2016年9月1日(木)
主張
「防災の日」
あらゆる災害への備え強めて
大型で強い台風10号による被害の中で、「防災の日」を迎えました。被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。4月から続く熊本などの地震や、8月に相次いだ台風襲来は、日本が「災害多発国」である現実を浮き彫りにしています。しかし、自然災害への備えを欠いたことで、住民の命や安全が脅かされることはあってはなりません。国や自治体を中心に、あらゆる事態を想定し、災害の新たな様相や変化にも応じた万全の対策を講じるため、防災・避難体制の総点検と拡充をすすめていくことが求められます。
台風も地震も異例ずくめ
台風10号の影響による記録的豪雨で、岩手県や北海道では、川の氾濫や堤防の決壊などが発生しました。グループホームで高齢者が犠牲になったのをはじめ被害は深刻です。浸水した地域に取り残された人たちが多数生まれ、被災者の救援・支援が懸命に続きます。農業も大きな打撃を受けています。
昨年9月にも台風の影響による集中豪雨で、茨城県常総市の3分の1が水没するなど大きな被害を生みました。もともと日本列島は地理的な位置から夏から秋にかけて南方で発生する台風の進路にあたるため、毎年被害を生んできましたが、近年は、従来とは異なる規模と様相をみせてきています。
今年は、8月中にすでに四つの台風が日本を直撃しました。うち三つは北海道に上陸し、統計史上なかった事態となっています。東京・八丈島近海で発生後、いったん西南方向に進んだものの沖縄近海でUターンした台風10号も特異でした。東北太平洋側への台風上陸は、統計を取るようになってから初めてだといわれています。
異常な豪雨や、かつてない動きの台風は温暖化による気候変動との関係もいわれています。防災を後回しにしたまちづくりが被害拡大に拍車をかけたとも指摘されています。従来の経験や発想にとらわれず、全国どこでも台風や水害への備えを再点検し、対策を抜本的に強めることが必要です。
異例なのは台風だけではありません。阪神・淡路大震災級の揺れに2度も襲われた4月の熊本地震も「常識」を覆しました。最初の大きな揺れの2日後に、さらに大きな揺れが起きたことは、これまでの想定ではありませんでした。複数の活断層が連動して地震を起こし、広範囲で地震活動が活発化したことも未経験の事態です。
分かっているだけで全国2000もの活断層があるとされ、どこで大地震が起きてもおかしくない中、熊本地震の教訓と反省を踏まえ、警告の出し方や避難の仕組み、建物の耐震基準のあり方などを見直していくことが重要です。
乱開発などは深刻な逆行
台風シーズンはこれからが本番です。この間の雨で地盤が緩んだ危険箇所のチェックや補強など対策をとることが急がれます。
超高層ビルや地下街の建設推進、無秩序なまちづくりは地震や水害などへの対応力を弱体化させます。世界有数の地震・火山国で原発を推進することは、東日本大震災の教訓にすら反する逆行です。
首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生の危険が警告され、かつてない規模の豪雨が続発する中、「災害に強いまち・国土づくり」をすすめることは、日本の政治の最優先課題となっています。