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2016年9月4日(日)

東アジアの平和、核兵器のない世界をどう築くか

第9回アジア政党国際会議での発言

日本共産党幹部会委員長 志位 和夫

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 日本共産党の志位和夫委員長は3日、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれている第9回アジア政党国際会議で発言しました。全文は次の通りです。


アジア政党国際会議――「平和と協力」「多様性の統一」に重要な役割

写真

(写真)発言する志位委員長=3日、クアラルンプール(田川実撮影)

 尊敬する議長、親愛な友人のみなさん。

 私は日本共産党を代表して、第9回アジア政党国際会議(ICAPP)の開催を歓迎し、アジア全域から参加された友人のみなさんに、心からの祝福と連帯を表明します。

 私たちのすむアジア大陸は、大局で見るならば、20世紀から21世紀にかけて、「分断と敵対」から「平和と協力」への歴史的転換の流れが起こっています。

 同時に、この大陸の国ぐには、きわめて豊かな多様性をもっており、政治・社会体制の違い、経済の発展段階の違い、文明の違いを、互いに尊重し、共存と協力をはかる「多様性の統一」―今回の総会のメインテーマである「一つのアジア(ワン・アジア)」をめざすことが大切であると考えます。

 そして、この大陸で生まれたアジア政党国際会議が、イデオロギーの違いをこえ、アジアで活動するすべての政党に開かれたユニークなフォーラムとして、アジアのすべての国ぐにの「平和と協力」を促進する懸け橋となり、アジアの「多様性の統一」を実現するために重要な役割を果たしていることを、私は参加されたみなさんとともに喜びたいと思います。

 私は、クアラルンプールでの総会が、これまでの8回の総会の到達点を踏まえ、さらに新しい前進の一歩を刻むことを願いつつ、「東アジアの平和、核兵器のない世界をどう築くか」というテーマで発言いたします。

ASEAN――平和の激流に注目、南シナ海問題の前向きの打開を願う

 友人のみなさん。

 私がまず訴えたいのは、東アジアにおける地域の平和協力をどう築くかという問題です。

 アジア大陸における「分断と敵対」から「平和と協力」への歴史的転換を、最も進んだ形で劇的に体現しているのが、ここ東南アジアの国ぐにの取り組みです。私たちはこの間、東南アジアの国ぐにを訪問し、またアジア政党国際会議に参加したさいに東南アジアの諸政党と交流し、この地域に、平和の激流ともいうべき大きな変化が起こっていることに直接接して、目をみはる思いでした。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は、国連憲章の原則にもとづき武力行使の放棄と紛争の平和解決などを掲げた東南アジア友好協力条約(TAC)を土台として、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジアサミット(EAS)、東南アジア非核地帯条約、南シナ海行動宣言(DOC)など、重層的な平和と安全保障の枠組みをつくりあげ、それを域外に広げています。

 それは、軍事ブロックのように外部に仮想敵を設けず、地域のすべての国を迎え入れるとともに、アジアと世界に開かれた、平和の地域共同体となっています。年間1000回を超える徹底した対話と信頼醸成の努力を通じて、「紛争を戦争にしない」―紛争の平和解決を実践しています。これらの努力が、2015年末には、ASEAN共同体の設立という実を結んだことは、注目すべき新たな発展です。

 この地域には、南シナ海問題や大国の関与の増大など、難しい問題も存在しています。しかしASEANは、これらの挑戦課題に対しても、忍耐力、弾力性、新しい知恵と工夫を発揮して、状況を切り開きつつあります。

 7月に開催されたASEAN外相会議で合意された「共同声明」では、南シナ海問題について、「南シナ海の情勢を複雑化し緊張を高めかねない埋め立てを含むすべての行動での自制と非軍事化の重要性」が強調され、「1982年国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法の普遍的に認知された原則に従い、武力の行使または威嚇に訴えることなく、法的および外交プロセスの全面尊重を含む、紛争の平和的解決への共通の誓約」が確認されました。私はこの「共同声明」の内容を歓迎し、この方向で事態の前向きの打開がはかられることを、心から願うものです。

 これらの努力も含めて、私はASEANの取り組みは、私たちが学ぶべきたくさんの豊かな教訓を含む、未来あるものであると考えるものです。

「北東アジア平和協力構想」――平和の地域協力のための提案

 友人のみなさん。

 ここで北東アジアに目を向けていただきたいと思います。この地域には、さまざまな紛争と緊張の火種が存在しています。ここには北朝鮮の核兵器問題、歴史問題をめぐる対立と相互不信など、固有の問題があります。同時に、東南アジアの国ぐにが直面している問題と共通する問題もあります。

 日本共産党はASEANの実践に学びつつ、北東アジア固有の問題を考慮し、2014年1月に開催した第26回党大会で、以下の目標と原則にたった「北東アジア平和協力構想」を提唱しました。

 ――関係諸国を律する平和のルールとして、武力の行使の放棄、紛争の平和的解決、内政不干渉、信頼醸成のための効果的な対話と協力の促進などを定める北東アジア規模の「友好協力条約」の締結をめざす。

 ――北朝鮮問題について、「6カ国協議」の2005年9月の「共同声明」に立ち返り、非核の朝鮮半島をつくり、核・ミサイル・拉致・過去の清算などの諸懸案の包括的解決をはかり、この枠組みを、北東アジアの平和と安定の枠組みに発展させる。

 ――この地域に存在する領土に関する紛争問題の解決にあたっては、歴史的事実と国際法にもとづく冷静な外交的解決に徹する。力による現状変更、武力の行使および威嚇など、紛争をエスカレートさせる行動を厳に慎み、国際法にのっとり、友好的な協議および交渉をつうじて紛争を解決する行動規範を結ぶことをめざす。

 ――北東アジアの友好と協力を発展させるうえで、日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる。日本軍「慰安婦」問題など未解決の問題をすみやかに解決するとともに、歴史を偽造する逆流の台頭を許さない。

 以上が、私たちの提案です。

 それは、ASEANがすでに実践している平和の地域協力の取り組みを、北東アジアでも構築しようというものです。私たちは、この「構想」の方向こそ、この地域に平和と安定をもたらす最も現実的かつ抜本的方策であると確信するものです。

 この間、私たちはこの「構想」をもって、関係各国の政府や政党などとの意見交換を行ってきましたが、多くの賛同と共感が寄せられていることはうれしいことです。この「構想」の実現のために、引き続き力をつくす決意を表明するとともに、総会に参加されたみなさんのご理解と連帯を心から訴えるものです。

「軍事対軍事」の悪循環、力による現状変更を、厳しく退ける

 友人のみなさん。

 そのうえで私は、東アジアに平和秩序を築いていくために、北東アジア、東南アジアに共通する問題として、次の二つの点を強調したいと思います。

 第一は、「軍事対軍事」の危険な悪循環に陥ってはならないということです。国連憲章と国連安保理決議に違反する軍事的挑発は、もとより厳しく批判されなければなりません。同時に、解決の方法は対話しかありません。どんな問題でも、外交的・平和的解決に徹するという態度を堅持することが重要です。さまざまな紛争問題に対して、もっぱら「抑止力」の強化、軍事的対応の強化で構えるならば、相手も軍事力増強を加速することになり、危険な軍事的緊張の悪循環のわなに陥ることになります。

 この点に関わって、安倍晋三政権が、この間、「日本国憲法第9条のもとでは、集団的自衛権は行使できない」という戦後半世紀にわたる日本政府の憲法解釈を変更し、日本を「海外で戦争する国」につくりかえる安保法制=戦争法を強行したことに対して、日本共産党が、他の野党、広範な市民とともに強く反対し、憲法違反の法制の廃止を求めてたたかっていることを、お伝えしておきたいと思います。

 第二に、領土に関する紛争問題の解決にあたっては、力による現状変更、武力の行使および威嚇など、紛争をエスカレートさせる行動を厳に慎むことを、とくに強調したいと思います。国連憲章と国際法の普遍的に承認された原則に従い、友好的な協議および交渉によって紛争を解決するという姿勢に徹すること、それを保障するための行動規範を結ぶことが大切です。

 私たちは、ASEANと中国による南シナ海行動宣言(DOC)から行動規範(COC)をめざす取り組みが成功することを強く期待するものです。また、北東アジアでも領土に関する紛争問題をエスカレートさせない行動規範を結ぶことが急務となっていることを、重ねて強調するものです。

 長年の努力によって、国連憲章の原則にもとづく平和の地域協力の枠組みをつくりあげてきたASEANの経験を、北東アジアを含むアジアの全地域で生かし、「平和と協力」「多様性の統一」の「一つのアジア(ワン・アジア)」へと前進するために、手を携え、力をあわせようではありませんか。

「核兵器のない世界」へ――国連総会に具体的行動を求める画期的提起が

 友人のみなさん。

 私がいま一つ、訴えたいのは、アジアと世界の平和、人類の生存にとっての深刻な脅威となっている核兵器の問題についてです。

 71年前、1945年8月、米国が投下した2発の原子爆弾は、広島と長崎という美しい二つの都市を一瞬にして言語に絶する地獄に変え、その年の末までに21万人の命が奪われ、かろうじて生き延びた人々も、放射能による障害に苦しみ、心身に深い傷を負い、今なお苦しみを強いられ続けています。このような非人道的な兵器は、世界のどこであれ、いかなる状況のもとであれ、再び使用されてはなりません。核兵器の使用を防止する最大の保障はその廃絶であり、それは人類の生存にとって緊急課題となっています。

 この間、「核兵器のない世界」の扉を開く新たな画期的な動きが起こっています。

 ジュネーブで開催されていた核兵器の禁止・廃絶に関する法的措置を議論する国連作業部会(OEWG)は8月19日、国連総会に対して、「核兵器を禁止し、その全面廃絶にいたる法的拘束力を持つ協定を交渉するため、国連総会が2017年にすべての国家、国際組織、市民社会に開かれた会議を招集する」ことを勧告する報告書を、賛成多数で採択しました。「核兵器のない世界」の実現にむけ、核兵器禁止・廃絶条約の締結交渉を行うために、国連総会として具体的な行動を起こすことが、2017年という期日を決めて提起されたのです。

 私たちは、この動きを心から歓迎します。それが実るように、被爆国の政党として全力をつくす決意です。

核兵器禁止・廃絶条約のすみやかな交渉開始を世界に呼びかけよう

 友人のみなさん。

 こうした前進をつくりだした力がどこにあるでしょうか。まず私は、核兵器の非人道性、残虐性を訴え続けた被爆者を先頭とする、世界の反核平和の運動―市民社会の運動に、前進をつくりだした根本の力があることを指摘したいと思います。今年4月、被爆者代表の連名のよびかけによって、核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことをすべての国に求める「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」が開始されました。そこではこう訴えています。「平均年齢80歳を超えた被爆者は、後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したいと切望しています。あなたとあなたの家族、すべての人びとを絶対に被爆者にしてはなりません」。世界で数億を目標にしたこの署名を成功させるために、総会に参加されたみなさんの連帯と協力を、強く呼びかけるものです。

 同時に、こうした市民社会の運動と連帯した各国政府の取り組みが、積極的な役割を果たしていることは、いうまでもありません。核兵器禁止条約を求める各国政府の動きは、さまざまな形で起こっていますが、とりわけ本総会の開催国であるマレーシア政府が、1996年以来、核兵器禁止条約の交渉開始をよびかける決議案を、毎年の国連総会に提出し、昨年は賛成137と加盟国の圧倒的多数の賛成で採択される状況をつくりだすなど、一貫して先駆的役割を果たしていることに、私は、心からの敬意を表明するものです。

 そして私が強調したいのは、アジア政党国際会議が、これまでも「核兵器のない世界」の実現を、繰り返し呼びかけてきたことです。2009年の「アスタナ宣言」は、「あらゆる地域で核兵器のない世界を目標にすべきだ」と世界に呼びかけました。2010年の「プノンペン宣言」は、「核兵器禁止条約の交渉を支持する」ことを明記しました。2014年の「コロンボ宣言」は、「核兵器禁止条約の速やかな交渉開始を求める」と明記しました。これらの到達点を踏まえ、このクアラルンプールの地から、「核兵器禁止・廃絶条約のすみやかな交渉開始」を世界に向かって呼びかけようではありませんか。

 そうした呼びかけがなされるならば、この秋に始まる国連総会での核兵器禁止・廃絶条約に関する議論への前向きの貢献となり、世界の反核平和運動への大きな励ましになることは、疑いありません。

 「核兵器のない世界」へ―歴史的チャンスが、いま生まれています。私は、被爆国・日本で、戦後一貫して核兵器廃絶のためにたたかい続けてきた政党を代表して、新しい歴史の扉を開くために、知恵と力をつくすことを誓って、発言を終わります。

 ご清聴、ありがとうございました。


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