2016年8月8日(月)
見えてきた 高江ヘリパッド強行のねらい
やんばるの森を“侵略拠点”に
全国から機動隊を動員して住民を暴力的に排除、法を無視しての違法な工事…。安倍政権はなぜ、そこまでして沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド(着陸帯)建設に固執するのか。そこには、名護市辺野古の新基地建設と一体に、北部訓練場を陸海空一体の侵略拠点に変えようという米海兵隊の狙いと、米側の要求を最優先する安倍政権の姿勢があります。(竹下岳)
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無法の工事開始なぜ…
「今日の勝利を喜ぼう!」6日午前9時。農地の片隅にある通称「N1裏ゲート」前の建設監視テントで、県内外から集まった約500人の人々は喜びを爆発させました。防衛省沖縄防衛局は同日早朝にもテントの強制撤去を狙っていましたが、これを団結の力ではね返したのです。
7月22日、安倍政権は数百人の機動隊を動員して高江地区を封鎖、事実上の戒厳令下において「N1ゲート」を突破。工事を開始しました。沖縄防衛局の計画では、このN1からN1裏まで約3キロの工事用道路を建設し、ダンプカーなどを通す計画です。これにより、「N1地区」のヘリパッドを建設するための車両の通行がスムーズになります。
しかし、狙いはそれにとどまりません。米軍の要求がもっとも高い「G地区」のヘリパッド建設の資材搬入路の確保です。
米軍の要求が最優先
現在、建設強行されているヘリパッドは、1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意に基づくもの。北部訓練場「過半」返還の条件として6カ所のヘリパッド建設が合意されました。
2007年に防衛省がまとめた環境影響評価書によれば、この6カ所はいずれも「米軍の要望」に基づいて選定されました。なかでも、「強い要望」があったのがG地区です。
評価書は同地区について、「米軍から運用上、特に新規提供された水域における訓練も含め訓練及び兵士の救助を支援する目的」であると述べています。
G地区は海に近く、その先にはSACO合意に基づいて提供された米軍の訓練水域(宇嘉川河口)があるため、上陸訓練が可能になります。海から陸への侵攻を主任務とする海兵隊にとって、水域と一体になった訓練場は決定的に重要です。
沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんはこう指摘します。「これまで海兵隊は北部訓練場で陸空の訓練しかできなかったが、今後は陸海空一体の訓練が可能になる」
加えて、名護市辺野古の米軍新基地には、海兵隊が上陸作戦に用いる強襲揚陸艦が接岸できる軍港や、LCAC(エアクッション型上陸艇)が上陸できる斜路があります。
新基地に配備されるMV22オスプレイが高江のヘリパッドを使用し、海兵隊員が辺野古新基地と一体になって空と海から陸地に侵攻するための訓練を行う―。恐るべき狙いが浮かび上がります。
政府がいう「沖縄の負担軽減」どころか、基地機能の大幅な強化です。
しかも、環境影響評価書はG地区について、「他の地区に比べ比較的多くみられるヤンバル特有の種の保護と沿岸域における風衝影響に留意が必要」と記しています。保護すべき固有種が多数生息していると知りながら、米軍の要求最優先であることを、防衛省は公然と認めているのです。
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強制撤去に根拠なし
ただ、現在、県道からG地区への進入路は村道を使うしかありませんが、東村は工事で村道を使わせない方針です。沖縄防衛局は海側からヘリで資材を運ぶ計画も示していますが、作業効率は格段に落ちます。このため、「N1裏」を突破してのルート確保が極めて重要なのです。
高江弁護団の小口幸人弁護士は「N1裏でのテントの強制撤去は法的に無理がある」と指摘します。
防衛省は、テントや車両などの強制撤去の法的根拠として防衛省設置法第4条19項をあげています。同条は防衛省の所掌事務に関するもので、19項は駐留米軍への施設区域の提供を規定しています。
小口弁護士は、「基地建設の妨害だから排除できる、というのはあまりに無理がある」と指摘。「反原発派が経済産業省の敷地に設置したテントの撤去も司法手続きをとった上で、最高裁判決が確定して、ようやく撤去できる。それが法治国家としての当たり前の姿だ」
N1裏ゲートが設置されたのは2年前。1〜2人で守ってきた時期が長く続きました。いまは連日、多くの人々がつめかけ、非暴力のたたかいを続けています。やんばるの森を守り、日本の平和と民主主義を守る砦(とりで)になりつつあります。
高江ヘリパッド建設の経緯
96・12 SACO合意で6カ所のヘリパッド提供を合意
07・7 高江周辺で建設に着手
15・2 N4地区の2カ所を先行提供
16・7 残り4カ所の建設に着手
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