2016年7月29日(金)
相模原事件 憤る障害者
命奪うのは許せない■偏見助長に危惧
障害のある人だけを標的にした相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件。障害のある当事者は「いらない命はない。身勝手に奪うのは許されない」と怒りの声を上げています。
「ヒトラーがやったことと同じで許せない」―。軽度の知的障害のある女性(42)はこう語ります。ヒトラー政権下のナチス・ドイツは、障害者にかける予算は無駄だとして精神障害や知的障害のある人たち約20万人を虐殺したのです。
容疑者は「障害者は税金の無駄」という趣旨のことを話しているといいます。
同様の空気を感じると、脳性まひで車いすを使う男性(48)=高知市=。安倍自公政権が消費税増税分は社会保障に充てると喧伝(けんでん)していることにふれ、「なんとなくだけど、“消費税が上がったのはあんたら障害者のせいやで”という空気を感じることがある。先の戦争で障害者は“米くい虫”“ごくつぶし”と言われたのに似ているかもしれない」と話しました。
かつて暮らしていた入所施設は、障害者が60人に対し、夜勤の職員が3人だけ。「仲間と半分冗談で、『いま強盗が入ったら殺されるよね』って話したことがあった」といいます。「障害福祉施策が脆弱(ぜいじゃく)だから、助かるはずの障害者の命を守れない状況にある」
男性は「作業所で一緒に働く知的障害者はみんな、『障害者は死ねってことか』と怒っている。僕も憎しみを感じる」と語りました。
「いらない命はない。障害があるからと、生きていたら悪いと判断するのは誤っている」。精神障害のある男性さん(61)=北海道江別市=は、語気を強めます。
「被害者は事件当時、元職員だからと容疑者を信頼してしまったのではないか。そんな生身の人たちを次々刺すなんて理解できない。精神障害のせいではないだろう」と怒りで声を震わせました。そのうえで、精神障害者への誤解や偏見が助長されるのではと危惧していました。