2016年8月17日(水)
主張
教育のつどい
子どもたちの成長のために
「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい―教育研究全国集会2016」(教育のつどい=同実行委員会主催)が19日から3日間、静岡市内で開かれます。「学ぼう、語ろう、いかそう―憲法と子どもの権利条約が生きて輝く教育を」をテーマに全国の教職員、保護者、研究者、市民らが集まります。国語などの各教科、学校づくり、障害児教育、不登校など28にのぼる分科会も開かれます。
型にはめる教育ではなく
「つどい」で発表される教職員・保護者などの三百数十のリポートには、安倍晋三政権のもと年々教育が型にはめられていく姿が示されています。
“学力テスト対策で過去の問題や類似問題を生徒にやらせるよう求められ、普通の授業ができない”“生徒指導や授業のマニュアルが押しけられ、自由な教育ができない”
多くの子どもは、政治が生んだ貧困や自己責任論の中で、必要な安心を得られずにいます。そんな子どもを教育で型にはめるのは子どもを追いつめるだけで、二重三重に許されないことです。
各リポートには、こうした状況に流されず、本来の教育を営んでいくヒントがつまっています。
採用されて間もないある小学校教師は、2年生になってもひらがなを半分も覚えていない子どもや、遅刻が多く、話を聞けない子どもを受け持ち、放課後ていねいに補充学習をしたり、苦手な給食が食べられるように励ましたりしました。「一人ひとりの児童が必要としていることは何か、一人ひとりが安心して学ぶために教員である自分が大切にしたいことは何か」を問い続けたいとのべています。
ある中学校教師は、顔が見えなくなるほど髪を伸ばし、毎日マスクをつけて通学する生徒との2年間の交流を記しています。少しずつ距離を縮め、苦手な勉強の計画をたてて励まし、心からほめる教師に、生徒はやがて顔をあげしゃべるようになり、マスクをはずして卒業していきます。
子どもをいとおしみ、ありのままの姿を受けとめ理解して、一人ひとりの成長を支える―型にはめる教育の対極にある、誰もが安心できる教育がみえてきます。
日本の教育予算は経済協力開発機構(OECD)諸国の中で最低の水準で、重い学費負担と劣悪な教育条件は深刻です。「つどい」では、教育費の無償化・就学援助の充実を実現した地域ぐるみの運動、教職員の多忙化の解決なども報告されます。
戦争法を強行した安倍政権は、教育を「戦争する国」「弱肉強食の経済社会」という国策に従う“人材づくり”の場にしようとしています。主権者教育への介入はその一環です。「人材養成」を前面にした学習指導要領の大幅な改定など新たな政策も準備しています。そうした動向を検討し、どう対応するかを探ることにも期待が集まります。
対話と交流を力に
「教育のつどい」は、子育てや教育の悩みを率直に語りあえることも魅力です。そんな交流こそ、困難にめげずにゆきとどいた教育を学校や地域からすすめ、やがては政治を変え教育政策を転換させる力になります。
多くの教職員、保護者、市民の参加で大きく成功させましょう。