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2016年7月18日(月)

主張

政治的中立「調査」

“密告”の奨励はあまりに異常

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 自民党が公式ホームページで「学校教育における政治的中立性についての実態調査」を呼び掛けていることに批判が広がっています。教師の授業や言動が「政治的中立性を逸脱」していないか“監視”、“密告”することを奨励するものだからです。自民党は一部削除しましたが「調査」を継続しています。このような調査は政権党による教育への異常な介入であり、許されません。

平和主義まで“密告”対象

 「調査」では当初、「子どもたちを戦場に送るな」という主張を、「中立性を逸脱した教育」の例としていました。「再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」決意を示した憲法のもとにある日本の教師たちにとって、「教え子を戦場に送るな」の思いは当然のものです。そもそも憲法の平和主義は社会科の必須事項です。“密告”のすすめには、「戦争する国」への狙いが透けて見えます。

 ネット上をはじめ「もはや戦争反対が偏向教育になったのか」などの批判が集中したため、自民党は該当箇所を削除しましたが、“密告”の呼び掛け自体はやめようとしていません。自民党のやり方に理解を示す馳浩文部科学相の姿勢もきびしく問われます。

 自民党の「調査」は、「中立性を逸脱した教育を行う先生方がいる」「模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出される」などとして、教師の「政治的中立を逸脱するような」言動について「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」行ったかを、生徒や保護者、同僚教師などに事細かに“密告”させるものです。

 教師にとっては、何がやり玉にあげられるか不安で、のびのび授業をすることができません。18歳選挙権の実施ともあいまって、いま各地の学校で、主権者教育を積極的に進めようと、多くの創意工夫をした授業が行われています。自民党の「調査」はそうした努力を一斉に自粛に追い込もうというものです。

 学校や個々の教師は党派的な教育をしてはならないという意味で、「教育の政治的中立性」は大切です。日本共産党はかねてより、あらゆる偏向教育に反対する立場を明らかにしてきました。

 同時に、意見の対立を前提とする現実政治を授業で扱う場合、教師が自分の見解を、押し付けない形で述べることは、海外では教授方法の一つとして確立されています。政治について自主的に思考し、自由に意見を表明し、他人の意見に偏見なく耳を傾ける市民を育てることこそ、主権者教育の眼目の一つです。教師が自由にものを言えない教室で、どうして自由な市民が育つでしょうか。

自民党は直ちに中止せよ

 教師が教室で自由に意見を言えない状態は、「政治的中立性」の維持どころか、政権党への批判を認めず政権党の意見で教育を染め上げようとする点で、「政治的中立性」の最悪の破壊です。

 教師がものを言えなくなる時、社会全体の自由もなくなります。秘密保護法、メディア統制はすでに始まり、自民党改憲草案には9条改悪ともに国民の基本的人権の制限が明記されています。「自民党は『調査』を直ちに中止せよ」―そのために力をあわせましょう。


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