2016年7月12日(火)
改憲勢力3分の2超
国民は信任与えず
市民と野党の共闘に展望
参院選挙で、自民党は56議席、公明党は14議席を獲得し、おおさか維新の会などを加えて改憲勢力は、非改選勢力と合わせて参院の3分の2(162議席)を超えました。
安倍晋三首相は、10日夜の民放番組のインタビューで「(憲法改定へ)橋がかかったと思う」と表明。「これからは憲法審査会においていかに与野党合意をつくっていくかだ」と述べました。
9条改憲が狙い
昨年の安保法制=戦争法で憲法9条と立憲主義を乱暴に破壊した安倍首相が、「(改憲を)在任中に成し遂げたい」と明言するもと、改憲勢力が衆参で改憲発議に必要な3分の2を占めたことは重大です。安倍首相は「どの条文をどう変えていくか議論する」とも述べました。首相は、公示直前の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長から「9条に手をつけないと言えるのか」と追及され、否定しなかったように、9条改憲の狙いを秘めています。
同時に、この選挙結果は、決して安倍首相の狙いに国民が信任を与えたものではありません。
何より安倍首相自身が、選挙の大争点に浮上した憲法問題から逃げる態度に終始してきたからです。安倍首相は6月8日に参院選向けの本格遊説を始めてから7月9日の東京での最後の演説まで、のべ40都道府県で100回以上の街頭演説を行いましたが、一度も憲法問題にふれませんでした。
公明党の山口那津男代表は、憲法問題が大争点になってくると「(公明党は)改憲勢力ではない」「自民党とは違う。草案をつくっていない」と弁明に追われ、最後は「国民の望まない9条改正はやらせない」(9日、兵庫県)と“9条改憲阻止”の「公約」さえ口にしました。
自公のごまかし
こうした自公の争点そらしとごまかしは、9条改憲に反対多数の世論を恐れ、戦争法廃止と安倍改憲阻止の大義で結束した市民と野党の共闘を恐れたからにほかなりません。
野党統一候補は11選挙区で大激戦を制して勝利したほか、7県では得票率40%以上の大接戦に持ち込みました。市民と野党の共闘は、安倍政権の足元を大きく揺るがすたたかいとなったのです。新しい共同の力をさらに全国隅々で発展させることに、改憲阻止の展望があります。
安倍首相は10日夜、選挙中、憲法を語らなかったことを民放番組で問われ、「法律なら国会で決めるので選挙でふれないのは問題だが、憲法改正は国民投票で国民に聞くわけで、議論は国会で行われるからそれをしっかり見ていただく」などと述べました。しかし、改憲発議が国会の権限である以上、国会議員を選ぶ選挙で問うのは当然すぎる原則です。国民主権に直接関わる改憲について、「発議まで国民は黙ってみていろ」というに等しい憲法無視の暴論です。強引な改憲論議は、新たな矛盾を激化させるだけです。(中祖寅一)