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2016年7月5日(火)

首相が“消した年金”5兆円

積立金使い株価つり上げ

“ギャンブルで すった”安倍政権

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写真

(写真)年金手帳

 「アベノミクス」のために株価をつり上げようと公的年金の株式運用を拡大してきた安倍内閣。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年度決算で、5兆数千億円にのぼる巨額損失が明らかになり、参院選でも重大問題として安倍政権の責任が問われています。第1次安倍政権の「消えた年金」に続いて、今度は安倍首相が「消した年金」(日本共産党の小池晃書記局長)であり、国民の厳しい審判が重要になっています。(深山直人)


株式運用比率 50%に倍増

 「年金を削減しておいて、積立金をギャンブルですってしまうようなものだ。安倍首相は責任を取れ」

 「景気がよくなるどころか、国民には年金の損失だ。これがアベノミクスの実態か」

 GPIFの巨額損失にネット上などで怒りが噴出しています。

 年金積立金は現在、約140兆円。国民が払った保険料です。老後の年金保障が目的であり、安定運用が大原則です。

 ところが、安倍政権は14年10月末、それまで12%(+−6%)だった国内株式の運用比率を25%(+−9%)に、外国株式を12%(+−5%)から25%(+−8%)にそれぞれ引き上げ、50%に倍増させました。一気に20兆円も株式運用枠が増やされたのです。

 その結果、15年7〜9月期に四半期ベースで過去最大となる7兆8899億円の損失を計上。16年1〜3月期も大幅損失を出し、年間で5兆円を超える巨額損失となることが判明したのです。

 16年4月からも株価下落で2兆円程度の損失を出しているとみられており、損失がさらに膨らんでいます。

 安倍首相は“安倍政権になって利益が出た”と釈明しますが、株式比率を上げてからは、それもほとんど消えてしまったのが実態です。株式比率を上げていなければ巨額損失を出すことはなかったことは明らかで、ごまかしは通用しません。

 安倍首相は、巨額損失で「年金額が減るなどということはありえません」とも言い訳しています。しかし、今年2月の衆院予算委員会では「想定の利益が出ないなら、当然、支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と年金減額に言及しています。

公表は参院選後

 しかも、GPIFは巨額損失について、参院選後の29日に発表する予定です。例年7月上旬までに前年度の運用結果を公表しているのに、今年は約3週間も遅い公表です。野党は「損失隠し」だと批判しています。

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アベノミクスを「買い支え」

 安倍首相は14年1月、スイスで開かれたダボス会議の演説で、「GPIFは成長への投資に貢献する」と述べ、株価つり上げのために株式運用の拡大を宣言。アベノミクスの「第三の矢」として閣議決定した成長戦略でも、年金の運用変更を柱の一つにすえました。

 安倍政権は、積立金を使って、日銀とともに大量の資金を株式市場に流し込み、海外からの投機マネーも呼び込むことで、実体経済とかけ離れた株高・円安をつくり、みせかけだけの「景気回復」を演出してきたのです。

 小池晃書記局長の追及(3月3日)で、株価の下落局面で年金積立金が「買い支え」をしていることが判明しました。

 海外投資家が日本株を売り越す局面で、GPIFから委託を受けた信託銀行が大量に日本株を買い越すなど海外投資家と真逆の動きを続けていました。年金積立金が「株価つり上げの道具」とされている実態です。

 高リスク運用で損失が出れば、年金削減や保険料引き上げとなって国民にツケが押し付けられます。

 しかも公的資金による株価つり上げは、市場をゆがめ、投機筋や銀行・証券が巨額の利益を手にする一方、一般投資家や企業の労働者は苦しめられることになります。

米国でもしない

 そのため、金融大国の米国ですら公的年金の積立金で株を買うことはしていません。基礎的な公的年金(OASDI)は、政府が元本と利子を保証する「非市場性国債」のみで運用されています。

 日本共産党は、株式運用の拡大に反対し、高リスクの投機的運用をやめさせると主張。過大な積立金は計画的に取り崩し、給付に充てるために活用していくことを掲げています。

国民は給付減 保険料上げ

 基礎年金は満額でも月6・5万円、国民年金のみの平均受給額は月5万円です。

 「下流老人」など高齢者の貧困が社会問題となるなか、年金削減にストップをかけ、年金の増額・充実をはかることが急務です。

 ところが安倍内閣になって年金はマイナス3・4%の大幅な目減りです。物価下落時に見送った年金削減分の実施(2・5%)と「マクロ経済スライド」(物価上昇以下に抑える)の発動(0・9%)によるものです。

 政府は、「マクロ経済スライド」が実施できない場合、その分を翌年度以降に繰り越し、まとめて減らす年金削減法案を提出しており、秋の臨時国会で審議される予定です。

 社会保障改革「工程表」では、年金の支給開始年齢(65歳)の先送りなども計画。「選挙さえ乗り切れば年金削減を強行」―これが、安倍内閣の本音です。

 日本共産党の志位和夫委員長は、5兆円超の損失に4月以降の2兆円の損失推計をあわせると7兆円にのぼると指摘し、訴えています。

 「7兆円もみなさんの年金を消してしまった。みなさんには年金保険料の引き上げを押し付ける。給付も削減でしょ。こんなことを押し付けておいて、7兆円ものお金をアベノミクスのためになくしてしまう。こんな政治は根本から変えなければなりません」


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