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2016年8月19日(金)

主張

八ツ場ダム費用増

膨張する大型事業の危険明白

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 国土交通省が、群馬県長野原町で建設中の八ツ場(やんば)ダムの事業費を約720億円増額し約5320億円にする計画変更案を発表(12日)しました。八ツ場ダムは、無駄な大型公共事業として国民の批判を浴びてきたものです。工事が本格化したあと700億円超の事業費を上積みすること自体、計画のずさんさを浮き彫りにしています。安倍晋三政権は経済政策「アベノミクス」を加速させるとして、大型開発をさらにすすめる方針ですが、今回の八ツ場ダムの費用膨張という事態は、無謀な大型公共事業が国民に深刻な負担と矛盾をおしつける危険を示しています。

当初の2・5倍に肥大化

 利根川上流の吾妻(あがつま)渓谷に八ツ場ダムをつくる構想を国が発表したのは、60年以上前の1952年です。治水対策や水資源確保などが建設の名目でした。地元の強い反対が続くなか、86年に公表された当初の基本計画で事業費は約2110億円とされました。その後、ダムの目的に発電が加えられたり、完成工期が延長されたりする計画変更が繰り返され、2004年時点で事業費は約4600億円に膨れ上がっていました。

 もともと八ツ場ダム計画は、建設の必要性や安全性などについて多くの疑問を突き付けられ、巨額の税金を投じることに異論と反対が相次いでいるものです。治水の効果といっても、同ダムが下流域の水位低減に役立たないことがさまざまな調査で明らかになっています。むしろダムが建設される吾妻渓谷が、火山堆積物の影響などによる地すべり地帯であり、工事がきわめて難航することや、新たな災害を誘発しかねないとの警告が出されています。水資源の確保という理由についても、東京都をはじめ利根川水系では水需要は減少しており、国の水需要推計は「過大」と問題視されていました。

 無駄な大型公共事業の典型として八ツ場ダムに批判が広がるなか、民主党政権下で建設は一時中断されたものの、その後再開され安倍政権下の15年1月にはダムの本体工事も開始されました。それからわずか1年半余で、またも計画が変更され事業費が当初の2・5倍以上にまで肥大化したことは、あまりにずさんです。

 今回の事業費膨張について、国交省は、地すべり対策が新たに必要になったこと、地質が想定と異なったことなどを理由にしています。これでは工事がすすむにつれ、新たに問題が起これば事業費がさらに膨らむおそれもあります。

 不要不急の大型公共事業を見通しも不明確なまま推進し、それがうまくいかなくなったら国民に負担を求めるやり方に道理はありません。問題だらけの八ツ場ダムは中止・凍結を含め見直すべきです。

将来に“負の遺産”残さず

 建設の是非が検証されていたダムも多くが、12年末の安倍政権復活以降、「継続」とされています。ダムだけでなく、リニア中央新幹線や整備新幹線に財政投融資などで公費をつぎ込み、大型開発推進の姿勢を強めています。採算や安全、環境などで多くの疑念や批判が上がっている事業をすすめることは国民の願いに反します。

 “負の遺産”になりかねない大型開発を推進する大企業優遇の政治から、減災・防災など国民の安全を守る公共事業を最優先にする政治への転換が必要です。


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