2016年8月7日(日)
日本共産党創立94周年記念講演会
野党と市民の共闘と、日本の政治の展望
志位委員長の講演
日本共産党の志位和夫委員長が5日に行った党創立94周年記念講演「野党と市民の共闘と、日本の政治の展望」は次の通りです。
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お集まりのみなさん、全国のみなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。ご紹介いただきました、日本共産党の志位和夫でございます。(拍手)
今日はようこそお越しくださいました。私からも心からのお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
日本共産党は、昨年9月19日、安保法制=戦争法が強行されたその日の午後に、「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」を「提案」し、野党と市民の共闘によって安倍政権を倒し、日本の政治を変えるという、前例のない新しい道に踏み出し、その成功のためにあらゆる力をそそいできました。
このとりくみは、どんな意義をもっているのか。どんな成果をあげたのか。今後の課題と展望はどうか。今日は、私は、「野党と市民の共闘と、日本の政治の展望」と題して、お話をさせていただきます。どうか最後までよろしくお願いいたします。(拍手)
東京都知事選挙――今後につながる二つの大きな成果
冒頭、7月31日の東京都知事選挙についてお話ししたいと思います。
野党と市民が統一候補として推した鳥越俊太郎さんは、勝利はできませんでしたが、134万票を獲得し、大健闘されました(拍手)。私は、ご支持いただいた都民のみなさんに心からの感謝を申し上げるとともに、勇気をもって出馬され、大奮闘された鳥越さんに心からの敬意を申し上げます。(拍手)
私は、都知事選挙のたたかいは、今後につながる二つの大きな成果をつくったと考えております。
一つは、鳥越俊太郎さんが、都民の願いに応えた政治の転換の旗印を堂々と掲げたことです。鳥越さんは、「都民の声を聞く」姿勢を貫き、「住んでよし、働いてよし、学んでよし、環境によし――四つのよしの東京」を掲げ、これまでの大型開発優先から、都民の暮らし優先の都政への転換の旗印を掲げました。さらに、「非核都市宣言」を公約し、平和と憲法を守り、安倍暴走政治ストップの旗印を掲げました。鳥越さんが、これらの大義ある旗印を堂々と掲げてたたかいぬいたことは、今後のたたかいに必ず生きると、私は確信をもって言いたいと思います。(拍手)
いま一つは、参議院選挙で大きな成果をあげた「4野党プラス市民」という共闘の枠組みが、都知事選挙でも発展したことです。首都・東京でも野党と市民が肩を並べてたたかい、協力の関係は市区町村段階まで多面的な形で発展しました。鳥越さんは、選挙結果を受けての記者会見の最後に、こう発言しました。
「参議院選挙の時から、自公勢力に対抗するためには野党がまとまらなければダメだと思っていました。都知事選でも野党4党、生活者ネット、市民連合のみなさんと共闘することによって、こういう結果になりましたが、十分なたたかいができました。野党4党(の共闘)は絶対に今後も必要である。次の衆議院選挙ではぜひ、野党4党は統一してたたかっていただきたい」(拍手)
私は、この発言を聞いて胸が熱くなりましたが、これは都知事選挙を真剣にたたかった、多くの方々の共通の思いではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
日本共産党は、鳥越俊太郎さん勝利のためにたたかった多くの市民、政党のみなさんと力をあわせて、鳥越さんが掲げた公約と政策を実現するために、全力をあげて奮闘する決意を表明するものです。(拍手)
参議院選挙の結果――二つの大目標にてらして
7月10日の参議院選挙は、戦後初めて、野党と市民が全国的規模で選挙協力を行うという、歴史的選挙となりました。わが党は、野党共闘の勝利と日本共産党の躍進という二つの大目標を掲げてたたかいました。
野党と市民の共闘――初めての挑戦としては大きな成功
野党と市民の共闘という点では、さまざまな困難をのりこえて全国32の1人区のすべてで野党統一候補を実現し、「安保法制廃止、立憲主義回復、安倍政権打倒」という共通の大義を掲げてたたかいぬきました。私は、まずこういう態勢をつくってたたかえたということ自体が、かつてない画期的な出来事であることを強調したいと思います。(拍手)
そして11の選挙区で激戦を制して自民党に勝利したことは、きわめて重要な成果であります。(拍手)
みなさん。野党共闘は、初めての挑戦としては大きな成功をおさめたと言ってよいのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
日本共産党――比例で601万票への前進は重要な成果
日本共産党は、比例代表で5議席を獲得し、市田忠義さん、田村智子さん、大門実紀史さんの議席を引き続き確保するとともに、岩渕友さん、武田良介さんを新しく国会議員団に迎えました(拍手)。選挙区では首都・東京で山添拓さんの初当選を見事かちとりました(拍手)。改選3議席を6議席へと倍増させ、非改選とあわせて14議席に前進しました。岩渕さん、武田さん、山添さん、3人そろって30代の若い政治家であることは、未来にとっての希望であります。(拍手)
とりわけ、比例代表選挙の得票が、躍進した2013年の515万4千票(9・68%)に比べて、601万6千票(10・74%)へとさらに前進し、参院選の比例代表では史上2番目の得票を得たことは重要な成果だと考えます。
目標とした「850万票、15%以上」を一気に達成するにはいたりませんでしたが、「850万票」はそれを実現するまで繰り返し挑戦する目標として、引き続き正面から追求することとしたいと思います。(拍手)
選挙区選挙で、全国13の複数定数の選挙区で果敢に議席に挑戦し、議席に届かなかった12の選挙区でも、298万票から333万票へと全体として得票を伸ばし、一連の選挙区で次の勝利への足掛かりとなる結果を得たことも重要であります。(拍手)
こうして、参議院選挙で、私たちは、掲げた二つの大目標に照らして、全体として大いに健闘したといえる成果をおさめることができました。(拍手)
私は、野党共闘と日本共産党にご支持をお寄せいただいた有権者のみなさん、奮闘された市民のみなさん、支持者、後援会員、党員のみなさんに心からのお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
今後に生かすべき教訓(1)――野党と市民の共闘について
野党と市民の共闘は、きわめて重要で豊かな教訓をつくりました。私はとくに、三つの点を強調したいと思います。
“共闘効果”が発揮された――「共闘『足し算』以上」と各紙が注目
第一は、「1+1」が「2」でなく、それ以上になる“共闘効果”が発揮されたということであります。32の1人区のうち28の選挙区で野党統一候補の得票が4野党の比例票の合計を上回りました。無党派層の5割〜6割、与党支持層の一部まで獲得し、「共闘『足し算』以上」(「毎日」7月12日付)と各紙が注目しました(拍手)。「共産党と組むと票が逃げる」という議論は、取り越し苦労だったことが疑問の余地なく証明されたのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
投票率が、合区を除く30の1人区のうち26の選挙区で前回を上回ったことも注目すべきです。これは、野党が一つにまとまったことによって、「政治は変えられる」という希望が広がったことを示すものではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
11の1人区で勝利をかちとった意義はきわめて大きい
第二に、11の1人区で勝利をかちとったことの意義はきわめて大きなものがあります。
その一つは、自民党が「重点区」とした1人区のほとんどで野党が勝利したことです。
NHKが選挙後に配信したWEB特集(7月11日)によりますと、自民党は「選択と集中」――接戦とみなした選挙区を選んで力を集中する選挙戦術をとったといいます。ところが結果はどうなったか。
安倍首相が公示後遊説に入った1人区は11あります。成績は「2勝9敗」です。大幅な“負け越し”です(拍手)。自民党が勝ったのは熊本と愛媛だけで、青森、岩手、宮城、福島、新潟、長野、山梨、三重、大分で、安倍首相が2度、3度も入ったところもありますが、敗北しています。
自民党は最終盤に向けてさらに絞り込みを進めて、青森、宮城、福島、新潟、山梨、長野、三重の7選挙区には「集中砲火」と称して応援弁士を大量に送り込み、徹底した組織戦を展開しました。しかしこの七つのすべてで自民党は敗北しました。“集中砲火”を浴びたのは自民党の側になりました(拍手)。自民党の幹部は「うまくはいかないものだ。全然、勝ちじゃない」と漏らしました。安倍首相は側近たちに「『勝ってなんかいないからな』と吐き捨てるように語った」と報じられました。
いま一つ、東北、福島、沖縄という、安倍暴走政治の矛盾がとりわけ集中的に噴き出している地域で野党が勝利をおさめました(拍手)。これは、暴走政権への痛打となる、きわめて重要な勝利であります。(「そのとおり」の声、拍手)
6県中5県で野党統一候補が勝利した東北では、安保法制・憲法問題にくわえて、TPP(環太平洋連携協定)、原発、大震災からの復興問題などで安倍政権への厳しい審判が下りました。山形新聞は「参院選『東北の乱』」と題する社説で、「東北の無言の声が読み取れる」「TPPへの反発や被災者の声をすくい上げられない与党への失望が、政権へブレーキをかける投票行動につながった」などの識者の声を紹介し、「選挙結果を政権は冷静に受け止めよ」と書きました。(拍手)
沖縄選挙区では、「オール沖縄」の伊波洋一候補が、前回の糸数慶子候補の得票29万4千票を35万6千票に伸ばし(拍手)、10万6千票の大差で自民現職閣僚を打ち破りました(大きな拍手)。その結果、ついに沖縄では衆議院・参議院あわせて選挙区選出の6人の国会議員の全員が「オール沖縄」の議員となり、自民党議員はゼロになりました(大きな拍手)。早く本土でもこうしたいものであります(笑い、「そのとおり。頼んだぞ」の声)。新基地建設反対の沖縄県民の圧倒的民意の表れであり、私は、安倍首相に対して、この民意を重く受け止めることを強く求めるものであります。(大きな拍手)
他の野党、市民運動の方々と、新しい連帯と信頼の絆が広がった
第三は、1人区はもとより、全国どこでも、他の野党、市民運動の方々と、ともに選挙戦をたたかうなかで、新しい連帯と信頼の絆が広がっていることです。
当初は、共闘にいろいろな困難があった選挙区でも、しだいに協力関係が発展し、ともにたたかうなかで、他の野党からも「この共闘なくして勝利はなかった」と実感をもって語られるようになりました。
僅差で激戦を制した大分選挙区では、投票日前日のファイナル集会で、民進党の吉良州司衆院議員・県連代表代行が、こうあいさつしたとのことです。「交差点で訴えていると、向こうから『足立信也候補をお願いします』という宣伝が聞こえてきました。誰だろうと思ったら共産党の人たちでした。本当に感動しました。感謝します」
激戦を競り勝った三重選挙区の芝博一候補は、開票後、「大義のために思いを一つにして、市民と野党の統一候補として、たたかわせていただいたからこその勝利だと、深く感謝しています」と発言しました。民放テレビでは、芝候補が事務所で選挙結果を伝える「しんぶん赤旗」を広げながら、「(自分の記事が)載っとるやん」「史上初だ」(笑い)と記事を指さしている場面が放映され、政党間の新しい信頼関係が生まれたことを示す一シーンとして話題になりました(拍手)。選挙後のわが党の報告集会に芝候補から寄せられたメッセージには次のようにのべられていました。「市民の力が政治を変える、選挙を変えることを体感しました。そして、何より私自身が変わっていくのに気づきました。皆様からの心温まるご配慮とご支援に対し、深く深く御礼申し上げます。……今回の絆を大切にともにたたかい続けましょう」(拍手)
ともにたたかった市民運動の方々との連帯と信頼の絆も広がっています。埼玉県からの報告では、「選挙後、市民団体にお礼をのべ、勝利できなかったことをわびると、相手からは『おわびしなければならないのは私たちです。私たちの活動がどうだったのか、しっかりと分析してこれからの力にしていくつもりです』との声が返ってきています。市民団体・グループは、今度の選挙を単なる共産党支援と考えておらず、自らのたたかいとして位置づけて動いていました」とありました。選挙後、党の報告集会であいさつした「ママの会@埼玉」の女性は、次のように語りました。
「去年、安保法制が強行採決されたときに、私たち『ママの会』は『今後どうしようか』というふうになりました。そのときちょうど共産党が『国民連合政府』ということを提案し、そのことで涙してしまうママがいたっていうくらい、私たちはとてもそこに希望を感じました。……あとで結果がわかったときには、(最初は)がっかりしていた結果も、やっぱりやっていることに無駄がないんだなって思いました。32の1人区では沖縄も福島もとりました。全部で11議席をとれたということを総括で見て、『ああ、これは野党共闘で間違いなかったし、市民と政党が手をとりあってやっていくということに間違いはなかったんだ』と自分自身もすごく感じました。……間違いなく私たち市民はつながりましたので、政党の方とか、いままで活動されてきた方とつながって、あきらめずにやっていきたいと思います」(拍手)
神奈川県からの報告も紹介したいと思います。浅賀由香候補を応援してきた「With あさか」の無党派のメンバーの一人は、投票日の深夜、ツイッターで、こう感想を発信しました。「俺は神奈川民青の子たちが大好きになってしまった」(笑い)、「だってさ、共闘候補が当確出るとさ、自分のことのように歓声あげて喜ぶんだよ。民青だけじゃない、党員もそう。1人区で自分らの候補どんだけ降ろされたのよ。でも恨みっこなしなんだよ、彼らは。民主主義の前進だ、って。本当の共闘だよ。エゴなんてかけらもない」、「断言できるが、今回、野党は共闘を真意から実行してたのは共産党でしょう。称賛しかないですよ」(拍手)。若い方が書いたままのツイッターを読みました(笑い)。別の無党派メンバーは、「あさか由香さんは今回負けたけど、あさかさんも、私たち市民もあきらめない。今からが次のスタートです。ここで学んだことを生かしていきます」と語りました。
大阪の選挙区候補として奮闘した渡部結候補からは次のような報告が寄せられました。「参院選で応援してくれた方々にあいさつにうかがうと、多くの方々から『ありがとう』と声をかけられるのに励まされ、感動しています。ある落語家の方は、『市民の代表としてたたかってくれてありがとう』と言ってくださいました。平松邦夫元大阪市長は、『若い人たちが渡部結さんを応援してくれたことに希望をみた』と言ってくださいました。『関西市民連合』有志でいっしょに宣伝してくれた人たちからも『初めて誰かを応援する選挙ができた。ありがとう』と言われました。こんなにも逆に『ありがとう』と言っていただける選挙をたたかったのかということは、感慨深い。自らの選挙としてたたかったみなさんとの共闘、共同の広がりを実感しています」
各地からの報告の一端を紹介しましたが、こうした連帯と信頼の絆は、その一つ一つが宝物ではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
7月18日に放送されたNHKの「視点・論点」では、「共産党を含めた野党共闘が一定の効果を発揮した」、「選挙の現場からも、共産党の支持者が民進党やその他の市民運動の関係者との交流を広げるという新しい機会となっている、とそういう指摘もあります」(学習院大学教授・野中尚人氏)との注目が寄せられました。
私たちは、参院選でつくられた他の野党や市民運動の方々との連帯と信頼の絆を大切にし、大きく育てていくために、互いに相手への尊敬=リスペクトの気持ちをもって、誠実に力をつくしていく決意であります。(拍手)
党綱領の統一戦線の方針が、国政を動かす新しい時代が始まっている
みなさん。今回の野党と市民の共闘は、日本共産党の歴史でも、日本の戦後政治史でも、文字通り初めての歴史的な第一歩であります。(拍手)
日本共産党は、1961年に綱領路線を確定して以降、一貫して統一戦線によって政治を変えることを、大方針にすえてきました。
1960年代後半から70年代にかけて、日本共産党が国政選挙で躍進するもとで、統一戦線が発展しました。ただ、この時期の統一戦線は、主に地方政治――革新自治体に限られており、国政での統一戦線の合意は当時の社会党との間で最後まで交わされず、国政での選挙協力もごく限定的なものにとどまりました。
ところが、今回の参議院選挙ではどうでしょう。安保法制=戦争法案反対をつうじて広がった新しい市民運動に背中を押され、わが党が昨年9月19日に発表した「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」の「提案」が契機となって、全国32の1人区のすべてで野党統一候補が実現し、11選挙区で勝利をかちとるという、全国規模での統一戦線、選挙協力が初めて現実のものとなり、最初の大きな成果を結んだではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
この統一戦線は、まだ始まったばかりで、さまざまな未熟さを抱えておりますが、大いなる未来をもっているという希望を抱いてもよいのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
日本共産党綱領の統一戦線の方針が、国政を動かす、戦後かつてない新しい時代が始まっている――ここに確信をもって、開始された野党と市民の共闘をさらに前進させるために、あらゆる知恵と力をそそごうではありませんか。(「そうだ」「よし」の声、大きな拍手)
今後に生かすべき教訓(2)――野党共闘攻撃、共産党攻撃とのたたかい
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選挙戦では、安倍首相を先頭に、政府・与党あげて、また一部メディアも動員して、激しい野党共闘攻撃、日本共産党攻撃が行われました。
異常な共産党攻撃――切羽詰まった危機感に突き動かされたもの
今回の共産党攻撃のこれまでにない特徴は、安倍首相が、全国遊説でも、政見放送でも、討論会などでも、攻撃の先頭に立ったということです。これまでも選挙のたびごとに、さまざまな形で反共攻撃が行われてきました。出所不明の大量の反共謀略ビラが配布されたこともありました。しかし、一国の内閣総理大臣が、日本共産党を名指しして、連日攻撃する選挙を展開するというのは、かつてない異常なことでした。
それは、野党共闘に本格的に踏み込み、政権打倒に全力をあげるわが党に対する、支配勢力の強い危機感、恐怖と憎悪を示すものでした。それはこれまでの選挙にはなかった新しい特徴でした。
わが党が「自共対決」を掲げてたたかった2013年の参院選、14年の総選挙のさいには、党首討論で論戦をかわした後などに、安倍首相自身が私に「自共対決ですね」と語ってくることもありました。まだこの段階では、自民党にとって日本共産党は、政治的・政策的に真正面から対決する相手ではありますが、現実に政権を覆す脅威とはなっていない――これが相手の認識であったと思います。ですから、安倍首相の態度にも、対決はしているけれど、ある余裕がありました。(笑い)
しかし、いまは、相手にもう余裕がありません。今回の共産党攻撃からは、「これを放置しておいたら政権を覆す深刻な現実的脅威となる」という切迫した危機感を、相手からひしひしと感じました。それは、「何としても野党共闘の芽を双葉のうちに摘まなければならない、これが『成功した』という結果を決して出させてはならない」、「そのためには野党共闘を推進する共産党の足をどうしても止める必要がある」という切羽詰まった危機感に突き動かされたものでした。
相手をここまで追い込んだということ自体、野党共闘という方針が正しいということを証明するものではないでしょうか。(「そうだ」「そのとおり」の声、大きな拍手)
わが党の断固たる反撃――憲法と自衛隊をめぐる論戦について
わが党は、この攻撃に対して、断固たる反撃を行いました。
「政策の違うものが選挙協力を行うことは野合だ」という攻撃に対して、わが党は、野党共闘が「立憲主義を取り戻す」という国民的大義のもとに結束していること、それはあれこれの政策の違いがあったとしても、それを横に置いてでも最優先すべき仕事であることを明らかにし、「あの自公に『野合』といわれたくない」と痛烈に反撃をいたしました。(大きな拍手)
あれこれの攻撃が通用しなくなるもとで、政府・与党が最後に攻撃を集中したのは、自衛隊問題を利用した共産党攻撃でした。「共産党の綱領には、熊本地震でがんばった自衛隊を憲法違反だ、解散すると書いてある。こんな失礼なことがあるか」、「共産党は、自衛隊は憲法違反だけれど、解散するまでは仕事をしてもらうという。こんな失礼な話があるか」――安倍首相はこうした攻撃を繰り返しました。攻撃といいましても、「失礼だ」と繰り返すだけで、まともな論理はないんですが(笑い)、ともかくも、彼らは、こうした攻撃を徹底してやったのです。
これに対して、わが党は、党綱領、大会決定にもとづいて、断固たる反論をくわえました。私は、次の二つの点をあらためて強調しておきたいと思います。
第一に、わが党は、憲法9条に照らせば、自衛隊が憲法違反であることは明瞭だと考えております。それでは憲法と自衛隊の矛盾をどうやって解決するか。わが党は、改憲派がとなえるように、自衛隊の現実にあわせて9条を取り払う方向での「解決」ではなく、世界史的にも先駆的意義をもつ憲法9条という理想に向かって自衛隊の現実を改革していくことこそ、政治の責任であると考えております。(「そうだ」の声、拍手)
ただ、これはすぐにはできません。わが党が参画した本格政権ができて、アメリカいいなりの軍事体制から日本が抜け出し、その外交政策によって、すべての国と平和・友好の関係をつくり、日本を取り巻く平和的環境が成熟し、国民の圧倒的多数が、「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したところで初めて、憲法9条の完全実施にむけての本格的な措置にとりくむ。これが日本共産党の立場です。
そうしますと、かなりの期間、自衛隊と共存する期間が続くことになりますが、こういう期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守ることは当然であります(「そうだ」の声、拍手)。安倍首相などは「それは矛盾している」といいますが、憲法と矛盾する組織をつくったのは私たちではないんです。自民党政治じゃありませんか(拍手)。自民党政治がつくった矛盾を引き受けて、憲法9条の完全実施に向けて、国民の合意で一歩一歩進み、矛盾を解決する。これが日本共産党の立場です。みなさん、この立場こそ、憲法を守ることと、国民の命を守ることの、両方を真剣に追求する最も責任ある立場ではないでしょうか。(「そうだ」「そのとおり」の声、大きな拍手)
第二に、そのうえで強調したいのは、いま問われているのは、自衛隊が違憲か合憲かではないということです。戦後60年余の「9条のもとでは集団的自衛権は行使できない」という政府の一貫した憲法解釈を変えて、自衛隊を海外の戦争に派兵することを許していいのかどうか、これが問われている中心点ではありませんか(「そのとおり」の声、拍手)。「専守防衛」の志をもって入隊した自衛隊員、熊本の震災救援・復旧のために汗を流した自衛隊員を、海外の「殺し、殺される」戦場に送っていいのかどうか、これが問われている中心点ではないでしょうか。(「そのとおり」の声、拍手)
「こんなことは許せない」という一点で、野党と市民は、自衛隊の違憲、合憲の立場の違いを超えて結束しています。そして、わが党は野党共闘に自衛隊についての独自の立場と政策を持ち込まないという立場を最初からとっております。安保法制=戦争法を強行し、さらに憲法9条改定によって、「海外で戦争する国」づくりの道を暴走し、自衛隊員の命を軽んじているのは、安倍首相の側ではないかと、私は言いたいと思います。(「そうだ」の声、大きな拍手)
自衛隊問題を利用しての共産党攻撃は、「海外で戦争する国」づくりを許していいのかという真の争点をそらし、覆い隠すことを狙ったものでした。それはまた、大震災などでの自衛隊の活動に接し、国民の多数が自衛隊に肯定的感情をもっていることを利用して、「自衛隊は憲法違反」とするわが党の立場に、「失礼だ」といった「問答無用」式の攻撃をくわえ、野党共闘の分断をはかろうというものでした。
こうした攻撃に対して、わが党が行った反撃は、日本国憲法の本旨にかなったものであるとともに、自衛隊に対する国民感情にも即したものであり、全体として冷静で的確なものであったと確信をもって言いたいと思います。(拍手)
軍事費をめぐる誤った発言――中央の指導部の教訓としたい
この問題にかかわって、選挙戦のさなかのNHK討論で、藤野前政策委員会責任者が、軍事費について、「人を殺すための予算」と発言し、多くの方々から厳しい批判が寄せられるという問題が起こりました。
この発言は、藤野さん自身が、「わが党の方針と異なる誤った発言であり、結果として自衛隊のみなさんを傷つけるものとなってしまいました」として撤回し、国民に対するおわびを表明し、責任をとって政策委員会責任者を辞したいという申し出を行いました。党としても、おわびを表明し、藤野さんの申し出を受けて、政策委員会責任者の任を解くという措置をとりました。
この発言は、軍事費のすべてをただちに否定するという趣旨になってしまい、党の方針とまったく異なる誤った発言となってしまいました。本人も党としてもけじめある対応を行いましたが、安倍首相を先頭に、与党勢力は、選挙戦の最後まで、この発言を最大限に利用して日本共産党攻撃を行いました。
この問題は、新しい国会議員、若い党幹部が、政治的にも理論的にも成長する――国会論戦でもテレビ討論でも“他流試合”に強い幹部に成長するうえでの、私たち中央の指導部の援助の問題として、今後の教訓としたいと考えております。(拍手)
相手の思い通りにはさせなかった――正面からたたかってかちとった前進
安倍首相を先頭に、政府・与党あげて、一部メディアも動員して行われた野党共闘攻撃、日本共産党攻撃は、一定の逆風として作用しました。
しかし重要なことは、私たちが、市民とともに、攻撃に対して正面から断固として反撃したことによって、相手の思い通りの結果にはさせなかったということであります。(「そうだ」の声、拍手)
あれだけの「野党共闘=野合」攻撃が行われたにもかかわらず、ほとんどの1人区で「共闘効果」が発揮され、11の選挙区では勝利しました。河北新報は、参院選の東北の得票を分析した「野党共闘 相乗効果あり」「無党派・保守層に浸透」と題する記事で、つぎのように書きました。「共闘の分断を狙い自民陣営が展開した反共キャンペーンについて、ベテランの仙台市議は『有権者は宮城の未来を聞きたかったはずだ。応援弁士がエッセンス程度に触れればいいのに、反共一辺倒では逆効果だった』とぼやいた」と報じています。「エッセンス程度に触れればいい」と(笑い)。(共産党攻撃を)よっぽどやったのでしょう。(笑い)
日本共産党自身についても、さきほどご報告したように、比例代表選挙で、3年前の515万票から601万票に伸ばし、改選議席を3から6へと倍増させました。本格的な野党共闘に踏み込んだことによって、わが党は、政府・与党から激しい攻撃を受けました。同時に、わが党が野党共闘の前進に誠実にとりくんだことが、国民のわが党への見方を変え、新しい信頼と支持を広げたことは疑いないのではないでしょうか(拍手)。その結果、わが党自身の結果としても重要な前進を記録することができたのであります。
政府・与党が攻撃に込めた狙いは、野党共闘を「失敗」に追い込み、この動きを推進している日本共産党に打撃を与えて「後退」させ、野党と市民の共闘の芽を双葉のうちに摘み取ることにありました。“もう野党共闘はこりごりだ”というような結果を出させることにあったのです。しかし結果は、相手の思い通りにはなりませんでした(「そうだ」の声、拍手)。今回の選挙での野党共闘と日本共産党の前進は、かつてない激しい野党共闘攻撃、共産党攻撃と正面からたたかって勝ち取ったものであるところに、とりわけ大きな意義があります。みなさん。このことを、ともにたたかったすべての人々の共通の確信にしようではありませんか。(「よし」の声、大きな拍手)
安倍暴走政治を止め、政治の転換を――「だまし討ち」の政治は長続きしない
真の争点を隠し続けて得た議席――政権党の堕落とともに行き詰まりが
さて、安倍暴走政治ストップ、政治の転換をめざす今後のたたかいについてお話ししたいと思います。
参議院選挙で、安倍・自公政権は多数の議席を得ました。しかし、この議席は、自分たちのやろうとしていることを国民に正直に語って得た議席でしょうか。決してそうはいえません。反対に、国政の大事な問題について、ことごとくやろうとしていることを国民に説明しない、隠し続ける、こうした不誠実な態度によって得た議席ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
参議院選挙の全体をつうじて、安倍首相がとった姿勢は、そうした「隠す選挙」にするということでした。公示後、テレビの党首討論はたった1回だけです。投票日前の2週間、党首討論がまったくない状況となりました。4野党は6月に2回にわたって、その異常さを自民党に突き付け、党首討論を申し入れましたが、自民党、安倍首相は、かたくなに拒否する態度をとりつづけました。
さらに選挙そのものを「隠してしまう」ということがやられました。選挙のさなかだというのに、テレビで選挙が報道されない。作家の中島京子さんは「毎日」(7月17日付)に寄せたエッセーで次のようにのべました。
「参院選後の各テレビ局の特番を見て、ほんとうに腹が立った。選挙がすべて終わったとたんに、どんな候補が出ていて、どんなふうに選挙戦を戦ったかを見せるって、どういうこと? みんな思ったはずだ。『そういうことは、選挙中にやって』。それがメディアの仕事であり、責任だろう。公示日から投票日まで、テレビは参院選をほとんど報道しなかった」
放送関係の調査会社が発表した「投票日前2週間のテレビの選挙報道量」によりますと、今年の参院選報道は3年前の前回に比べて約3割も報道量が減ったとのことです。総務大臣の「停波」発言などで各局の政治・選挙報道の萎縮傾向がさらにすすんだことは、民主主義社会の土台を危うくするものとして極めて重大だといわなければなりません。
選挙戦全体をつうじて、真の争点を隠し続け、「隠す選挙」にしてしまう。ここには、政権党としての政治的堕落とともに、深刻な行き詰まりが表れているということを、私は、厳しく指摘したいと思うのであります。(拍手)
選挙では「憲法隠し」、選挙が終われば改憲に着手――「だまし討ち」は許せない
選挙が終わったとたんに、安倍首相の口から本音――本当にやりたいことがつぎつぎに語られております。それは、憲法、経済、沖縄など、どの分野でも、選挙中は国民に語らなかったこと、隠し続けたことばかりであります。
たとえば憲法改定の問題です。
選挙の結果、改憲勢力が議席の3分の2を占めました。しかし、国民は改憲への「白紙委任」を与えたわけでは決してありません。安倍首相は「選挙で(憲法を)争点とすることは必ずしも必要ない」とのべ、遊説で憲法を一切語りませんでした。FNNの調査では、選挙中の安倍首相の街頭演説で、「経済・アベノミクス」という言葉が321回使われたのに対して、「憲法改正」は0回だったといいます(6月22日〜7月3日)。首相は、徹底した「憲法隠し」で選挙をやりすごしたのであります。
ところが選挙が終わるやいなや態度を豹変(ひょうへん)させました。安倍首相は、投票日の翌日、7月11日の記者会見で、「いかにわが党の案をベースにしながら3分の2を構築していくか。これがまさに政治の技術」と公言しました。選挙戦は「憲法隠し」でやりすごす。選挙が終わると、「国民の信を得た」とばかりになし崩し的に改憲に着手する。このような「だまし討ち」の暴挙は絶対に認めるわけにはいきません。(「そうだ」の声、大きな拍手)
安倍政権の改憲策動は、いわゆる「お試し改憲」にとどまりません。安倍首相自身が、「わが党の案をベースにして」と明言したように、日本国憲法を、憲法の名に値しない「自民党改憲案」に塗り替えてしまうところにその狙いがあります。なかでも憲法9条2項を削除し、「国防軍」創設を明記し、海外での武力行使を無条件、無制限に可能にすることに安倍改憲の本丸があることは、選挙戦の論戦でも浮き彫りになったことであります。「安倍政権のもとでの憲法改悪を許さない」――これは4野党が共通して掲げた公約であります。この一点でのたたかいを急いで広げることを心からよびかけたいと思います。(「そうだ」の声、大きな拍手)
同時に、もう一つ、訴えたいことがあります。安倍政権は、憲法改定に野党を巻き込むために、「憲法審査会を動かして、どこの条文をどう変えるか、ここから議論しよう」という策略をとっております。「改憲先にありき」――これは本当に逆立ちした議論であります。上智大学教授の中野晃一さんは、こう批判しています。「『体のここが悪いから手術をしましょう』というならわかる。どこも悪くないのに、『どこか手術をしましょう。どこにしましょうか(笑い)。二重まぶたにでもしましょうか』などという話にはならないでしょう」(笑い)。「改憲先にありき」というのは、「手術先にありき」と同じぐらいにばかげた議論であり、こんな議論を通用させてはならないということを、私は、言いたいと思います。(「そうだ」の声、拍手)
野党が、こうした危険な土俵に引きずり込まれないことが大切であります。そのために私は、日本国憲法がもつ豊かで深い値打ちを再確認することが重要だと思います。今年は憲法が公布されて70年です。改憲派は、70年も憲法を変えなかったことは異常だといいます。とんでもないですよ。70年も変える必要がないほど立派な憲法だったということの証明じゃありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
憲法9条という世界で最も進んだ恒久平和主義の条項をもち、30条にわたるきわめて豊かな先駆的な人権規定が盛り込まれているなど、日本国憲法が、世界で最も先駆的で豊かな内容をもっていることを、私は訴えたいと思います。変えるべきは憲法じゃない。憲法をないがしろにした政治こそ変えるべきではないでしょうか。(拍手)
安倍首相は、「野党には対案がない」といいます。とんでもありません。日本共産党が綱領で明記しているように、「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」ことこそが抜本的対案であるということを、私は強く訴えたいと思います。(拍手)
安保法制=戦争法の発動を許さず、廃止をめざすたたかいを
野党共闘の原点である安保法制=戦争法をめぐって、重大な事態が進展しております。7月に入り、自衛隊が派兵されている南スーダンの首都・ジュバで、大統領派と副大統領派の激しい戦闘が勃発し、300人以上の死者が出る事態となり、陸上自衛隊の宿営地内で複数の弾痕が確認されたことが明らかにされました。
私は、2月の衆院予算委員会の質問で、国連の資料を使って、南スーダンは内戦状態になっていることを具体的に追及しました。政府は、「武力紛争が発生していると考えていない」「首都のジュバは平穏です」、こういいましたけれども、現地は文字通りの内戦状態におちいっているじゃありませんか。
わが党がかねてから警告してきたように、南スーダンにおいて、安保法制=戦争法にもとづいて自衛隊の任務が拡大され、「安全確保業務」や「駆けつけ警護」が行われ、任務遂行のための武器使用の拡大が許されれば、南スーダンが「殺し、殺される」初めてのケースになるきわめて深刻で現実的な危険が切迫しています。
みなさん。憲法違反の安保法制=戦争法の発動を許さず、その廃止を求めるたたかいをさらに発展させようではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
大型開発への「バラマキ」、社会保障大改悪が急浮上――暮らしを守るたたかいを
暮らしと経済の問題はどうでしょうか。
参議院選挙で、安倍首相は「アベノミクス」について、都合のよい数字を並べたてて自慢話をし、都合の悪い数字は隠し続けました。
その最たるものは、年金積立金の巨額損失の問題です。7月29日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度決算で、5兆3千億円の巨額損失が発生していることが明らかになりました。選挙中は公式発表せず、選挙が終わってから明らかにする。これはあまりに姑息(こそく)なやり方ではないですか。国民の大事な財産である年金積立金を流し込んで株をつり上げ、虚構の「成長」を演出する邪道の政策の中止を、私は強く求めたいと思います。(拍手)
参議院選挙で、安倍首相は、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と言いました。しかし、一体何をどう「ふかす」のか、具体的な中身を何も語りませんでした。ここでも「隠す選挙」が行われましたが、選挙直後から、二つの大問題が明らかになってきました。
一つは、「事業規模で28兆円を上回る経済対策」なるものが、急浮上したことです。経済対策=景気対策というのは、だいたいが選挙前に選挙目当てで打ち出して、選挙の「目玉」にするのが通例であります。今回のように選挙前は本心を隠しておいて、選挙直後に打ち出すというのは前例のないことであります。なぜ選挙前に打ち出さなかったのか。「アベノミクスがうまくいっている」という自分の宣伝がウソであることを自分自身で暴露する結果になってしまうからです。
安倍政権のこれまでの「経済対策」の最大のものは、2013年1月に出した20・2兆円の対策でした。それをはるかに上回る「経済対策」を打ち出すということは、安倍首相が唱えている「アベノミクスで経済の好循環が始まりだした」なるものがウソ、偽りであって、実態は深刻な「アベノミクス不況」であることを自ら証明するものではありませんか。(拍手)
もっと言えば、自分では「アベノミクス」がうまくいっている、うまくいっていると、あれだけ宣伝しながら、当の安倍首相本人がそれを信じていなかった、うまくいっていないということをわかっていたということを、証明するものではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
しかも「経済対策」の中身は、リニア新幹線への巨額の公的資金の投入や、大型クルーズ船のための港の建設など、借金頼みの大型公共事業の「バラマキ」という、破たんが証明された対策が中心であります。リニア新幹線は、それ自体が、巨額の建設費、採算見通しのなさ、環境破壊など、さまざまな問題点をもっています。しかも、もともとJR東海が民間資金で行うとしていた事業に公的資金が投入されても工事量が増えることはなく、景気対策とは無関係であり、公的資金投入による国民負担のリスクだけが残されることになります。破たんした大型公共事業への「バラマキ」は中止し、国民の暮らしを応援する景気対策を行うことを、私は強く求めたいと思います。(拍手)
いま一つは、社会保障の大改悪です。安倍首相は、選挙中は、「保育の受け皿」をつくるとか「介護離職ゼロ」などを言い続け、あたかも社会保障に力を入れるようなポーズをとり、社会保障削減については一切触れませんでした。
ところが、投票が終わった7月10日の夜、安倍首相は、「社会保障の伸びを抑えていくこともたいへん大切だ」と強調しました。そうしましたら、「待ってました」とばかりに、改悪の具体案が次々と政府の審議会に出され、社会保障の大改悪が進められようとしております。
高齢者医療の窓口負担について、75歳以上についても2割負担を段階的に導入する計画がもちあがりました。第1次安倍政権が廃止し、強い批判を受けて民主党政権時代に復活した生活保護の母子加算を、再び切り捨てようという血も涙もない計画が浮上しています。介護保険では、「要支援1・2」と認定された人の保険給付はずしに続いて、「要介護1・2」と認定された人の訪問介護や通所介護などを保険給付からはずす法案を来年の通常国会に提出する計画がもちあがっています。「要支援1・2」と「要介護1・2」をあわせれば、「要支援」「要介護」と認定された人全体の65%を超えます。高い保険料を強制的に徴収しながら、65%以上の人から保険給付をとりあげるというのは、文字通りの「国家的詐欺」の仕組みへの大変質というほかありません。(大きな拍手)
わが党は、参院選で、「アベノミクス」の破たんを痛烈に批判しつつ、「格差をただし、経済に民主主義を確立する三つのチェンジ」を訴えてたたかいました。日本の農林水産業、経済主権を破壊するTPP協定ストップを掲げて奮闘しました。この方向こそが、暮らしを立て直し、日本経済を救う唯一の道であります。切実な暮らしの要求を掲げて、運動をおおいにおこそうではありませんか。わが党は、国民の運動と力をあわせて、公約実現のために全力をあげる決意を申し上げるものです。(拍手)
沖縄への強権、独裁、無法を許すな――全国の連帯をよびかける
沖縄の米軍基地問題についてものべないわけにはいきません。
参議院選挙に向けて安倍首相は、「辺野古が唯一の選択肢」という立場にしがみつきながらも、「県民に寄り添う」とか「話し合っていく」というポーズを取り続けました。6月23日の沖縄全戦没者追悼式でも、首相は、「私たちは、今後とも、国を挙げて、基地負担の軽減に、一つ一つ、取り組んでまいります」とのべました。ところが、参議院選挙が終わって、安倍政権がやっていることは何ですか。沖縄に対する異常な強権がむき出しの形でふるわれています。
三つの重大な動きが、続けざまにおこっています。
第一は、ヘリコプター着陸帯――ヘリパッド建設の強行です。参院選から一夜あけた7月11日の早朝、政府は、東村高江のヘリパッド建設に向けて資材を搬入しました。そして7月22日には、機動隊を大量投入して、生活道路を封鎖し、反対する住民を暴力的に強制排除し、強引にヘリパッド建設を開始しました。それは地元紙が、「米軍占領下の『銃剣とブルドーザー』による軍用地強制接収をも想起させる」と糾弾するほど、無法な暴圧そのものでした。
第二は、沖縄県との話し合いを拒否した一方的提訴です。福岡高裁那覇支部の「和解勧告文」も、総務省の国地方係争処理委員会も、国と県との「真摯(しんし)な話し合い」を求めています。にもかかわらず、7月22日、政府は、話し合いによる解決を放棄し、県を一方的に提訴するという暴挙に打って出ました。
第三は、法律を無視した辺野古工事の再開です。3月の国と県の「和解」では、「埋め立て工事を直ちに中止する」とされていたのに、政府は、陸上部分の工事は「中止対象にならない」との一方的解釈を持ち出して、「和解」をほごにして、辺野古工事を再開しようとしています。とんでもないことです。陸上も海上も一つながりの基地じゃありませんか。陸上部分の工事が埋め立て工事と関係がないわけがないじゃありませんか。工事再開は、法治国家を否定する許しがたい暴挙というほかありません。(「そうだ」の声。拍手)
こうして、いま沖縄では、安倍政権による強権、独裁、無法が横行しています。しかし、これは彼らが県民のたたかいに追い詰められた結果であります。元米海兵隊員による女性暴行殺害事件に対する島ぐるみの深い怒りが広がりました。参院選での「オール沖縄」の伊波洋一さんの圧勝というこのうえなく明確な審判が下りました。これらによって安倍政権が追い詰められるなかでの悪あがきではないでしょうか。
みなさん。これは日本の民主主義がかかった大問題です。強権、独裁、無法を許してはなりません。「基地のない平和で豊かな沖縄」を求める沖縄県民のたたかいに、全国が連帯のたたかいを起こすことを、心からよびかけるものです。(大きな拍手)
安倍暴走ストップ――各分野のたたかいを大合流させ、政権打倒を
見てきたように、憲法でも、経済でも、沖縄でも、選挙の間は国民に語らない。大切なことはみんな隠す。選挙が終われば暴走を始める。いま安倍政権がやっていることは、ことごとく「だまし討ち」の政治ではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。このような「だまし討ち」の政治は決して長続きしないし、長続きさせてはなりません。
憲法、経済、TPP、沖縄、原発――あらゆる分野で安倍政権の暴走を止め、政治のチェンジをめざすたたかいに、新たな決意でのぞもうではありませんか。各分野のたたかいを発展させ、大合流させ、安倍政権を打ち倒そうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
野党共闘の課題と展望――四つの点について
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そのためには、次の国政選挙――総選挙で必ず勝たなければなりません。
安倍政権の暴走ストップ、政治の転換をめざすたたかいと一体に、私たちは、参院選で大きな成果をあげた野党と市民の共闘をさらに発展させるために、知恵と力をつくす決意です。今後の課題と展望について、四つの点を話したいと思います。
それぞれの地域で、共闘の成果と教訓を語り合い、さらに発展させよう
第一は、それぞれの地域で、野党と市民の共闘の成果と教訓について語り合い、さらに発展させるための努力をしていくことです。
参院選での野党と市民の共闘は、全国的にとりくまれましたが、その内容は地域によってさまざまです。1人区と複数区では、かなり共闘の様相が違います。1人区でも県によって共闘の内容はさまざまで、勝利したところも及ばなかったところもあります。
しかし、全国どこでも、共闘に真剣にとりくんだ人々の多くは、「共闘してよかった」「今後も発展させたい」という思いを持っておられると思います。すでに各地でとりくまれていますが、共闘に参加した政党、市民、そして候補者が、報告会、懇談会など、可能な形で、率直な対話と交流を行い、共闘の成果と教訓、今後の課題について話し合い、共闘をさらに発展させていくことを、私は心からよびかけたいと思うのであります。(拍手)
共通政策の実現に向けて、中央段階でも、地域でも、共同のたたかいを
第二は、野党共闘が掲げた共通政策の実現に向けて、中央段階でも、それぞれの地域でも、共同のたたかいを発展させることです。
野党4党は、党首会談で、「安保法制廃止、立憲主義回復」、「アベノミクスによる国民生活の破壊、格差と貧困を是正する」、「TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない」、「安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する」という4点で、安倍政権と対決する政治的内容を確認し、これを共通政策の柱にすえて選挙戦をたたかいぬきました。また、4野党で共同提案した15の法案の内容、「市民連合」との19項目におよぶ政策協定の内容を、共通政策として選挙戦をたたかいました。
これらの共通政策の実現のために、国会内外での共同のたたかいを大いに発展させようではありませんか。(拍手)
当面の安倍暴走政治とのたたかいでは、安保法制と憲法改定、TPP協定、沖縄への強権政治、「残業代ゼロ法案」などが重大な争点となります。まずは、暴走ストップのたたかいに、協力してとりくもうではありませんか。同時に、国民の切実な暮らしや民主主義の願いにこたえて、4野党共同での議員立法の提起と、それを実現するたたかいをさらに発展させたいと思います。
さらに、全国それぞれの地域での野党と市民の共同のたたかいが重要であります。32の1人区では、野党統一候補が、それぞれの地域の実情にそくした公約を掲げてたたかいました。それを力をあわせて実現するための運動にとりくんでいこうではありませんか。とくに勝利した11人の野党統一の議員については、議員と地元との連携を密にして、公約実現、地元要求実現のために、「4野党プラス市民」で力をあわせて、系統的に共同のたたかいを発展させたいと思います。
たたかいを一緒にやっていくなかで、野党共闘の共通政策をより豊かなものとし、国民からみて魅力あるものにしていく努力を、強めたいと考えております。(拍手)
きたるべき総選挙で野党共闘をさらに発展させよう
第三に、こうした野党と市民の共同のたたかいを前進させながら、きたるべき総選挙で野党共闘をさらに発展させる、野党共闘をさらにパワーアップさせるために全力をつくす決意を申し上げたいと思います。(拍手)
選挙後の世論調査で、「次の衆院選でも野党4党は共闘すべきだと思いますか」の問いに対して、「思う」が50・8%、「思わない」が35・6%という結果もあります。これは産経新聞(7月20日付)の調査ですから、間違いはないでしょう(笑い)。野党がバラバラではなく、結束して、別の選択肢を示してほしいという思いは、国民のなかに広がっていると、私は思います。
総選挙でも「できる限りの協力」を行うことは、4党の党首会談で繰り返し確認されている、公党間の合意事項、公党間の約束事項であります。わが党は、この合意を誠実に順守し、総選挙で野党共闘をさらに発展させ、必ず成功させるために、がんばりぬく決意を重ねて申し上げたいと思います。(拍手)
総選挙で野党共闘が実現するならば、多くの小選挙区で与野党が逆転し、現在与党が握っている憲法改定に必要な国会の基盤を崩す大激変をつくることは十分可能であるということを強調したいと思います。(拍手)
みなさん。野党共闘は、第一歩の参議院選挙では大きな成果をあげました。第二歩が総選挙です。きたるべき総選挙にむけて、野党共闘を強め、安倍政権を打倒し、立憲主義・民主主義・平和主義が貫かれる新しい政治を実現するたたかいに、新たな決意でのぞもうではありませんか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
日本共産党綱領を語り、日本の未来を語り合う運動に大いにとりくもう
第四は、わが党自身の努力の問題ですが、日本共産党綱領を日常的に語り広げる活動を、思い切って強めていくようにしたいと思います。
今度の参院選ほど、日本共産党の綱領そのものが熱い焦点になった選挙はありません。日本共産党の綱領、まさに“旬”であります。
政府・与党は、自衛隊問題をはじめ、綱領の片言隻句を使い、それをねじ曲げて、共産党攻撃を行いました。他方、香川県の日本共産党と民進党代表が交わした「基本的事項の確認書」――党綱領の基本点を確認した合意文書を取り結ぶ、そして日本共産党公認の田辺健一候補を野党統一候補として推す。このように綱領の内容が野党共闘を進めるうえで、生きた力を発揮するという状況も生まれました。
党綱領が、憲法と自衛隊の矛盾の解決について示している道筋は、さきほどのべた通りです。ただ、この方針は、わが党としても、2000年の第22回党大会で、全党討論をへて、さまざまな異論や疑問も解決しながら、確立した方針であり、それを広く国民のみなさんに理解していただくためには、綱領を語る平素からの努力が必要だと思います。テレビ討論の1分くらいの発言で説明するのは少々たいへんな面もあります。平素からの努力がどうしても必要であります。
わが党の野党共闘に対する態度を深く理解していただくうえでも、党綱領を語ることは欠かせません。たとえば党綱領は、日本の政治の改革は統一戦線によって実現されるとのべたうえで、「当面のさしせまった任務にもとづく共同と団結は、世界観や歴史観、宗教的信条の違いをこえて、推進されなければならない」と明記しています。「野党共闘=野合」という攻撃は、当面の国民的大義で団結し、不一致点は横に置くという、党綱領に明記した統一戦線の大原則への無知、無理解からくるものにほかなりません。
さらに党綱領は、社会は、階段をのぼるように段階的に発展する、その一段一段は、国民多数の合意ですすむ――段階的発展と多数者革命という立場に立っています。多数の力で一歩一歩社会を変えながら、国民自身が、社会というのは国民多数の意思で変えられるという確信をもち、自信を強めて、さらに先へと一歩一歩進んでいく。これが社会発展の道であります。政府・与党による自衛隊問題を利用した共産党攻撃は、国民多数の合意で社会を一歩一歩変えていくという、党綱領の立場への無知、無理解に立ったものでした。綱領を引用して、他の党を攻撃する以上は、もう少し綱領を勉強してからにしていただきたいと、私は言いたいと思います。(拍手)
日本共産党の第26回党大会では、「『綱領を語り、日本の前途を語り合う集い』を大中小の規模で、日常不断に、日本列島のすみずみで開くことを、党活動全体の軸」にすえてとりくむことを決めています。日本共産党綱領が現実政治の熱い焦点になっているいま、ここにあらためて光をあてて、綱領を語り、日本の未来を語る運動に大いにとりくもうではありませんか。そのことを心からよびかけたいと思います。(拍手)
「戦後かつてない」歴史的大激動の情勢――日本共産党への入党を心から訴えます
みなさん。いま日本は、「戦後かつてない」歴史的な大激動のさなかにあります。
一方で、戦後最悪の安倍政権によって、憲法9条を壊し、戦後の保守政治がまがりなりにも守ってきた「海外での戦争をしない」という大原則を投げ捨てる、「戦後かつてない」危険な情勢が進展しています。
他方で、この動きに反対して、「戦後かつてない」新しい市民運動――国民一人ひとりが、主権者として、自分の頭で考え、自分の言葉で語り、連帯して立ち上がる、新しい市民運動がわき起こり、豊かに発展しています。そして、この運動に背中を押されて、野党と市民の共闘が発展し、戦後の日本政治史で初めて全国的規模での選挙協力が実現し、その最初の挑戦の舞台となった参議院選挙で大きな成果をおさめるという、「戦後かつてない」希望ある出来事も起こりました。
私たちはいま、その一日一日が、新しい歴史をつくる、かつて体験したことのない、未踏の領域に足を踏み入れつつあります。そこには新しい困難や試練もあるでしょう。模索や試行錯誤もあるでしょう。しかしそこには歴史をつくる開拓者としてのロマンがあり、わくわくするような喜びがあるのではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)
そして、この歴史的な大激動のなかで、日本共産党が果たしている役割は、かけがえのないものとなっています。
国民の共同、野党の共同を何よりも大切にし、共同の力――統一戦線の力で政治を変える党が日本共産党であります。
異常な「アメリカいいなり」と「財界中心」を特徴とする自民党政治を根本から変える綱領を持つ党が日本共産党であります。(拍手)
全国で約30万人の党員、約2万の党支部、2800人を超える地方議員を持ち、「しんぶん赤旗」を手に、草の根で国民と結びつき、草の根の力を集めて政治を変える、ここに私たち日本共産党の最大の誇りがあるということも訴えたいと思います。(拍手)
そして、党をつくって94年、一筋に反戦平和と国民主権の旗を掲げて不屈にたたかい続けてきた党、相手がどんな大国であれその指図は受けず、日本の進路は自分たちの頭で決める自主独立を貫いてきた党が日本共産党であります。(拍手)
この党を強く大きくすることに、日本の未来はかかっています。(拍手)
私は、心から訴えたいと思います。今日の私の話に共感していただいた方、「共産党もいいこと言うな」と思っていただいた方は、今日ここで出会ったのも何かのご縁ですから(笑い)、これを機会に、日本共産党に入党していただき(拍手)、「戦後かつてない」歴史的な大激動の時代を、歴史をつくる主人公として、ともに歩もうではありませんか(拍手)。新しい歴史をご一緒につくろうではありませんか。(大きな拍手)
そのことを最後に訴えて、記念講演を終わります。(大きな拍手)
日本共産党創立94周年万歳!(「万歳」の声)。ありがとうございました。(歓声、長く続く大きな拍手)