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2016年6月30日(木)

経済政策、憲法問題、野党共闘…

BS日テレ「深層NEWS」 志位委員長が語る

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 日本共産党の志位和夫委員長は28日放送のBS日テレ番組「深層NEWS」に出演し、参院選の争点や野党共闘などについて語りました。聞き手は、小西美穂・日本テレビ報道局キャスターと吉田清久・「読売」編集委員です。


参院選で訴えたいこと――「力あわせ、未来ひらく。」

 「参院選で最も訴えたいことは」と問われ、フリップに「力あわせ、未来ひらく。」と書いた志位氏。「今度の選挙は、戦後の日本の政治史上でも初めて、全国的規模で野党と市民が協力して選挙戦をたたかう画期的な選挙になっています。安倍政権の強権的な政治のあり方に反対して民主主義を大事にする政治をつくろうと、全国32のすべての1人区で野党の統一候補が実現してたたかっております。そのことを表現したものです」と語りました。

「アベノミクス」がつくった経済のもろさ――いまこそ「三つのチェンジ」を

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」をどうみるか―。志位氏は「安倍さんが絶対あげない二つの数字がある」として、(1)実質賃金が5年連続マイナス(2)個人消費も2014年度、15年度と2年連続マイナスで戦後初―の事実を示し、「起こっているのは格差の拡大であり、『アベノミクス不況』というのが実態です」と述べました。さらに英国の欧州連合(EU)離脱による日本経済への影響に関して、次のように語りました。

 志位 EUからイギリスの離脱ということになりました。この衝撃は世界に及んでおります。ただ日本でショックはかなり大きいんですよ。株の動きは少し戻したということもあるようですけども、8%落ちて、月曜は2%ぐらい戻したというところです。かなりの下げ幅で暴落です。円も急騰している。これは、「アベノミクス」がつくった「経済のもろさ」を示していると思います。

 「異次元の金融緩和」ということで円安をつくる。そして海外から投機マネーを呼び込んで株をつり上げる。投機マネー頼みで円安・株高政策をやってきたわけですね。ところがそれは実はもろい。実体が伴いませんから。実体経済の方が冷え込んでいる。投機マネー頼みでなんとか張りぼて的にふくらましてきたんだけど、こういう経済は、実は外的なショックに非常にもろいことが今、明らかになってきたと思うんです。

 小西 共産党ならどう対応しますか。

 志位 日本経済の6割を占める家計消費、個人消費を応援する。そして内需をよくする。内需主導で経済をよくしていくというところに転換していく必要があると思っています。

 私たちは、「格差をただし日本経済に民主主義を」―「経済にデモクラシーを」ということで「三つのチェンジ」を訴えております。

 第1は「税金の集め方のチェンジ」。消費税頼みの道は失敗しました。もう2度も延期せざるをえなかったわけですから、10%は先送り実施ではなく断念すべきです。そして、富裕層や大企業に応分の負担を求める税制改革によって財源をつくる。

 第2のチェンジは、「税金の使い方のチェンジ」です。国民のみなさんからお預かりした大事な税金は、まず社会保障と若者と子育てに使う。若者という点では、大学の学費を段階的に下げて10年間で半分にする。返済不要の給付制奨学金の創設も提案しております。子育てでは、保育園の問題が大問題ですが、認可保育所を国の責任で30万人分つくり、保育士さんの待遇を改善して、「保育園に落ちない日本」をつくる。こういうことも提案しております。

 そして三つ目のチェンジは、「働き方のチェンジ」です。ブラックな働き方をなくす。非正規から正社員への流れをつくるため、雇用のルールの強化をはかる。最低賃金は、中小企業への支援をしっかりやりながら、「今すぐどこでも時給1000円、(さらに)1500円を目指す」。こういう一連のパッケージの政策を出しております。

大企業・富裕層に応分の負担を―無理のない現実的提案

 社会保障の財源に関して、消費税の10%への引き上げに代わる財源をどうつくっていくのかと聞かれ、次のように述べました。

 志位 大企業あるいは富裕層から応分の負担をということで、かなり無理のない現実的な方策を提案しています。たとえば大企業についていいますと、研究開発減税など大企業しか使えない優遇税制がいろいろあるんですよ。そういうもののために、法人税の実質負担率が中小企業ですと20%、大企業は12%、連結納税の巨大企業になると6%なんです。これはどうみても不公平ですから、中小企業と同じだけの税金は払ってもらおうじゃないかと。これでかなりの税収が出てきます。これを中心に6兆円ぐらいの税収を見込んでいます。

 それから富裕層という点では、所得が1億円を超えますと逆に税負担率が下がるんですね。株取引などへの税金が軽いですから、この優遇税制をただしていくということです。

 小西 そうなりますと、大企業が海外へ流出してしまう懸念はありませんか。

 志位 これはね、ある意味ではもう逃げているわけですよ、タックスヘイブン(租税回避地)へ。

 小西 もう逃げちゃっている。

 志位 悪質なのは逃げていっているわけですよ。タックスヘイブン、「パナマ文書」で問題になりました。ケイマン諸島に日本から74兆円ものお金が逃げているわけですね。主に富裕層、大企業ですよね。

 ですから、タックスヘイブンへの課税という問題も真剣に考える必要がある。タックスヘイブン税制というのがあるんですが、たいへん弱いものです。これを強化して、きちんと逃げていったものは課税する。それから国際協調が大事です。国際協調でタックスヘイブンそのものをなくしていくような取り組みが必要です。

改憲問題は参院選の大争点――安倍改憲の“本丸”は9条改悪

 憲法改定を明言する安倍首相が「今回の参院選挙の争点にする必要はない」と述べていることについて問われ、志位氏は次のように発言しました。

 志位 (参院選の争点に)なっていますよ、もう。だいたいいろいろな世論調査でも、社会保障の次は憲法ですよね。国民のみなさんが争点だというふうにおっしゃっている。争点というのは、国民が決めるものですから、すでになっていると思います。

 小西 なぜ、争点にしたいんですか。

 志位 というよりも、安倍さん自身が、憲法を変えていくということをおっしゃっている。でも討論会などでは、「どの条文を変えるかは、まだ決まっていないから言えないんだ」とおっしゃるんですね。

 しかし、私が民放の番組で、「そうはいきませんよ。自民党は改憲案を決めているでしょう。そこでは9条2項を削除して『国防軍』をつくると書いてある。9条には手をつけないと言えますか」と、重ねて聞いたんですが、絶対手をつけないとおっしゃらない。ですから、安倍改憲の本丸は9条だということははっきりしたと思うんです。9条を変えるかどうか、これは争点になっていると思います。絶対にこれは許してはならない。

 私は、憲法9条というのは、あの戦争の惨禍をふまえて、二度と戦争しないということを世界に誓い、そして平和の先駆けになるという決意を示したもので、世界に誇る「日本の宝」だと思っています。

安保や自衛隊――お互い立場の違う問題は野党共闘に持ち込まず、一致する課題で行う

 野党共闘について、小西氏は「野党が共闘するうえで共産党に対するアレルギーのようなものを感じたことはないか」と質問しました。

 志位 これは、立場が違う党がそれぞれ協力するわけですから、いろいろと私たちの党に対する誤解があったり、そういうことはいろんなプロセスの中にはありますよ。しかし、話し合っていけば、だんだん解けてくる。

 それから今、一緒に全国32の1人区で(選挙協力を)やっていますでしょう。一緒にたたかってみれば、やっぱりお互いがよく分かって、信頼が深まるというプロセスがすすんでいると思っています。

 吉田氏は「民進党の議員から、日米安全保障条約や自衛隊の政策について、もう少し修正してくれればもう少し連携できるんじゃないかという声も聞こえてくる」と問いかけました。

 志位 私たちは、日米安保条約については、国民の合意で廃棄して中立の日本をつくろうというプログラムを持っています。自衛隊についても、私たち独自の考え方を持っています。しかし、そういう安保や自衛隊についての党の独自の考え方は、野党共闘に持ち込まないということをはっきりさせているんです。横に置く。お互いに(立場が)違う問題は共闘に持ち込まないと。

 私たちは、(国民連合)政府をつくりましょうということを言っております。今の安倍政権に代わる国民中心の政府をつくって、そして安保法制を廃止する、そして立憲主義を回復する。そういう仕事をやりましょうということを言っていますが、この政府にはもちろん持ち込まない、横に置くということで、一致する課題でやっていきましょうということを言っております。

 小西 政策の相違点は横に置いておくと言われても、有権者としては、この後どうなるのか、選挙の時は一緒だけど、またバラバラになるのではないかと、非常にとまどいがあると思うんです。そこはどう答えますか。

 志位 二つ言いたいんですが、一つは、野党の一番の結束点は何かというと、安保法制を廃止する、そして立憲主義の回復。立憲主義の回復というのは、簡単に言えば、憲法を守るまっとうな政治を取り戻そうということで、政策レベルの話とは違うんですね。これを最優先してやりましょうと訴えています。

 それともう一つは、野党4党として、「アベノミクスによる格差と貧困を是正する」「TPP、沖縄問題のような国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない」「安倍政権のもとでの憲法改定は反対」という太い柱を確認しています。

 さらに、野党4党で国会に15本もの議員立法をだしているんですよ。これは暮らしにかかわる大事な問題がかなり入っています。それから市民連合のみなさんと19項目の政策協定を交わしているんですね。そういうのを全部あわせると、暮らしを応援して経済を立て直そうという「アベノミクス」に対する対抗軸をしっかり立てています。立場の違う問題はそれぞれが主張しながら可能なかぎりの合意形成をしていこうと思いますが、太いところでは一致しています。

問われているのは、自衛隊を海外の戦争に派兵していいかどうか

 小西 共産党は自衛隊は憲法違反している。かたや民進党は合憲だといっている。これだけの食い違いがあるのに、一緒に組めるのかという疑問を感じている人もいると思うんですが。

 志位 私たちは、自衛隊についてはいまおっしゃったような立場をとっており、民進党とは意見が違います。

 ただ、自衛隊の問題で今問われているのは、違憲か合憲かじゃない。そうではなくて、自衛隊を海外の戦争に派兵していいかどうかが問われている。「専守防衛」という志で入隊された自衛官、あるいは熊本の震災で汗を流した自衛官、こういう方々を海外の戦場に送り、そこで「殺し、殺される」ような戦闘に参加させていいのかどうか。これが問われているわけで、それが集団的自衛権の問題なんですよ。それで、この憲法違反の集団的自衛権の法律はなくそう、白紙にしようという点で一致しているわけで、これは非常に太いところの一致だと思うのです。

問われているのは「日米安保をなくす」でなく「安保法制をなくす」か

 吉田 日米関係について日米同盟が基軸というのは民進党も基本的な立場なんですが、共産党はどういう立場なんですか。

 志位 私たちは、日米安保条約については大きな方向では、国民合意で廃棄するという方針を持っています。ただ、この問題も今の野党共闘に持ち込まないという態度をとっています。今、日米安保条約についても、日米安保条約をなくすかどうかが問われているわけではない。安保法制をなくすかどうかが問われているんです。

 日米安保条約が戦後、ずっと続いてきました。しかし、日米安保条約のもとでも自衛隊員は一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出していない。なぜかといったら、“集団的自衛権を行使できない。9条のもとで行使できない”と一貫して(従来の政府の憲法解釈では)やってきたからです。これを変えようとしているわけですから、安保条約に対する立場の違いを超えても、これは許さないという立場で野党は結束しているのです。

新有権者に伝えたいこと―主人公は若いみなさん、声をあげ行動していこう

 18歳選挙権の施行で「新しい有権者に伝えたいこと」について聞かれ、志位氏は次のように語りました。

 志位 今の若い方々は、いろんな不合理なことにぶつかっていると思うんですよ。たとえば、働き方という点でも、ブラックな働き方が蔓延(まんえん)している。非正規雇用という点でも、若い方の2人に1人が非正規ですよね。

 それから正社員になったとしてもいわゆるブラック企業という形で、長時間労働で使い捨てにされる。そういう働き方という点でも問題があります。

 それから、学生さんのことを考えてみても、学費が高すぎる。奨学金もたいへんな借金になる。こういういろいろな問題がある。こういういろんな不合理な問題を我慢していないで、主人公は若いみなさん自身ですから、声をあげて、行動していきましょうということを呼びかけたいですね。

18歳選挙権は党創立からの主張

 志位 それから、18歳選挙権ということで一言いいますと、党をつくったのが1922年なんですけど、立党当初から18歳以上の男女の選挙権ということをいっております。ですから、これは九十数年来の宿願がかなったということです。

 最後に、今回の参院選の目標議席について聞かれ、次のように語りました。

 志位 比例代表で850万票以上を獲得しまして9議席。そして選挙区では、複数議席の選挙区ではすべて確保したいと考えております。香川では、共産党の公認候補が統一候補になりましたから、これは責任もって勝利したいと思います。それから32の(改選)1人区では全部で、民進党(公認)の候補であっても無所属候補であっても勝利のためにがんばりたいと思っています。


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