2016年8月13日(土)
主張
伊方原発再稼働
住民の不安を踏みにじるのか
四国の西の端から細長く突き出た愛媛県の佐田岬半島―その付け根付近に位置する四国電力の伊方原発3号機の再稼働が強行されました。国内の原発では唯一稼働中の九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に並ぶものです。いったん再稼働した関西電力高浜原発3、4号機(福井県)はその後裁判所の差し止め決定で運転を中止しています。伊方原発も7月末の再稼働予定が直前に1次冷却水循環ポンプの不調が発覚して半月近く延期されました。国内のほとんどの原発が停止し、再稼働が予定通り進まなくても電力不足は起きません。再稼働は中止すべきです。
事故の際の逃げ場がない
地図で伊方原発の場所を確かめるだけでも、この原発がいったん事故を起こせば住民の避難もままならず、大混乱を引き起こすことが容易に想像できます。細長い半島の原発から先の西側に暮らす住民は、いったん大事故が起きれば海に逃れるしか避難のすべがありません。海が荒れたり、津波などが起きたりしたときにはどうするのか、住民の不安は深刻です。
原発はもともと未完成の技術で、東京電力福島原発事故が証明したように、事故が起きればコントロールできません。しかも伊方原発はウランを燃料にする通常の原発と異なり、使用済み核燃料から取り出した猛毒のプルトニウムをウランと混ぜて燃やすプルサーマルの原発です。コントロールの困難さや事故の際の被害拡大も懸念されます。
世界有数の火山と地震の大国の日本に原発を建設すれば、大きな事故が起きかねないことは十分予測できることです。現に東日本大震災では、福島原発などの原発が地震と津波で破壊されました。伊方原発も、すぐそばを国内最大の活断層と言われる本州から九州まで続く中央構造線断層帯が走っています。いつ大きな地震が起きるかわかりません。しかもこの春以来の九州地方の連続地震で、周辺の地震活動の活発化が懸念されます。この時期に伊方原発を再稼働させるのは、まさに最悪の選択としか言いようがありません。
安倍晋三政権は、原子力規制委員会が審査で「適合」と認めた原発は再稼働させると、原発再稼働を推進しています。原子力規制委は運転開始から40年たった原発は原則廃止するという法律の趣旨を踏みにじって、関西電力高浜原発1、2号機や美浜原発3号機(いずれも福井県)など、老朽原発まで相次いで「適合」にしています。もともと裁判所からも「緩やかに過ぎる」と批判されている基準に合格したからといって、「安全」などと言えないのは明らかです。電力会社の経営のことだけを考えたとしか言いようのない再稼働推進路線は根本から転換すべきです。
原子炉上蓋など問題山積
伊方原発の周辺住民など関係者は再稼働の直前にも、伊方原発3号機の原子炉容器の上蓋(うわぶた)が国内の原発では残り少ない応力腐食割れを起こしやすい材質のまま再稼働されようとしていることや、7月に発生し再稼働の延期につながった冷却水ポンプの不調が重大事故につながる危険があることなども指摘して、中止を求めました。
伊方原発は再稼働しなくても夏の電力需要は賄えています。問題山積の、住民の不安を踏みにじった再稼働は、絶対に許されません。