2016年8月19日(金)
核兵器禁止条約への多国間交渉
支持106カ国 欧州でも広がる
国連作業部会
【ジュネーブ=小玉純一】核軍備の縮小・撤廃へ多国間交渉の前進を図る国連作業部会で17日までに、核兵器禁止条約の交渉を2017年に開始することを支持する国が少なくとも106カ国となりました。
2017年開始 最大の焦点に
スイス・ジュネーブの欧州国連本部で17日に開いた公開会合で、スリランカが支持を表明。これに先立ち16日の会合では、欧州からマルタが支持表明し、リヒテンシュタインの支持も明らかになりました。さらにアイルランドも事実上の支持を表明。オーストリアが5日に支持を表明しており、欧州の支持国は4カ国となりました。
米国主導の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が多い欧州からの新たな支持は、核兵器禁止条約を進める国々から歓迎されています。
16日にアフリカ諸国54カ国、中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)33カ国、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国、太平洋諸国4カ国から、それぞれの代表が支持を表明しています。
CELACのドミニカの代表は、「核兵器はどんな文脈でも正当化できないし、どんな状況でも使われてはならない」と指摘。南アフリカやASEAN加盟国のラオス代表は「核兵器の禁止・全廃こそ、核兵器を使用させない絶対的保障だ」と強調しました。
総会報告をきょう採択
【ジュネーブ=小玉純一】核軍縮交渉の前進を図る国連作業部会は、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で19日に開く最後の会合で、国連総会への報告を採択する予定です。核兵器禁止条約の2017年交渉開始をどう扱うかが最大の焦点。タニ・トーンパクディ議長(タイ)は全参加国の合意を目指しています。
議長が作成した報告案は「結論と合意された勧告」の部分で、核兵器禁止条約を交渉する会議を「(国連)総会が2017年に招集することを、過半数の国が支持した」と明記。一方で、禁止条約の交渉を「現在の国際安全保障環境に照らして時期尚早であると、一部の国々はみなした」としています。
来年の禁止条約交渉開始を支持する多数派と、それに反対する少数派に分かれている現実が反映した内容になっています。
これに対し、禁止条約を時期尚早とする国々を代表して、5日の会合でドイツが、16日にはカナダが、それぞれ「受け入れない」と表明しました。
ただし、来年の交渉開始を支持する国が100カ国を超えることが明確となり、ドイツやカナダなどの少数派に妥協を迫る形となっています。少数派は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や豪州、日本などです。
核兵器を持つ米ロ英仏中とイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮は部会に参加していません。