2016年8月16日(火)
伸び悩む個人消費
アベノミクスの破たん示す
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前期比0・0%増と横ばいとなった2016年4〜6月期の国内総生産(GDP)。個人消費は伸び悩み、企業の設備投資は減少するなど日本経済の低迷を反映しています。安倍晋三政権が進めてきた経済政策(アベノミクス)の破たんを示すものです。(清水渡)
物価下落でプラス
GDPの6割を占める個人消費は実質0・2%増とわずかな上昇にとどまりました。しかも、生活実感に近い名目値で、個人消費は0・1%減です。生活苦から買い物を切り詰めたものの、それ以上に物価が下落したために実質でプラスとなったと考えられます。「デフレ脱却」を金看板としてきたアベノミクスですが、デフレによって実質個人消費がプラスになった格好です。
深刻なのは企業の設備投資です。実質0・4%減と2期連続でマイナスとなりました。個人消費が低迷するもとで内需に期待できないとして、企業が設備投資を減らした結果です。安倍内閣は“企業の税負担を減らせば、設備投資や賃金は増える”として法人実効税率を引き下げてきましたが、まったく役に立っていないことが明白になりました。
公共事業が穴埋め
GDPのマイナス転落を防いだのは公共事業です。公的固定資本形成は2・3%増と大幅な伸びを示しました。予算計上された公共事業の早期執行が反映しています。ただ、国民の生活悪化を起点とする日本経済の低迷を公共事業が穴埋めするゆがんだ構造です。
経済の悪化は、安倍政権が事業規模28兆1000億円という巨額の経済対策を組まなければならなかったことからも明らかです。しかし、その内容はリニア中央新幹線の大阪延伸前倒しを目玉とする大型プロジェクトが中心。経済のゆがみをますます広げるものです。
経済の低迷は、雇用と所得が安定していないためです。雇用者報酬は前期比0・3%増(実質)、名目値では0・1%増にとどまります。経済財政白書は、個人消費の弱さが目立つ若年子育て世代について、社会保険料などの負担が増加する中で将来も安定的に収入が確保できるかの不安があると指摘。その背景として、若年層ほど非正規雇用比率が高いことをあげています。
アベノミクスの破たんは国際的にも常識になりつつあります。国際通貨基金(IMF)は対日審査の年次報告書で、アベノミクスについて「弱い消費、低調な民間投資、低迷する輸出を背景に、成長は弱く、デフレは根強く残っている」と指摘。金融緩和についても「より緩和的でより長期にわたる金融緩和が潜在的なリスクを増加」させるとしました。
「三つのチェンジ」
低迷する日本経済を国民本位に立て直す必要があります。そのためには、個人消費をあたため、内需をよくすることが大事です。日本共産党が参院選中に掲げた、格差を正し、経済に民主主義を確立するための三つのチェンジが必要です。
(1)消費税増税を中止し、富裕層や大企業に応分の負担を求める税金の集め方のチェンジ(2)社会保障や教育、子育てに重点を置く税金の使い方のチェンジ(3)ブラックな働き方をなくし、非正規から正社員への流れを作るため雇用のルールの強化を図ることや中小企業への支援を強めながら最低賃金の大幅引き上げを目指す働き方のチェンジ―この方向でこそ国民生活が安定し、日本経済も安定的に成長する道が開かれます。