2016年8月17日(水)
SEALDs 走り続けた1年3カ月
「私」が語る 思い広げる
民主主義は止まらない
SEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)は15日、解散しました。結成から約1年3カ月、戦争法(安保法制)反対のデモから選挙へと走り続けました。その行動は「野党共闘」の実現や、デモや選挙運動に積極的に市民が参加するなど、新しい地平を切りひらきました。(前田智也)
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シールズは、2015年5月3日、憲法記念日に東京と関西でそれぞれ結成されました。中心になったのは、秘密保護法に反対していた学生たち(SASPL=サスプル)です。活動テーマを広げ、「自由と民主主義を守る」こと、そして民主主義、立憲主義を否定する現政権に対抗するために「野党勢力の結集」を柱にスタートしました。
今では見慣れた光景となった、共産、民主、維新、生活、社民の野党5党(当時)代表が初めて並んだのも、シールズの渋谷街宣でした(15年6月27日)。
毎週金曜日、15年6月から9月まで続いた戦争法に反対する国会正門前抗議は、シールズの代名詞となりました。「民主主義ってなんだ? これだ!」「言うこと聞かせる番だ俺たちが」のコールや、コンビニのネットプリントで拡散された「戦争法案 絶対反対」などと書かれたプラカードを手に持つデモや集会のスタイルは、全国に広がりました。
同法に反対するデモや集会は、月を追うごとに増えていきました。本紙が報道しただけでも、約70カ所(5月)、約200カ所(6月)、300カ所超(7月)、約450カ所(8月)、330カ所超(9月19日まで)です。
東北、東海、沖縄でもシールズが結成されました。この動きに呼応して、各地で若者グループが発足。協力して全国いっせい行動も行いました。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「安全保障関連法案に反対する学者の会」「安保関連法案に反対するママの会」などとも積極的に共同しました。
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「2015年○月○日、○○○○(名前)。私は戦争法案に反対します」―。このフレーズで締めくくられる、若者のスピーチが話題になりました。「私」を主語に一人称で語られる言葉。一人ひとりが自分の頭で考え、自分の言葉で語った訴えは共感を大きく広げました。
「私はしゃべるのが苦手だし、うまく反対する理由をいえないかもしれません。でも、私は学ぶことをやめないし、間違えていることには間違えていると、違憲なものには違憲だと、人権くらい守れと、私やそしてきっと仲間たちもいい続けるし、黙りません」=昨年8月23日、大学1年生の伊勢桃李さん(19)、東京・表参道で=
「立憲主義をわかってない議員も、それを無視する政党もこの怒りと一緒に絶対に忘れません。この法案が通って死ぬのは民主主義ではなく、現政権とその独裁政治です。民主主義は止まらないんです」=昨年9月19日、大学2年生の大澤茉実さん(21)、国会正門前で=
戦争法が強行成立された15年9月19日後も、「戦争法廃止」「野党は共闘」の声は広がり続けました。日本共産党は、その日の午後に「戦争法廃止の国民連合政府」構想を提唱。市民運動も、昨年12月20日に「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」を結成。シールズのメンバーも参加しています。このうねりが今年2月19日、国政史上初めて、本格的な選挙協力など4項目で5野党が合意し、衆院北海道5区補選、参院選、都知事選挙での野党共闘に結実しました。
「選挙にかかわろう」。選挙の景色が変わりました。市民と同じ目線に立って話す候補者、後ろには市民と野党各党の代表が並び手をつなぎます。手には「みんなのための政治を、いま。」と書かれたプラカード。市民が自分の意志で選挙事務所に駆けつける。市民と野党が一緒になってたたかう姿が、全国各地で見られるようになりました。
参院選でシールズは、応援演説や選挙事務所で活動するなど、全国を駆けまわり奮闘しました。結果は、32ある1人区で野党統一候補が擁立。福島、沖縄では現職閣僚を破るなど11の選挙区で野党統一候補が勝利しました。
シールズがつくった「政治に主体的に参加しよう」という新しい動きは、次の世代へとつながっています。首都圏や西日本、京都などでは高校生を中心にした安保法制反対のグループが結成されました。
「私は政治への参加を日常の延長と考えています。街で偶然見かけたデモに飛び入り参加をしたり、政治の話題が自然と出る社会が民主国家として良いことだと思う」=「赤旗」16年2月8日付、T―ns SOWLのあいねさん(17)=
日本社会は少しずつ、そして確実に変化しています。「市民が立ち上げる政治は、ようやく始まったばかりです」。15日に発表された、シールズ解散にあたってのコメントでは、このように書かれています。
「この動きを末永く、ねばりづよく続けていく必要があります。その積み重ねは、長い時間をかけて社会に根をおろし、じっくりと育ち、いずれは日本の自由と民主主義を守る盾となるはずです」
(本文中の団体名、年齢はいずれも当時)