2016年8月27日(土)
年金運用損5.2兆円
4〜6月期 株比率倍増後 累計でマイナス
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公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は26日、2016年4〜6月期の運用実績が5兆2342億円の赤字になったと発表しました。GPIFは7月末、15年度(16年3月期)の運用実績が株安や円高の影響で5兆3098億円もの赤字になったと発表したばかり。今年度も巨額の赤字が続いていることになり、株価のつり上げをねらって株式運用を倍増させた安倍政権の責任が改めて問われます。
赤字は2四半期連続。赤字幅としては、15年7〜9月期(7兆8899億円赤字)やリーマン・ショックの08年10〜12月期(5兆6601億円)に次ぐ3番目の大きさ。株式運用拡大後の累計でも初めて赤字(1兆962億円)に転落しました。
4〜6月期は、英国が6月下旬の国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めたことなどから国内の株価が急落。外国株や債券も円高で目減りしました。
年金積立金を「成長戦略」に注ぎ込む安倍政権の意向を受けて、14年10月に基本ポートフォリオ(資産構成)を見直し、それまで24%だった株式の比率を50%に倍増させたことが、巨額損失を生み出したものです。
安倍首相は、“長い目で見れば利益は出ている”と釈明していますが、6月末の運用資産額は129兆7012億円に縮小。14年6月末以来の130兆円割れとなりました。株式比率を上げたため株価の影響をもろに受けるなど安定した収益を得られなくなっていることを浮き彫りにしています。
公的年金の連続巨額損失
老後 危機にさらす安倍政権
金融市場ゆがめ、犠牲は国民に
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2015年度決算に続いて今年度の4〜6月期も5兆2342億円にのぼる巨額損失を出しました。
「アベノミクス」による「株高」を演出するため、危険な株式運用を倍増させ、巨額損失を生み出した安倍政権の責任は重大です。
安倍首相は14年1月、資産約130兆円を抱える世界最大の機関投資家であるGPIFについて「成長への投資に貢献する」と宣言。国民の大事な財産である年金積立金を使って大量の資金を株式市場に流し込み、海外からの投機マネーも呼び込むことで、実体経済とかけ離れた株高・円安をつくり出し、みせかけの「景気回復」を演出してきました。
年金積立金は、国民の老後の年金保障が目的であり、安定運用が大原則です。国民の積立金を自らの政権維持のために注ぎ込み、老後の安心を危機にさらすことは許されません。
投機的運用で損失が出れば結局、年金削減や保険料引き上げとなって国民に犠牲が押し付けられることは必至です。安倍首相は、2月の衆院予算委員会で「想定の利益が出ないなら当然、支払いに影響する」と年金減額に言及しています。
しかも、積立金による株価つり上げは市場をゆがめ、投機筋や銀行・証券会社が巨額の利益を手にする一方、一般投資家や労働者は株価変動で苦しめられることになります。そのため、「金融大国」の米国でさえ公的年金を株式運用していません。安倍内閣の姿勢は世界的にも異常です。
安倍政権になって年金はマイナス3・4%の大幅な目減りです。国民には「年金財政が苦しい」といって支給削減や保険料アップを押しつけながら、「アベノミクス」維持のために国民の財産と日本経済を危機にさらすなど認められません。
しかも安倍政権は、株式運用の拡大では飽き足らず、「リスク分散」の名で巨大開発や不動産への投資に踏み出そうとしています。
かつて年金保養施設「グリーンピア」を全国各地に建設して巨額損失を出し、年金積立金を浪費したことへの反省などありません。
年金積立金の投機的運用を中止・撤回し、過大な積立金は計画的に取り崩して給付に活用するなど国民の年金受給権を保障する立場に立ち返るべきです。(深山直人)