2016年7月30日(土)
日銀が追加金融緩和
上場投信購入倍増 破綻の「異次元」路線拡大
日銀は29日、金融政策決定会合を開き、追加金融緩和を賛成多数で決めました。株価指数連動型の上場投資信託(ETF)の買い入れを現在の年3・3兆円から6兆円に増額します。ETFは株価に連動して価格が変動する金融商品です。日銀による購入拡大は株価つり上げの効果があります。9人の政策委員の中からも「株価を目標にしているとの誤ったメッセージになる」(木内登英審議委員)などと2人が反対しました。
追加緩和は1月のマイナス金利政策の導入決定以来、6カ月ぶり。金融機関が預ける日銀当座預金の一部に適用するマイナス金利は現行のマイナス0・1%に据え置きました。長期国債の買い入れペースについても従来通りとしました。
「アベノミクス」(安倍晋三政権の経済政策)の「第1の矢」として日銀が行っている「量的・質的金融緩和」(異次元の金融緩和)は、「デフレ脱却」「2年間で2%の物価上昇」を目標にしていますが、効果がありません。今回の会合でまとめた日銀の最新予測である「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価目標の実現時期について、従来通り「17年度中」としながら、「海外経済の不透明感から不確実性が大きい」との文言を加えました。
今回の追加緩和は破綻済みの異次元緩和をさらに拡大するものです。日銀は声明で、安倍政権が近く決定する経済対策と「相乗的な効果を発揮する」と表明し、アベノミクス強化と一体であることを公言しました。
解説
アベノミクスとの危険な一体化
日銀は今回の追加金融緩和に際して、「政府の取り組みと相乗的な効果を発揮する」と声明で公言し、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の強化と一体であることを強調しました。物価・金融の安定を使命とすべき中央銀行として危険な道を突き進んでいます。
「異次元の金融緩和」は、日銀が大量の長期国債を買い入れることによって、市場にお金を供給する政策です。それによって人々が物価上昇を期待するようになれば、モノを買うようになり、銀行は貸し出しを増やし、景気がよくなるとの触れ込みでした。しかし、消費税増税や実質賃金の低下によって、個人消費は2年連続低下。消費者物価上昇率は現在マイナスです。物価上昇の局面では、日用品の値上がりや資材高騰で国民や中小企業が苦しみました。
日銀は物価目標の達成時期をすでに4回先送り。異次元緩和は長期化するとともに、相次ぐ追加緩和によって、効果のあがらない政策の乱発という泥沼にはまっています。日銀が保有する長期国債は名目国内総生産(GDP)の6割にも膨らみ、政府の借金を日銀が穴埋めする「財政ファイナンス」ではないかとの見方が広がっています。
日銀が大量の国債を市場で買い入れるため、市場は国債不足に陥っています。2月から実施しているマイナス金利は、預金金利の低下で実質的に国民の負担を増やしています。
最近は、中央銀行が直接お金をばらまく「ヘリコプター・マネー」に、日銀が踏み切るのではないかとの臆測まで広がっています。金融政策のゆがみがいかに深刻化しているかを示しています。
国債“爆買い”をはじめとする異次元緩和のつけは国民に回ってきかねません。国の財政を日銀が丸抱えする異常な政策が長期化すれば、財政の浪費をさらに促進するとともに、異次元緩和からの「出口」も困難になります。破綻が明らかな異次元緩和をやめ、金融政策を転換すべきです。(山田俊英)