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2016年8月8日(月)

安倍首相の 危険な「働き方改革」

労働政策決定の場から労働者の声を遠ざける

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担当相任命のねらい

 安倍晋三首相は改造内閣の「最大のチャレンジ」は「働き方改革」だとのべ、加藤勝信一億総活躍担当相を「働き方改革担当相」に任命しました。長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現をあげ、「非正規」という言葉をこの国から一掃するとのべました。(3日の記者会見)

 そのうえで「働き方改革担当相」のもとに「働き方改革実現会議」を開き、年度内をめどに実行計画をまとめたいとのべました。

 これは労働行政を大本から崩す重大な動きといえます。この「働き方改革」は本来なら厚生労働省が担当するのが当たり前です。それを新設の大臣のもとの会議でやるという“厚労省はずし”の体制をつくったことに危険なねらいがあります。

国際基準を無視

 労働問題は、経営者と労働者の利害が対立するので、労働法の改定や政策を決めるさいは、厚生労働大臣の諮問機関である公益、労働、経営の3者同数(各10人)で構成される労働政策審議会(労政審)で議論し、その答申を受けて決める制度になっています。これはILO(国際労働機関)が示す国際労働基準です。

 「働き方改革」をとなえ長時間労働の是正、同一労働同一賃金を実現する実行計画をつくるというなら、この3者構成の労政審に諮問するのが通常の流れです。わざわざ別の大臣、機関をつくって議論する必要はありません。

 あえてこういう体制をとったのは、労政審だと労働者代表がいるので、財界の意向がストレートで通らないという考えが背景にあります。たとえば政府の産業競争力会議の議員である竹中平蔵氏(パソナ会長)は、労政審では「議論は全く前に進まない」(2013年12月10日)などと、3者構成批判をくりかえしています。

労政審を形だけに

 「働き方改革」で担当大臣と新しい会議の設置で、安倍内閣は非正規雇用労働者の待遇改善に本気になっているとみたら大間違いです。実際はその逆で、労働者代表を加えずに何の障害もなく長時間労働、低賃金、不安定雇用の温存・拡大など財界に都合のいい働き方を推進する新しい体制をつくったということにほかなりません。

 これまで安倍政権は、産業競争力会議や規制改革会議など財界代表を中心に労働者代表を入れない会議で雇用・労働政策をまとめ、それを閣議決定し、ほとんど固まった後に労政審の手続きを踏むというやり方をとってきました。

 いま政府が国会に出している「残業代ゼロ」法案はその典型です。そのやり方を雇用労働政策そのものの分野ですすめたら、労政審はもはや単なる形だけの追認機関にすぎなくなってしまいます。

 すでにいま厚労省で「多様な意見を反映する」ためとして労政審の在り方を見直す議論が始まっています。この問題とあわせて、労働者の声を遠ざけ、財界の主張がより強く反映される労働政策決定の新しいシステムづくりの動きとして注視する必要があります。

 (昆弘見)


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