2016年8月19日(金)
辺野古違法確認訴訟 きょう結審
国の暴論と地方自治の対決
沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に伴う「埋め立て承認取り消し」の撤回を求める国の指示に、翁長雄志知事が従わないとして、国が起こした「不作為の違法確認訴訟」が19日、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)で結審します。2012年の地方自治法改定によって国からの提訴が可能になって以来、地方自治体を相手に違法確認を求める初めての訴訟です。5日の第1回口頭弁論の場で、高裁は早くも第2回弁論での結審と、9月16日のスピード判決を言い渡し、予断を許さない状況となっています。
今回の訴訟の発端は、昨年来の代執行訴訟が和解した直後の3月に、知事による「埋め立て承認取り消し」の撤回を求めて国土交通相が出した「是正の指示」です。第三者機関の国地方係争処理委員会は6月、「指示」が適法かどうかについては判断せず、双方に改めて「真摯(しんし)な協議」を促す決定を下しました。
協議応じない国
知事は同委の決定を受け、和解条項で想定されていた県からの提訴を見送って国に協議を求めるなど、解決に向けた措置を講じてきました。一方、国は、まともに協議に応じないまま、係争委の決定を無視し、知事を不作為(指示に従わず何もしていない)と断じる提訴に踏み切りました。
知事は、5日の第1回口頭弁論の冒頭陳述で、全く別の裁判である代執行訴訟ですでに主張は尽くされたなどとして即日結審を求める国の暴論について、「驚きを禁じえない」と批判。この裁判を「地方自治、ひいては民主主義の根幹が問われている裁判だ」と強調し、国の主張が通れば「地方自治は死に、日本の未来に拭いがたい禍根を残す」と強い危機感を示しました。
工事再開できず
県側は、翁長知事による「埋め立て承認取り消し」の是非のみならず、係争委の決定を無視して国が提訴したことや、国交相の「指示」そのものについても争点だと主張しています。一方、国側は訴状でも代執行訴訟と同様の主張を繰り返すだけで、係争委の審査や決定を踏まえた主張を一切展開せずに知事を「不作為」と決めつけています。
国が異常なスピード判決を高裁に迫るのは、すでに工事が相当期間遅れていることに加え、代執行訴訟と異なり、最高裁の判決確定までは工事が再開できないためです。
高裁側は、国の求める即日結審こそしなかったものの、19日の結審で知事の本人尋問以外は認めず、県が申請していた名護市長ら8人の証人尋問を全員却下しました。第1回弁論からわずか半月での結審に対し、翁長知事は「大変残念だ」と述べ、県が求めた公平・充実した審理とはかけ離れた訴訟指揮となったことを指摘しています。(池田晋)
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