2016年7月28日(木)
子宮頸がんワクチン提訴
4地裁 国・製薬2社に賠償請求
子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害に苦しむ15〜22歳の女性たち63人が27日、副反応被害について国と製薬会社2社の法的責任を問い、損害賠償などを求めて東京、名古屋、大阪、福岡の4地裁で一斉提訴しました。被告企業は、英グラクソ・スミスクラインと米メルクの子会社MSD。
|
提訴したのは東京28人、名古屋6人、大阪16人、福岡13人で、23都道府県に住む女性たち。賠償は1人1500万円の慰謝料を一律に請求した後、各原告に応じた損害額を追加で求めるとしています。同ワクチンをめぐる集団訴訟は初めて。
同ワクチンは子宮頸がんの原因ウイルスであるHPV(ヒトパピロマウイルス)の感染を予防する目的で開発されたもの。原告はいずれもワクチン接種後に神経障害を中心とする多様な副反応症状(全身の痛み、知覚・運動・記憶障害など)が出て日常生活に支障をきたしたり、進路変更を余儀なくされたりしたと訴えています。症状は改善と悪化を繰り返し不安定なのが特徴で、確立した治療法はありません。
弁護団は、健康な人に接種するワクチンは他の医薬品以上に高い安全性・有効性が備わっているべきで、これらについての十分な情報提供が必要だが、いずれも満たしていないと指摘。国が有用性のない医薬品を承認したことや接種費用の助成、定期接種の対象にしたことは違法だとしています。
提訴後、東京訴訟の原告たちが都内で会見しました。HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団の水口真寿美代表が全国弁護団の声明を紹介。裁判の目的は、被告らの法的責任を明確にすることで一日も早く被害者の健康を回復させ、将来にわたって安心して暮らせるようにすること、再発防止と強調しました。
4人の原告が訴えました。埼玉県の酒井七海さん(21)は、高1で接種後、5年にわたりさまざまな症状が出て、20カ所以上の病院を受診し、入院は24回にも。外出には車いすが必須です。「どの地域でも同じような治療を受けられる医療体制、将来自立した生活を送れるよう支援体制を」と訴えました。
千葉県の園田絵里奈さん(19)は、学校や病院から詐病といわれた体験がいまも心につき刺さっていると語り、「望みは同世代の人たちと同じように大学にいき、遊びに出かけて一緒に笑うこと。普通の毎日を返してほしい」と話しました。
弁護団は28日〜8月3日、電話相談を実施します。電話03(6268)9550(土日を除く午前10時〜午後6時)。
子宮頸がんワクチン グラクソ・スミスクラインとMSDのワクチンはそれぞれ09年と11年に国内で承認されました。政府が10年の閣議で接種を緊急促進事業に決め、接種費用が全国でほぼ無料になったことから接種者が増加。厚労省によるとこれまでの接種者は推計で約340万人。13年4月から小6〜高1の女子に接種の努力義務を課す定期接種としました。しかし原因不明の体の激しい痛みなど深刻な訴えが多く寄せられ、同6月から積極的勧奨を中止しています。4月末までに報告された「副作用が疑われる例」は約2900件。