2016年8月13日(土)
伊方再稼働 安全置き去り
事故起きたら逃げられない 愛媛で全国で抗議
再稼働に反対する国民多数の声を押し切って四国電力は12日、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を再稼働させました。新規制基準の施行後に稼働した原発は、九州電力川内原発1、2号機と関西電力高浜原発3、4号機(司法判断により停止中)に続いて5基目です。事故への不安、避難の困難さなど安全がないがしろにされていることへの怒りから、地元をはじめ各地で「伊方原発を止めろ」と抗議行動が行われました。
同原発で原子炉が起動した状態になるのは約4年7カ月ぶり。3号機は使用済み核燃料を再処理して取り出したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用します。四電は当初、7月下旬の再稼働を狙っていましたが、1次冷却水漏れのトラブルなどで延期となっていました。
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国民多数の声無視
伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働は、東京電力福島第1原発事故の収束も程遠く、今なお9万人近くが避難生活を強いられている事故の現実から目を背け、再稼働に反対する国民多数の声をないがしろにした暴挙です。
地元紙の愛媛新聞が先月行った県民世論調査でも伊方原発の再稼働に否定的な回答が54%と過半数を占めました。同紙は12日付社説で「不安な見切り発車 容認できない」と指摘し、事故時に海路での避難先が想定されている大分県の地元紙も「伊方原発は大分県民に不安を与えるだけの存在」として、再稼働は「到底許せない」(大分合同新聞)と批判しています。
伊方原発は国内最大級の活断層「中央構造線」から6〜8キロと至近にあり、再稼働は無謀だと指摘する専門家は少なくありません。
さらに同原発は同県西端の佐田岬半島の付け根に立地します。日本で最も細長いといわれる半島で、国内有数の地滑り地帯。地震や津波を伴う複合災害になれば、半島の約5000人の住民が孤立する恐れがあります。援助が必要な災害弱者のいる施設で働く職員は「事故が起きたらどこにも逃げられません」と話しています。
しかも熊本地震のように、震度7が繰り返し起きて家屋が倒壊した事態を考えれば、原発から5〜30キロ圏の約11万人の住民が事故時、いったん「屋内退避」するという計画自体が成り立つのか。住民の安全を置き去りにした再稼働は中止すべきです。
伊方原発の場合、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を使うプルサーマル運転です。原子炉の制御棒の利きが悪くなるなどの安全上の問題だけでなく、使用済みMOX燃料の処理方法は何一つ決まっておらず、それを増やし続けるのは無責任というほかありません。
原発に固執し再稼働を推進する安倍政権の責任は重大です。(三木利博)
伊方原発
愛媛県伊方町にある四国電力唯一の原発で、瀬戸内海に突き出た佐田岬半島の付け根に立地。加圧水型軽水炉3基のうち、1号機は1977年、2号機は82年に運転開始。出力は各56万6000キロワット。四国電力は今年3月、1号機の廃炉を決定しました。3号機は94年運転開始し、出力89万キロワット。定期検査で2011年4月に停止していました。周辺住民らは再稼働差し止めを求め、広島、松山、大分の3地裁に仮処分を申請しています。