2016年8月31日(水)
米アップル 最大1.5兆円追徴へ
欧州委 “優遇税制は違法”
欧州連合(EU)の行政府にあたる欧州委員会は30日、アイルランド政府に対し、米通信機器大手アップルへの最大130億ユーロ(約1・5兆円)規模の追徴課税を命じました。欧州委は、アップル社とアイルランド政府が結んだ優遇税制が違法な国家補助にあたるとして、2014年から調査を続けていました。(島崎桂)
アイルランド政府に命令
アップル社は欧州各国で得た利益を法人税率の低いアイルランドの子会社に移転するなどして、各国での徴税を回避しています。アイルランドの法人税率は12・5%ですが、同国政府の優遇措置により、アップル社への実質的な課税率はここ数年1〜2%で推移してきました。
追徴額は、税制上の優遇措置が合意されて以降、免除された税の総額となり、複数の欧州メディアは80億〜190億ユーロ(約9000億〜2兆円)に上ると試算。欧州委が命じた追徴課税額としては過去最高となる見通しです。
アイルランド政府とアップル社は、欧州委の調査開始以来、一貫して違法性を否定。英紙フィナンシャル・タイムズによると、アイルランド財務省は「不本意な命令が出れば提訴する」としています。米政府も、米企業に対する欧州委の調査に不満を示してきました。
欧州では近年、多国籍企業を中心とした企業の税逃れが表面化。各国で増税や社会保障の削減など緊縮政策が進む中、市民の怒りが高まっていました。
欧州委はアップル社のほか、オランダ政府と米スターバックス、ルクセンブルク政府と伊フィアット、米アマゾンなどがそれぞれ結んだ取り決めについても調査を実施。これまでに、スターバックスとフィアットの両社に対する追徴課税を命じていました。
アイルランドは近年、優遇税制を軸に外国からの投資を呼び込み、EU内でも随一の経済成長率を維持。一部諸国のこうした動きが、国際的な税逃れ対策の遅れの一因となっています。