2016年7月24日(日)
きょうの潮流
いくつもの肩書の持ち主でした。12日に亡くなった大橋巨泉さん、82歳。司会者、放送作家、ジャズ評論家、実業家等々。テレビ創成期の立役者だったことは誰もが認めるところです▼1966年に始まった「11PM」。構成作家として参加し、司会も引き受け巨泉さんの名を一躍広めました。夜のワイドショーと銘打ったものの、企画は試行錯誤。男性路線に「低俗」との批判も受けました▼番組の軸足が定まったのがベトナム戦争報道。68年のことでした。昼に飛び込んできたニュースをもとにして、その夜、生放送の報道特番に。「ボクにとって最大の転機だった」と振り返っています▼7日に逝った永六輔さんとは親交が深い。共通するところが多くあります。放送作家として出発。巨泉さんは遊び心を、永さんは旅心を思いっきり番組に込めました。自分の言葉を持ち、社会や政治への旺盛な批評精神。放送がジャーナリズムであることを身をもって示しました▼2人は戦争中に学童疎開を体験した「昭和ヒトケタ世代」です。平和憲法のもとで反戦を訴えました。大切にしてきたのは、自由にものを言うこと。放送が権力に対して黙ってしまう今の空気に危機感を持ちます▼「ラジオのスタジオに通い、憲法改正に立ち向かいたい」とエッセーに書き残した永さん。巨泉さんがこん身の力を込めた「遺言」が週刊誌に掲載されています。「安倍政権に一泡吹かせて下さい」。政権によるメディアへの圧力をはね返そうと呼びかけています。