2016年8月19日(金)
ビキニ被災質問主意書に政府答弁書
係争中を理由に答えず
紙氏、政府の姿勢批判
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アメリカによるビキニ環礁での水爆実験で多くの日本のマグロ漁船の乗組員が被災した問題で、日本共産党の紙智子参院議員が政府にたいし提出した「全容解明に関する質問主意書」(2日)に、政府はこのほど答弁書を出しました。
質問主意書の第一は、「ビキニ被災問題に対して真摯(しんし)に事実に向き合い調査をしてこなかったことが、この問題の全容の究明・解明並びに被災者の救済を遅らせたと考える。60年にわたりビキニ被災問題を放置してきた政府の責任は重大だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい」です。
答弁書は、「お尋ねの点については、現在、係争中の訴訟において争点となっており、お答えすることは差し控えたい」の一言でした。
二つ目は、「ビキニ水爆関係資料の整理に関する研究」でした。質問主意書は、聞き取り調査などをおこなった研究者や団体について公表することを求めました。
政府答弁書では、「厚生労働科学研究費補助金による『ビキニ水爆関係資料の整理に関する研究』の総括・分担研究報告書に参考文献として掲げられている資料及び厚生労働科学研究費補助金による『ビキニ水爆関係資料の線量評価に関する研究』の総括・分担研究報告書に参考文献として掲げられている資料等が収集されたと承知している」「聞き取り調査は行っていないと承知している」と回答しました。長年、ビキニ被爆問題に取り組んでいる関係者の資料は排除されていることを認めたものです。
答弁書を読んだ紙議員は、「司法の場で争われる(係争中)ことを理由に、内閣(行政)としての答弁を避けたのは、政府にビキニ被災問題の全容を解明する意志がなく、一部研究者の恣意(しい)的な研究(厚生科学研究)で、幕引きを図ろうとする姿勢が明らかになったといえる」としながらも、「係争中を理由にすることは許されない」と強調します。
なぜなら、農林水産委員会(2014年10月16日)で紙議員は、ビキニ水爆実験が「日本の漁業や水産業に深刻な影響を与えた」として、政府の見解を求めたのに対して、西川公也農林水産相(当時)は、「当時多くの漁業者に迷惑を掛けたと、これは誠に遺憾である」と答えているからです。紙議員は、「なぜ迷惑をかけたのか、政府が公開した資料からその経過を具体的に解明し、答弁する責任があります」と語っています。