2016年8月15日(月)
東京都と政令市 「待機児童」数 増大
本紙調査 自治体公表数 実態反映せず
東京都や政令指定都市の「待機児童」数(4月時点)を本紙が調べたところ、東京都では増加した一方、政令市は微減にとどまったことが分かりました。待機児童が大都市で深刻な状態が続いていることを示しています。待機児童に数えられない“隠れ待機児童”を含めるとさらに膨れ上がるのは必至です。
東京都が7月に公表した待機児童は8466人。前年同月より652人増えました。20の政令指定都市では240人減の1841人となっています。
子ども子育て新制度(2015年〜)で、従来は認可外施設だった小規模保育施設などが認可施設となるなど施設数は増えていますが、入所を希望する子ども数に追いついていないのが実態です。
しかも、各自治体が公表する「待機児童」には、東京都の認証保育所など自治体独自の基準で運営される施設に入所する児童は含まれておらず、育休の延長や求職中を含めるかどうかも、自治体によって判断がばらばらです。
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東京都では、独自の認証保育所には1万215人(前年比338人増)が入所していますが、「待機児童」数からは除外されています。
横浜市は、待機児童を「7」と公表していますが、独自の横浜保育室への入所や育休の延長、「主に自宅で求職中」などは除外。実際には、認可保育所に申し込みながら入所できていないのは3117人(前年比583人増)となります。
認可保育所等への入所希望数から入所数を引いた数の政令指定都市の合計では、認可保育所等に入れない子どもの数は、少なくとも2万1155人にのぼり、公表の9倍になります。
認可保育所等に入れない数を明らかにしている東京23区では、1万8084人が実際に認可保育所に入所できておらず、公表(4500人)の約4倍です。
厚労省は、昨年4月の「隠れ待機児童」が、公表した待機児童数の3・6倍の8万3375人だと明らかにしていますが、今年はさらに増える可能性もあります。
安倍政権の対策は規制緩和
基準引き下げで詰め込み推進
待機児童を解消するにはまず、正確な待機児童数を把握することが大原則です。ところが、今年度の待機児童数の集計(9月上旬公表予定)にあたり、国は待機児「定義」も変更せず、自治体からの報告も従来通りです。
しかも、安倍政権の待機児童対策は、規制緩和と詰め込みで対応するもので、子どもの成長や安全を二の次にしています。
3月の「緊急対策」では、国の最低基準に上乗せしている自治体に対し、引き下げを要請。定員超過となる場合の補助金減額の猶予期間も引き延ばし、詰め込みを推進してきました。
「1億総活躍プラン」では、10万人分の受け皿拡大を盛り込みましたが、そのうち5万人分は、認可外施設である「企業主導型保育」です。保育基準は、定員が20人を超えても保育士は半分でよいなど大きく緩和されています。
待機児童解消に不可欠の保育士の処遇改善は、来年度予算まで先送り。その中身もわずか2%(月約6000円)引き上げるだけです。ベテラン保育士には月4万円引き上げるとしていますが、全産業平均から約10万円も低い実態を改善するには遠く及びません。
一方で、保育士不足を口実に4月から朝夕の保育士配置を2人から1人にするなど認可保育所の人員の配置基準の規制緩和を進めています。
規制緩和をやめて、国と自治体の責任で認可保育所の抜本増設と待遇改善による保育士確保を進めるべきです。(鎌塚由美)