2016年7月31日(日)
相模原事件口実の措置入院見直し
「議論入りは筋違い」
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相模原市の障害者施設で入所者が殺傷された事件で、容疑者が殺人をほのめかし2月に措置入院していたことから、安倍政権は、措置入院のあり方の見直しに向けた議論をすすめる方針を決定しました。関係者らは、「今回の事件で措置入院制度の議論に入るのは筋違いではないか」と懸念を示しています。
措置入院は、精神保健福祉法に基づいています。自身や他人を傷つける恐れがある場合、都道府県知事や政令指定市長が診察命令した2人の精神保健指定医が診察した結果、入院の必要を認めたときに知事などが本人の同意なしに決定できます。
容疑者は施設に勤務していた2月18日、ほかの職員に「重度障害者を殺す」と発言。施設は神奈川県警津久井署に相談し、県警は市へ通報。市は翌19日に緊急措置入院とし、22日に2人の指定医が正式な措置入院としました。その後の診察で措置入院の必要性は消失したとされ、3月2日に退院しました。
精神保健福祉法は退院後の地域精神保健のフォローアップ体制がありません。
全国精神保健福祉会連合会の小幡恭弘事務局長は27日付コメントで、「退院後に地域で本人を孤立無援にさせない、安心して生活していける仕組みをつくること」が必要だと強調しています。同時に、「入院さえしていれば治療されるのではなく、入院は一時的な対応手段でしかない」として、世界に類をみない精神障害者の長期入院は問題だと指摘します。
「再発防止策」として措置入院制度の在り方の見直しへと議論が向かうことに疑問を呈している関係者もいます。
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「容疑者が事件を起こした原因が精神障害なのかどうか、現段階では分からない」。杏林大学の長谷川利夫教授(精神医療)は、こう強調します。「爆弾予告のような手紙を出した人に対しては、一般的に刑法が適用されている」
容疑者は今年2月、衆院議長に障害者の殺害を予告する内容の手紙を渡そうとしていたといいます。
入院中の容疑者が反省の意を示したとして退院したことにふれ、「自傷他害の恐れがないか“反省”で判断することが医療的な判断なのか疑問だ。反省なら、刑法の範囲の話ではないか」と指摘します。