2016年7月16日(土)
高齢者負担増に批判
社保審部会が医療費議論
社会保障審議会医療保険部会が14日、参院選後初めて開かれ、75歳以上が加入する後期高齢者医療の窓口負担増や、70歳以上の高齢者に対する自己負担限度額(高額療養費制度)の引き上げに向けた議論を始めました。委員からは、低所得の高齢者を直撃する負担増に対し批判する意見が相次ぎました。
引き上げ計画は、安倍内閣の「経済・財政再生計画」によるもの。後期高齢者の窓口負担は1割負担を原則2割にし、高額療養費も「現役並み所得」とされる高齢者を中心に現役世代と同水準まで引き上げることを狙っています。
これに対し、日本医師会は「75歳以上の人の年金収入はそれほど多くない。一気に負担を高くするのは反対だ」と強調。全国市長会も、生活保護の受給世帯が増え続けていると述べ、「高齢者の所得格差は現実としてある。低所得者への配慮は十分、検討すべきだ」と表明しました。
経団連は「現役世代の負担との公平性」を口実に「原則2割負担にすべきだ」と主張し、高額療養費も「すみやかに見直すべきだ」と求めました。
高額療養費の負担上限については年内に、窓口負担は2018年度末までに報告書をまとめる予定です。
解説
受診抑制・生活破壊招く
医療費の窓口負担は、75歳以上が1割(現役並み所得者は3割)、70〜74歳は2014年4月以降に70歳になった人から2割負担に引き上げています。厚労省はこれに合わせて75歳以上も2割に引き上げる計画です。1500万人(2015年度)もの生活を直撃します。
70歳以上の負担増は、1983年に「老人医療費無料制度」が廃止されたのを皮切りに、2001年に定率1割負担導入。70〜74歳に続いて75歳以上も2割になれば、際限のない負担増になります。
高額療養費は、1カ月あたりの医療費のうち上限を超えた分を払い戻すもので、外来では約4万4千円が上限となっています(表)。現在でも負担が重いとの声が上がっており、引き上げは高齢者を直撃します。
75歳以上の年金収入は基礎年金の満額水準(約80万円)以下が約4割を占めています。さらなる負担増は、受診抑制をいっそうひどくし、生活破壊を招くのは必至です。
(松田大地)
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