、』

 提案理由―

 紛争の平和的解決は当然のことであり、国際的に承認された規範―国際法がその基礎とされることが必要です。

 この修正案が取り入れられることを強く求めます」

中国共産党代表団との話し合い

 こうした経過から、日本共産党代表団は中国共産党代表団との話し合いを重視し、“国際会議の場で核兵器廃絶などの課題について協力する”という両党首脳間の合意(2008年5月7日、東京での志位委員長と胡錦濤(こきんとう)総書記〈当時〉の会談)にもとづいて、日本共産党の緒方靖夫副委員長(副団長)が中国共産党代表団長の李軍対外中央連絡部部長助理に会い、協力を要請しました。

 李氏は、「宣言は簡潔にしたい。元のままがいい」と日本共産党の修正案を拒否。緒方氏が、「過去2回の(ICAPP)総会で中国も賛成し、全会一致で賛成しているものだ。何の問題があるのか」とただしたのに対し、李氏は「過去のことは知らない。こういう文章(日本共産党の修正案)を入れることは、侵略国の日本がまるで被害国のように宣伝されてしまう」とのべました。緒方氏が「この修正案には日本の被爆の話も被害の話も一切ないではないか。人類的な大きな国際問題として提起している」とのべると、李氏はそれに答えず、「この問題については議論したくない。われわれは修正案には反対だ。提案は拒否する」とのべました。

 その後、日本共産党代表団として両党の話し合いの内容を検討し、問題の重大性を考え、中国共産党に再度の話し合いを提起することにしました。李氏は再度の話し合いに難色を示しましたが、2度目の話し合いが行われました。緒方氏は「志位委員長に報告した。われわれは、この問題は両党関係にとっても重大な問題だと考えている」とのべ、あらためて「国際会議で協力する」という両党間の合意を強調し、「なぜ提案を拒否するのか」とただしました。

 李氏は、「日本が被害者のように宣伝されてしまう」という発言は撤回したものの、「具体的なものにすると各党間の立場の違いが表面化するので、一般的なものがいい」と繰り返しました。緒方氏は「中国は核兵器禁止条約を主張してきたのに、なぜか」とただしましたが、李氏はそれには答えず、「あなたは覇権主義だ。自分たちの意見を押し付けている」と非難しました。緒方氏は、「それは当たらない。議論しているのだ。これが押しつけなら、議論はできないではないか」と批判しました。

宣言起草委員会は全員一致に

 こうした議論をへて、中国共産党代表団はいったん態度を変更します。2日夜に開かれた宣言起草委員会では、鄭(チョン)事務局長が日本共産党の修正案を議題としたところ、中国共産党を含めて異論は出ず、全員一致で修正案が受け入れられたのです。

 翌3日午後、総会参加者全員に配布された宣言案には、次のように明記されていました。

 「われわれは、核兵器のない世界という目標の達成をめざす国際社会の取り組みを支持し、潘基文(パンギムン)国連事務総長が提案しているように、核兵器禁止条約についての速やかな交渉開始を呼びかけた」

 領土に関する紛争問題を「国際法を基礎」として解決するということも、宣言案には適切な形で明記されました。

採択直前に新たな宣言案が配布

 ところが、閉会式の前に、新たな宣言案が配られました。そこでは、「核兵器禁止条約についての速やかな交渉開始を呼びかけた」の部分が削除され、「潘基文(パンギムン)国連事務総長が提案しているような、核兵器のない世界という目標の達成をめざす国際社会の取り組みを支持した」という肝心の問題を骨抜きした表現に変更されていました。

 鄭(チョン)事務局長は閉会式の開始直前、日本共産党代表団に対し、「ある国の代表団がこの部分の削除を強硬に要求してきた。本国の指示だと思う。宣言を採択するためには受け入れるしかなかった。たいへん申し訳ない」と述べました。

 ここで鄭(チョン)事務局長がのべた「ある国の代表団」とは、すでにのべた経過にてらして、中国共産党代表団であることは明瞭です。中国代表団は、「核兵器禁止条約の速やかな交渉開始」を宣言に盛り込むことを、いったんは自らも認めながら、採決の直前になって覆すという態度をとったのです。

日本共産党が「部分的保留」を表明

 こうした事態を受けて、日本共産党代表団は、宣言案への「部分的保留」を表明するとともに、「一代表団」=中国共産党代表団によって、総会の民主的運営に反する事態が引き起こされたことへの強い抗議を表明する次の文書を議長団に提起しました。

 「日本共産党代表団は、本総会の宣言への部分的な保留―第5パラグラフ〔核問題の項〕についての保留を表明する。

 部分的な保留の理由は、核兵器の問題で、核兵器禁止条約の交渉開始への支持という、国連加盟国の大多数と市民社会の運動が求めている焦眉の課題が欠落していることである。この命題は、2014年のコロンボ、2010年のプノンペンの総会宣言に入っており、それが欠落したことは、総会の宣言として重大な後退となる。

 ICAPP事務局長によると、「2日夜の起草委員会で合意により最終的に作成され参加者に配布された宣言案には、『核兵器禁止条約のすみやかな交渉開始を呼びかける』と明記されていた。ところが、遺憾なことに、起草委員会では異議をとなえなかった一代表団が、宣言の採択直前になってこの部分の削除を強硬に求めたために、それが欠落する結果となった」とのことであった。

 採択直前に突然、宣言の最終案の変更を求めた一代表団のふるまいは、異常かつ横暴きわまるものであり、この一代表団によって、ICAPPの会議の民主的運営に著しく反する事態が引き起こされたことに、強く抗議する」

 日本共産党のこの表明を受けて鄭(チョン)事務局長は、総会の最後の報告で、「一部の代表団が、宣言の採択後、宣言に対する部分的留保を表明した」と述べ、「クアラルンプール宣言」の採択が全員一致でないことを公式に認めるという、異例の発言を行いました。

道理ない横暴なふるまい

 総会終了後、中国共産党代表団の横暴なふるまいに対して、起草委員会に参加した代表団から、「起草委員会の合意を勝手にひっくり返す権利は誰にもない。異論があれば全体会で発言し、議論すべきだ。不公正で透明性に欠け、異常なやり方だ」など、強い批判の声が聞かれました。

 「核兵器のない世界」を実現するうえで、緊急・焦眉の課題となっている「核兵器禁止の国際交渉の速やかな開始」を盛り込んだ宣言案に対して、総会の民主的運営に反する横暴きわまる方法で削除を強要し、核兵器問題でのICAPPのこれまでの到達点を大きく後退させた中国共産党代表団のふるまいは、まったく道理がなく、きびしく批判されなければなりません。

 こうした態度の根底には、中国がこの間、P5(米ロ英仏中・五つの核保有国)の一員として、米国などとの共同歩調を強め、「段階的な接近(アプローチ)」の名で、核兵器廃絶のための具体的措置に反対する立場をとっているという重大な問題があることを、指摘しなければなりません。


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