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2016年8月19日(金)

きょうの潮流

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 国立大学の文系学部を縮小・廃止するという文部科学省通知(2015年6月)以来、多様な議論が交わされる中、『文学界』9月号で「文学部不要論」を論破する特集が組まれています▼かつて小説家を志して早稲田大学第二文学部に入学した芥川賞作家の滝口悠生(ゆうしょう)氏が、作家や評論家が教壇に立つ東京大学、早稲田大学、法政大学、近畿大学の文学の授業に参加したルポを掲載▼東大では、アメリカ人留学生の「文学を学ぶことで、世界を見る視野の広さが違ってくる。『何かの役に立つ/立たない』という基準を持ち込むこと自体間違っていると思う」という言葉に励まされ、滝口氏は自らの役割として、実益や即効性とは別の価値と魅力を小説の中につくり出し、読者に届ける必要を痛感します▼作家の堀江敏幸氏による早大の授業では、外界とは違うゆったりとした時間の流れる教室で作品を精読しながら、胸中に去来する感情や思考を見つめ言語化していく大切さに気づかされます▼滝口氏の大学時代の師・フランス文学者の千葉文夫氏との対談では、千葉氏の授業が「わからなさ」「つかみがたさ」について考え続け、結論は出さない豊かなものだったと回想し、そこに学びの本質があるのではないかと考察します▼物事を性急に判断しないこと、すぐに白黒つけないこと、わからないことを尊び、留保する勇気を持つこと。文学を学ぶことは、国も言語も意見も異なる他者と辛抱強く対話を続ける民主主義のプロセスにつながっています。


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