2016年9月1日(木)
築地移転延期
新市場 欠陥だらけ
小池百合子東京都知事は31日、築地市場(中央区)の移転先として整備してきた豊洲新市場(江東区)を11月7日に開場する計画を延期すると発表しました。市場問題プロジェクトチームを設置し、安全性の確認や市場施設の改善などを検討するとし、いつまで延期するのかは言明しませんでした。
開場予定日が迫る中、豊洲新市場をめぐっては、「食の安全・安心」への疑念、建物の欠陥問題などが明らかとなり、不安と批判が高まっています。
豊洲新市場計画の第一の欠陥は、「食の安全・安心」が保障されていないことです。
新市場用地は東京ガス工場跡地で、発がん性物質のベンゼン、猛毒のシアン化合物やヒ素などで高濃度汚染されていました。都は土壌汚染対策に858億円を投じましたが、300区画以上で汚染調査をしていないなど対策の欠陥が判明。また、地下水の汚染を監視するモニタリングの結果が出る前に市場を開場する計画に、“安全軽視だ”との批判が上がっていました。
さらに、新市場の青果棟の建物内の空気が、環境基準の6割と比較的高い濃度のベンゼンで汚染されていた事実が本紙報道(8月5日付)で判明。市場業者から「大地震が起きた時に、液状化現象で汚染物質が吹き上がるのではないか」「人体実験にするのか」との声が上がっています。
「食の安全・安心」の確保のためには、土壌汚染対策事業の徹底検証と、地下水・施設内空気の汚染調査を継続的に実施することが不可欠です。
第二の欠陥は、施設の立地や、配置・構造上の欠陥です。立地条件が悪く貧弱な交通アクセス、売場棟が3区画に分断され重層化するなど、円滑で迅速な物流が阻害されると指摘されています。
市場施設の床の耐荷重不足に伴い営業活動が制限されたり、建物の耐震性能不足の疑問も出ています。
床の耐荷重は1平方メートルあたり700キロと弱いため、活魚水槽に入れる海水の量が制限され、鮮魚を運ぶターレット、フォークリフトの積載量も制約されます。
仲卸売場棟4階の床のコンクリート厚は、設計図面と構造計算書が異なっており、実際の耐震性能に疑義が指摘されています。
第三の欠陥は、市場施設の使い勝手が悪すぎることです。
仲卸店舗の1区画の間口が1・4メートルと狭くてマグロ包丁(最長約1・5メートル)が使えない、店舗の排水システムが十分でなく、ろ過海水を使った際に床に流すことを禁じるなど衛生管理面でも問題が生じます。
新市場の整備費は、建築費と土壌汚染対策費の大幅増加で5884億円に膨れ上がり、市場業者と消費者への負担転嫁も心配されています。
移転に反対してきた「守ろう!築地市場パレード実行委員会」と「築地市場・有志の会」が4月に行った業者アンケートでは、「土壌汚染問題が解決するまで移転を凍結すべき」だとの回答が約8割に上りました。両団体は6月、仲卸業者の過半数の319業者の署名を添えて、農水省と都に開場計画の見直しを求める要請書を提出しました。
日本共産党都議団(吉田信夫団長、17人)は、築地市場の移転計画に反対し、新市場計画の欠陥問題を議会で一貫して追及。豊洲新市場の建物内での発がん性物質のベンゼンの検出などを受け、8月10日には、移転を抜本的に再検討するよう小池百合子知事に申し入れました。
いま、都に求められていることは、都民参加の第三者委員会で徹底的に議論し、移転中止も含めて計画を抜本的に見直すことです。
(岡部裕三)