2016年8月31日(水)
自衛隊の南スーダンPKO派遣
孫が派遣打診され 娘と泣いた
ルポ 部隊駐屯地の青森で
「孫が『南スーダン派遣を打診された』と言ったとき、しばらく娘と一緒に泣きました。なんで銃を持って、外国に行かなきゃならないんですか」――。内戦状態が続くアフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に、第11次隊として11月から派遣される陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊(青森駐屯地=青森市)。安保法制=戦争法に基づく自衛隊の新任務―「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」の任務を付与される可能性があります。戦後初めて、海外で「殺し殺される」かもしれない隊員たちの家族に、今の心境を聞きました。(吉本博美)
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農作業着で野菜の仕分けをガレージでしていたAさんの自衛官の孫は、「人の役に立ちたい」という思いを強く持ち、4月に発生した熊本地震の支援にもかかわっていたといいます。「孫は上官から南スーダンに行かないかと言われましたが、『自分はまだ若いので、国内で経験を積みたい』と断りました。上官はあっさり引いてくれたそうですが、本当に心配なんです」。手を止めて、目に涙を浮かべます。
話してくれない
近所に住むBさん(71)の息子は、今回の南スーダンへの派遣が決まっています。少し肩を落として言います。「もう仕事のことも、気持ちも、なにも話してくれません。隊から『何もしゃべるな』と言われてるんだと。私も表では何も関心ないようには振る舞ってはいますがね」
一方で「やむを得ない」という家族もいます。自衛隊員の孫をもつ元隊員のCさん(75)は、「南スーダンの状況をみると心配はしていますが、隊員を出すほうもやむを得ないし、覚悟をするしかない」と腕を組みながら答えます。
本心では署名を
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青森駐屯地が近い日本共産党東青地区委員会は「青森の青年を戦場に送るな」と南スーダンPKO派遣中止と戦争法の廃止を求める独自署名を集めています。40代の息子が幹部自衛官だという元自衛隊員のDさん(69)はこぼすようにいいます。「立場上署名できないけど、本心では私も書きたいです。人間ならね、子を戦場に送りたいとは思いませんよ」
自民に入れない
町中にある青森駐屯地は、住宅や商店と隣り合わせ。取材日は快晴、周辺には多くの若い自衛官がランニングしていました。
市内に住む元介護職員の赤平加奈恵さん(27)は、「青森には仕事があまりないので、進路の一つとして自衛隊を選択肢に入れる学生もそれなりにいます」と話します。
戦争法の成立からもうすぐ1年。「自民党にはもう票を入れません。安倍首相は、子を持つ親の気持ちが分からないんだと、他の隊員の親御さんたちもいってますよ」。Aさんは怒りを込めて訴えます。