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2016年6月26日(日)

2016 焦点・論点

明治憲法と自民改憲案 「緊急事態」条項(中)

一橋大名誉教授 渡辺治さんに聞く

政府命令で人権抑圧

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乱用された8条

 ―緊急権の内容はどんなものですか。

 明治憲法には四つの緊急事態規定がありました。もっとも乱用されたのが、第8条の「緊急勅令」です。

 これは「公共の安全を保持し、またはその災厄を避くるため緊急の必要により帝国議会閉会の場合において、法律に代えるべき勅令を発す」というもので、これを使えば、天皇制政府は「公共の安全」のために緊急に必要だと判断したら議会を通さずに、人民の自由を制限する命令をだすことができました。

 同様に、第70条は、緊急時には政府が議会に諮らず「財政上必要な処分」ができる、つまり財政出動したり税金をかけたりできるという規定です。財政を議会に諮ることは近代市民革命の一番の原則ですが、それを天皇の命令で破れるというとんでもない規定です。

 第14条は「戒厳大権」です。これは戦時、非常時のとき、軍の統帥権をもつ天皇が「戒厳を宣告」して軍事独裁を敷くことができる規定です。軍事独裁の下であらゆる市民の自由は禁圧されます。

 第31条は「非常大権」で、政府が危機に陥ったときには天皇が憲法を停止できるというものです。

独裁への武器に

 簡単にいうと、8条、70条は政府の独裁を、14条は軍部の独裁を、31条は天皇の独裁を認めるもので、これら規定は議会の攻撃から政府を守る何重もの防壁となっただけでなく、独裁政治をつくる便利な武器となったのです。

 とくに、政府が緊急事態と認定したら議会に諮らず政府の命令で人民の自由を弾圧し人権を抑圧できるという8条の緊急勅令は、政府には使い勝手がいいことから、国家緊急権の核心になりました。

 問題は、現在の自民党改憲草案の緊急事態の規定の中には、緊急事態の宣言を発したら政府は「法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」「財政上必要な支出その他の処分を」行えるという形で、明治憲法の8条、70条が盛り込まれていることです(別表)。自民党は、戦前の明治憲法でどこが重要なのかを承知しているのです。(つづく)

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