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2016年8月21日(日)

主張

南スーダンPKO

「殺し殺される」訓練 許されぬ

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 安倍晋三政権は今週にも、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に11月から派遣予定の陸上自衛隊部隊に対し、戦争法(安保法制)で新たに可能になった「駆け付け警護」と「宿営地共同防護」の訓練を開始させようとしています。今年3月に施行された戦争法をいよいよ本格運用の段階へ移行させようとする危険なたくらみです。二つの任務とも、それまでのPKO法の枠を超えた武器使用の拡大を認めています。派遣時に実際に新任務が付与されれば、自衛隊が戦後初めて「殺し、殺される」という、極めて深刻な事態が現実化しかねません。

憲法9条を踏みにじる

 戦争法の一つである改悪PKO法は、▽武装集団に他国軍の兵士や国連・NGO(非政府組織)の職員らが襲撃された際、自衛隊が現場まで駆け付け、武器を使って救出する「駆け付け警護」▽宿営地が襲撃を受けた際、駐留する自衛隊が他国軍と共に応戦する「宿営地共同防護」―などを初めて可能にしました。いずれも海外での武力行使を禁じた憲法9条を踏みにじる任務です。

 従来のPKO法は、自衛隊員とその「管理下の者」の生命・身体を守るための武器使用に限り認めていました。その口実は「自己保存のための自然権的権利」であって武力の行使ではないという、世界では通用しない理屈でした。

 これに対し「駆け付け警護」では、「任務遂行のための武器使用」を初めて認めるという、重大な転換を図りました。かつては内閣法制局も、「駆け付け警護」での武器使用は「『自己保存のための自然権的権利』の範囲を超える」とし、「憲法9条の禁ずる武力の行使に当たる恐れがある」との見解を示していたものです。

 防衛省が「駆け付け警護」について検討した内部文書(2012年3月、日本共産党の笠井亮衆院議員入手)では、武装集団に対する「狙撃」や「射殺」を当然の前提にし、「万が一、失敗すれば文民等を死亡させるリスク」まで想定しています。

 「宿営地共同防護」も重大です。

 陸上自衛隊の内部文書(14年11月、笠井氏入手)によると、13年末に南スーダンで大統領派と前副大統領派の大規模な武力衝突が発生した際、自衛隊を含む各国部隊に宿営地の警備強化命令が出されました。しかし、自衛隊は各国部隊と連携して武器を使用し、武装勢力の侵入を阻止する任務には就きませんでした。内部文書は「我が国の従来の憲法解釈において違憲とされる武力行使にあたるとされていたため」としています。

 内戦状態が続く南スーダンでは今年7月、自衛隊が駐留する首都ジュバで大統領・副大統領(当時)両派の激しい戦闘で数百人が死亡する事態になりました。自衛隊宿営地内でも複数の弾痕が確認されました。自衛隊の派遣そのものが問われています。

戦争法の廃止の声広げ

 国連安全保障理事会は今月、「文民保護」などのため、いかなる相手であれ先制的な武力行使が可能な「地域防護部隊」の派遣を決めました。南スーダンPKOが攻撃的な性格を強める中、自衛隊が任務拡大に踏み出せば「殺し、殺される」危険は一層高まります。戦争法の発動を許さず、廃止を求める世論と運動を高める時です。


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