2016年8月20日(土)
介護保険利用料 2倍に
厚労省が論点提示 負担増続きに批判
厚生労働省は19日の社会保障審議会介護保険部会で、制度発足以来1割負担となっている介護保険の利用料について、2倍の2割に引き上げるなど負担増に関する論点を示しました。利用者団体などから「負担はすでに限界だ」「必要なサービスが使えず重度化が進む」との批判が相次ぎました。
厚労省は、「制度の持続可能性を高める」として、(1)昨年8月から一定の所得者(合計所得160万円以上)について利用料の1割負担を2割に引き上げたが、2割負担の人をさらに増やす(2)3万7200円の自己負担上限(高額介護サービス費)を、医療保険の現役並み所得者と同水準である4万4400円に引き上げる(3)介護施設入所の低所得者に対する「補足給付」(食費・居住費補助)について、昨年8月から一定の預貯金などがある場合は対象外としたが、宅地など不動産を保有している場合も新たに対象外とする(4)40〜64歳が負担する保険料の計算方法を見直し、収入に応じた「総報酬割」の導入により、健保組合や共済の負担が増える代わりに協会けんぽの負担が減り、国庫補助をゼロにできる―と説明しました。
これに対し、「生活保護を受ける高齢者が増えるなか、2割負担で必要なサービスが遠ざかり、重度化がすすんで結局、介護離職を増やすことになる」(全国老人クラブ連合会)、「昨年行われた補足給付の見直しはあまりに過酷で、負担が倍になってサービスを控えるなど重大な影響が出ている。さらに負担増とは受け入れがたい」(認知症の人と家族の会)との批判が相次ぎました。
厚労省はこれまで、「要介護1・2」の人に対する生活援助や福祉用具の貸与について自己負担とすることも論点として示しており、9月中に見直し案を絞り込む考えです。
負担増となる介護保険の見直し項目
・利用料負担を1割から2割に引き上げる
・負担上限額を医療保険並みに引き上げる
・施設入所者への補助で所有不動産の勘案
・大企業社員の保険料に「総報酬割」導入
際限ない負担増とサービス取り上げ
厚生労働省は19日の社会保障審議会介護保険部会に、現在1割負担となっている介護保険の利用料を2割に引き上げるなど、大幅負担増を強いる見直し案の論点を示しました。
すでに示されている「要介護1・2」の人に対する生活援助や福祉用具貸与の自己負担とあわせて、耐え難いサービス取り上げと負担増を強いるものです。
介護保険利用料は昨年8月から一定所得者について2割に引き上げたばかりです。見直し項目に上げられている「補足給付」(施設入所の低所得者に対する食費・居住費補助)も、昨年8月、給付を受けていた人の切り捨てを行ったばかりです。見直しから1年もたたないうちに再び見直して際限のない負担増と給付減を強いるなど許されません。
すでに行われた制度改悪によって「補足給付が受けられなくなり、13万円もかかる。家族の生活も破たんしてしまう」(60代女性、夫が特養入所中)など深刻な声が、認知症の人と家族の会のアンケートに寄せられています。
厚労省は、制度見直しの理由について「制度の存続」を掲げていますが、これでは国民はサービスが取り上げられ、負担増だけが強いられることにしかなりません。
安倍首相が掲げる「介護離職ゼロ」を本気で実施するというのなら、際限のない負担増とサービス切り捨てをやめて、だれもが必要なサービスが受けられるように施設や担い手を増やし、利用者の負担軽減をはかるなど、命と生活を支える制度に見直すべきです。(深山直人)