2016年6月26日(日)
TBS系「NEWS23」党首討論
志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は24日夜、TBS系「ニュース23」で行われた党首討論に出席し、参院選の争点などについて与野党党首と討論しました。
■アベノミクス
実質賃金と個人消費の落ち込み深刻 大企業応援から暮らし応援へ転換を
番組ではまず、「アベノミクス」について議論となり、各党首が、「アベノミクス」に対して一番注目すべき数字をフリップで挙げて議論しました。
安倍晋三首相は、「47」と書き、「有効求人倍率が47すべての都道府県で1倍を超えた」などと述べました。志位氏は、「マイナス20万円」と書き、次のように述べました。
志位 私はマイナス20万円と書きました。この党首討論、何度もやりまして、安倍さんは、「アベノミクス」はうまくいっていると、いろんな数字をおっしゃるんです。ただ、二つの大事な数字をおっしゃらない。
一つは、働く人の実質賃金が5年連続マイナスで、5%も目減りしています。ですから、(年収)400万円の世帯でいいますと、20万円目減りしているわけです。これは、この統計を取り始めた1990年度以降、最低の数字なんです。一番落ち込んでいる。
それから、もう一つは、日本経済の6割を占め、国民のみなさんの暮らし向きをはかる指標といったら、個人消費、家計消費です。これが14年度、15年度と2年連続マイナスになっている。これは戦後初めてです。リーマン・ショックのときも1年でプラスに転じています。
この二つの数字は、「アベノミクス」がうまくいっていない、失敗したということを示していると思います。
“大企業を応援して、大企業がもうければ、いずれは暮らしに回ってくる”と(言ってきた)。回ってくる、回ってくると言って3年半たったんですが、回ってきていない。ですから、これは政策の転換が必要です。暮らしを応援して、経済をよくしていく。この道に転換することが必要です。
■消費税増税延期
失政が招いた消費不況 増税路線から決別を
消費税増税の延期がテーマとなり、安倍首相は「世界経済のリスクが顕在化する危険性がある。需要をつくって供給の制限をなくしていく」と述べました。志位氏は次のように指摘しました。
志位 今度の増税を先送りせざるをえなかった真の理由はどこにあるか。国内の景気が悪すぎるからです。さきほどもいったように、14年度、15年度と2年連続、個人消費がマイナスという戦後初めての事態に陥った。だから上げられなくなったわけです。
なぜそうなったかといいますと、やはり8%への増税が失敗だった。私は、8%の増税の直前の14年の1月の国会で、安倍さんに、「働く人の賃金が97年度をピークに70万円も下がっている。これだけ賃金が下がっているもとで増税をかぶせたら、かならず景気悪化の悪循環の引き金を引くことになる。だから、おやめなさい」といいました。
安倍さんの答えは、“足元を見てください、足元はよくなっている”と、こういって増税をしたわけですね。しかし結果は、2年連続マイナスでしょう。
私は、いまの消費不況というのは、まさに安倍さんの失政がつくりだした不況だと思います。その責任をはっきりお認めになって、増税路線から決別する必要があると思います。それをお認めにならないで、世界経済の問題だということに責任を転嫁するのはよくないということをはっきりいいたい。
■政治とカネ
舛添、甘利問題――自公の責任問われる 政治資金を国民の監視にさらす改革を
舛添東京都知事の辞任など「政治とカネ」の問題をめぐって議論となり、志位氏は次のように述べました。
志位 私は、自民党と公明党がかついで全面支援した知事が、2代にわたって、「政治とカネ」の問題で辞めざるを得なくなった。この責任は重いと思います。銀座でお二人(安倍氏、公明党の山口代表)がそろって、“舛添さん、この人しかいない”と訴えた。この前の民放の番組で、たしか安倍さんは謝罪されたと思うのですが、山口さんも、きちんと謝罪されたほうがいい。
それともう一つは、「百条委員会」というのを私たちは提案しています。この問題は、きちんと真相究明をしませんと繰り返されることになる。教訓も引き出せませんから、きちんと、法的強制力をもった、偽証にも問える、「百条委員会」を提案しておりますから、ぜひ、これは実現させたい。
それと甘利(明)さんの問題、これはね納得いきませんよ。国会の間はずっと「睡眠障害」で休まれていて、国会が終わると出てこられる。説明はいっさいしない。これは、自民党の総裁として、あるいは総理として、ああいうことをおこしたわけですから、個人まかせにしないできちんと説明責任を果たさせる。そして国会としては招致を行う、これが必要です。
最後に、この問題(政治資金規正法の改正)についていいますと、当然、こういう支出についても考える必要があると思います。ただ、やっぱり一番のカギになってくるのは、国民の監視にさらすということです。そういう点では、例えば領収書をつけて出すわけですけど、これは総務省までいかないと見れないわけですよ。これをインターネットで見れるようにすることが必要です。なんといっても「入りの問題」―企業・団体献金、パーティー券、そして政党助成金。これが「政治とカネ」に関する感覚まひをうんでいるわけですから、ここもただすということが必要だと思います。
■野党共闘
戦争法廃止・立憲主義回復の大義で結束 憲法、暮らし、民主主義でも共通政策
「野党共闘」について視聴者から「安倍政権に対する明確な対案を示してほしい」といった声が紹介され、民進党の岡田克也代表は「共通政策があります。安保法を白紙化する。憲法の改悪は認めない。そういう共通政策のもとでこの選挙をたたかっています」と答えました。
さらに岡田氏は、参院選後の共通政策や政権に向けた話し合いについて聞かれ、「現時点では、理念や政策が明らかにこれだけ違うのに、同じ政府ということはありえないと考えています。ただ、国会でも共同歩調をとって反対をしたり、対案もずいぶんこれまで国会に出したりしてますから、共産党だけでなく、社民党、生活の党も含めて、そういうこともさらに進めていきたいと思います」と述べました。志位氏は次のように述べました。
志位 野党間の協力というのは、別々の党が協力するわけですから、それぞれ理念がある、それぞれ政策がある、その政策・理念が違ったとしても、私たちはまずは安保法制を廃止する、そして立憲主義を取り戻す、一番の大義のところで結束しております。
立憲主義を取り戻すというのは、平たくいいますと、憲法をちゃんと守る、まっとうな政治を取り戻そうということであって、これは、あれこれの政策が仮に違ったとしても、それを横においてでも、最優先させるべき仕事だと思っております。
それからもう一点、政策の問題についていいますと、それぞれ独自の政策がありますが、4党での共通政策というものも確認しているんですよ。安保法制以外も、「アベノミクスによる格差と貧困を是正する」、あるいは、「TPPや沖縄問題など強権政治を許さない」、そして「安倍政権による憲法改悪に反対する」、そういう太いところがあります。それから15本の議員立法を共同で出しているんですね。そして「市民連合」のみなさんとは19項目の政策協定を結んでおります。これは、暮らしの問題、あるいは民主主義の問題、その全体にわたる共通政策をもって臨んでいるということも言いたいと思います。
政権構想の違いは選挙協力の障害にならない
司会者から「次のステップは」と聞かれ、志位氏はこう発言しました。
志位 次のステップは、参議院選挙でかなり“共闘効果”が出始めているという報道もありますから、あと2週間、しっかりこれを成功させて、ぜひ参議院選挙の後も発展させていきたいと思います。
まあ、いろいろな違いがあります。政権についての考え方はまだ一致していませんけれども、これは話し合っていきたいと思っています。参議院選挙は、政権が直接代わる選挙じゃありませんから、私たちは政権の問題、考えは違っても今度の選挙の障害にはならない、障害にしてはならないと考えています。
これに関して、おおさか維新の会の松井一郎代表は、「キャッチフレーズが一緒なだけで、政策が一致しているのではない」と攻撃。志位氏は次のように反論しました。
暮らし応援で経済をよくする――「アベノミクス」への対抗軸ハッキリ
志位 ちゃんと中身をみてくださいよ。さきほど19項目と15項目をいいました。
たとえば、保育士さんや介護職の給与を引き上げる。具体的に(法案を)出しています。ひとり親家庭の児童扶養手当を引き上げて、子どもの貧困をなくしていく。あるいは長時間労働の是正も、具体的な法案を出しています。それから最低賃金の抜本的な引き上げ。給付制奨学金の創設。さらに税の問題では違いもありますけれども、所得税の累進を強めてそこから税をとってくるというところまで一致しているわけです。ですからこれは「アベノミクス」に対する対抗軸が立っているんですよ。つまり、暮らしを応援して経済をよくしていこうという対抗軸がちゃんと立っていると思います。
安倍首相は「平和安全法制の廃止では一致しても、共産党は、自衛隊を違憲だといっている」と述べ、争点をすりかえて日本共産党を攻撃しました。志位氏は次のように反論しました。
■安倍、山口両氏に答える
問われているのは自衛隊の海外派兵
志位 私たちは、将来の展望として、国民多数の合意を得て9条の完全実施をやるといっています。しかし、これはいまの課題じゃない。
いまの課題は、いまの自衛隊の問題で何が問われているかといえば、自衛隊を海外に派兵していいかどうかなんですよ。つまり、自衛隊を集団的自衛権という形で、日本に対する武力攻撃がなくても海外での戦争に従事させる。あるいは、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような場合に、海外での兵たん部隊として、これまで「戦闘地域」といわれたところまで出していいのかどうか。つまり、自衛隊を「殺し、殺される」海外での戦争に出していいのかが問われているのです。
憲法を守ることと、国民の命を守ることの両方に責任を負う 9条の完全実施は将来の課題
これに関して山口氏は、自衛隊が違憲だというのなら災害派遣などに活用するのは「立憲主義に反する」と攻撃しました。志位氏は次にように反論しました。
志位 憲法9条と自衛隊が両立するかどうか。普通にだれが読んでも軍隊だと思いますよ、自衛隊は。だから、私は憲法違反だと思います。
ただ、憲法違反の存在であってもすぐにはなくせない。国民の合意がなかったらなくせない。国民のみなさんが、「自衛隊がなくても大丈夫だ」という圧倒的多数の合意がなかったらそれは着手できないと思います。
それまでは自衛隊の存在が続くことになるわけです。続くことになったときに、万が一でも急迫不正の(主権)侵害があったら、大規模災害があったら、そのときはあらゆる手段を使って国民の命を守るのは当たり前じゃないですか。
私たちは、憲法を守るということと、国民の命を守るということを、ちゃんと両方に責任を負うという立場でこの問題を考えております。将来の展望として、国民の合意で9条の完全実施に踏み出すということです。