2016年6月23日(木)
「報道ステーション」党首討論
志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は21日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」で行われた党首討論に出席し、参院選の争点などについて与野党の党首らと討論しました。
改憲問題
自民党を信任すれば9条に手を付ける危険がある
改憲問題について議論となり、安倍晋三首相は「憲法審査会で収れんしていない」、公明党の山口那津男代表も「国会で議論が成熟していない」と述べ、参院選の争点にならないと発言。これに対して、志位氏は次のように述べました。
志位 安倍さんは、何条をどのように変えていくかということは、まだいえないんだということをおっしゃる。しかし、自民党の「改憲案」を出しているということもおっしゃるわけですね。「自民党改憲案」の一番の肝の部分というのは、9条2項を全面削除して、「国防軍」の保持を明記して、こうなりますと、集団的自衛権にしても、海外派兵にしても、武力行使を伴う国連軍の参加にしても、全部、可能になります。そういう道が「改憲案」に入っているわけですね。
じゃあ、9条に手を付けることはないんですかと。この前の民放の番組で、私は、安倍さんに聞いたんですが、「付けない」とはおっしゃらない。(公明党の)山口さんの方は、「安保法制をつくったので憲法(9条)に手を付ける必要はなくなった」ということをいわれたんだけれども、安倍さんのほうは「手を付けない」とはおっしゃらない。
ということになりますと、結局、今度の選挙で自民党を信任すれば、9条に手を付けることになる危険があると、そう思います。ですから、これは、そういう道を許してはいけないということをいいたいと思います。
これに関して安倍首相は、「(自民党改憲案が)無傷で通るとはまったく思っていない」というだけで、9条改憲を否定しませんでした。志位氏は、次のようにただしました。
志位 公明党の山口さんは、「安保法制を通したんだから、9条の改正は必要ない」と、はっきりお述べになったんですよ。安保法制に対する見解は違いますが、公明党の一つの言明として重いと思うんですよ。
それじゃあ、自民党はどうなのか。安保法制が通ったから、もう9条の改正は必要ないという立場なのか。これをはっきり答える必要があると思うんですよ。
条文については、どのように変えていくかということは、まだいえないんだというふうにおっしゃるけど、「自民党改憲案」には9条改定がはっきり出ているんですから、9条に手を付けるのか、付けないのか、はっきりいう必要があります。
これに対し安倍氏は、「9条の改正案をお示ししています」と認めざるをえなくなりましたが、「憲法審査会で議論していく」として、正面から答えようとせず、「手を付けない」とは言いませんでした。
憲法と自衛隊の矛盾
国民の合意で9条完全実施にすすむ。問われるのは海外の戦争に出していいのかどうか
その一方で安倍氏は、「共産党は自衛隊は違憲だというのに災害出動はさせる、急迫不正の侵害では命をかけろ、というのはおかしい」などと主張しました。これに対し、志位氏は次のようにきっぱり反論しました。
志位 私たちは(自衛隊は)憲法違反だと思っています。ですから、将来的には、国民の合意で9条の完全実施に進む必要があるという展望を持っております。しかし、この矛盾(憲法と自衛隊の矛盾)というのは、自民党政治がつくった矛盾なんですよ。そして(この矛盾を)すぐにはなくせない。ですから、一定の期間は(自衛隊は)存続することになる。ですから、その期間は、(大規模)災害とか、あるいは急迫不正の主権侵害のときには、自衛隊の活用ということをいっております。
そして、いま問われているのは、そこじゃないんですよ。自衛隊が違憲か合憲の話じゃないんです。自衛隊を海外での戦争に投入していいのか。集団的自衛権を認めていいのかということが問われている。ここを許してはならないということで野党は結束している。
安倍首相は、「自民党が残した矛盾を使って災害出動はさせるし、急迫不正の侵害には対応する」などと再び持ち出したため、志位氏は重ねて次のように指摘しました。
志位 自民党がつくった矛盾であっても、すぐに解消はできないんだから、私たちは、将来の展望として、国民の合意でやっていく。しかし、その期間にいろんな問題が起こったら、それは、ありとあらゆる手段を使って国民の命を守るといっているわけです。
消費税問題
財源を消費税に頼るやり方は見直すべき増税しながら社会保障を削るとは国家的詐欺
消費税10%の先送りによる社会保障充実の財源について議論となり、安倍氏は「予算編成の中で検討していきたい。税収の見込みがないなかで、これができる、できないということはいえません」と述べ、低年金者への給付金や年金受給資格期間の短縮、介護保険料の軽減など公約しているものでも実施を明言しませんでした。志位氏は次のように指摘しました。
志位 (安倍政権が消費税増税分で実施すると公約していた施策)これを全部合わせても8000億くらいなんですよね。それがどうして、これができる、できないかという議論になるかというと、消費税に頼っている、財源は消費税しかないという議論の枠内でやるから、そういう議論になるわけですね。
そもそも、8%に増税するときに「社会保障のため」といったわけです。ところがやったことは、社会保障の「自然増」を削減すると(いうことでした)。安倍さんの4年間で、1兆3200億円も削ったわけですよ。このために年金給付が連続削減される。あるいは、医療費の窓口負担が上がる。介護報酬が下がる。ズタズタになっているわけです。こういうやり方をやめる必要がある。「社会保障のため」とあれほど言って、増税をやっておいて、それで削るというのは、私は国家的詐欺に等しいやり方だと思います。これを中止して、転換することが大事だと思います。
アベノミクス
首相が絶対に言わない二つの数字――実質賃金と家計消費のマイナス
さらに安倍首相がいう「アベノミクスの成果」が議論となり、志位氏は次のように述べました。
志位 安倍さんと議論しますと、いろんな数字をあげられるんです。しかし、絶対に言わない数字が二つある。
一つは、働く人の実質賃金が5年連続マイナス、5%も目減りしている。これは1990年度以降、この統計がはじまってから一番悪い数字なんですよ。賃金が実質的に減っている。
もう一つは、日本経済の6割をしめ、国民の暮らしをはかる一番の指標といったら個人消費、家計消費でしょう。これが14年度、15年度と2年連続マイナスなんですね。2年連続マイナスになったというのは、戦後初めてなんですよ。
ですから、この二つをみますと、「アベノミクス」がうまくいっている、うまくいっているというけども、一番根幹のところで逆方向を向いて、失敗ははっきりしているんじゃないか。
「大企業がもうければ、いずれは家計にまわってくる」といったが、うまくいっていない。ここを切り替える必要があります。
これに対し、安倍首相は「実質賃金は、直近の1月、2月、3月はプラスになった」と言い訳しましたが、志位氏は「落ちたときに比べてもちょっとプラスになっただけです」と批判しました。