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2016年7月13日(水)

主張

米軍属の「明確化」

沖縄の要求に正面から応えよ

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 沖縄県で元米海兵隊員の軍属が起こした女性暴行殺人事件(4月)を受け、日米両政府は今月初め、日米地位協定で特権が与えられている軍属の範囲を「明確化」することで合意しました。今回の事件を通し、地位協定が定める軍属の定義があいまいだとの批判を踏まえた措置です。日本政府は、今後数カ月をかけて詰めの協議を行うとしていますが、その結果、軍属の数が増えるのか、減るのかも明らかにしていません。沖縄県が米軍犯罪の再発防止策として強く求めている「地位協定の抜本的な改定」とはかけ離れた内容です。

依然として範囲あいまい

 地位協定は、軍属について「合衆国(米国)の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊(米軍)に雇用され、これに勤務し、またはこれに随伴するもの」(第1条)と定義しています。今回の事件の容疑者は、民間のインターネット関連会社に雇用された社員として米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)内で働いていたとされますが、米軍は軍属だと認定しました。地位協定の軍属の定義が極めてあいまいであり、米側の恣意(しい)的な判断に委ねられている実態が浮き彫りになりました。

 今回の合意も軍属の範囲として▽米政府の予算などにより雇用される者▽船舶などの乗組員▽米政府が雇用する者▽技術アドバイザーやコンサルタント―の四類型を例示しただけです。日本政府は今回の事件の容疑者のような者は軍属から外れるとしていますが、範囲は依然不明確なままです。

 日本政府によると、2013年3月末現在で全国に約5000人いた軍属は今年3月末には約7000人に増えています。範囲を「明確化」するといっても「(今後の)協議で数が減るか、増えるか、予断を持って答えられない」(中谷元・防衛相)というものです。加えて、軍属に比べ圧倒的多数の米軍人(13年3月末で約5万3000人)の地位協定上の特権には指一本触れようとしていません。

 女性暴行殺人事件に抗議するため、翁長雄志県知事も参加して開かれた沖縄県民大会は、「在沖米海兵隊の撤退」と「米軍基地の大幅な整理・縮小」「日米地位協定の抜本的改定」などを決議しました。今回の日米両政府の合意は、県民の要求に全く応えていません。

 安倍晋三政権が合意を急いだのは、参院沖縄選挙区で苦戦が伝えられた自民党現職閣僚候補者のてこ入れのためとも報じられました。しかし、県民は野党統一候補を圧勝させました。県民の声に耳を貸さず小手先の対策でごまかそうというやり方は通用しません。

地位協定の抜本改定こそ

 地位協定は、米軍人・軍属の「公務中」の犯罪は第1次裁判権が米側にあると定めています。「公務外」では第1次裁判権は日本側にあるとされますが、容疑者が基地内に逃げ込むなどして米側が先に身柄を確保すれば日本側が起訴するまで身柄は引き渡されません。殺人と女性暴行に限り日本側から起訴前の身柄引き渡し要求があれば米側は「好意的考慮を払う」という「運用改善」がされたものの、あくまで米側の裁量次第です。

 翁長知事が繰り返し指摘しているように、米軍関係者による相次ぐ事件・事故の背景にある特権意識を生み出している地位協定の抜本改定こそ必要です。


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