2016年6月18日(土)
大津地裁 高浜再稼働認めず
命守る決定 再び
支援者ら安堵「うれしくて涙」
「うれしくて涙が出た」―。「原発止めて」と孫の似顔絵の横に書いたボードを大津地裁に向けた女性(72)は語りました。高浜原発3、4号機の運転差し止め仮処分決定の執行停止を求めた関西電力の申し立てを同地裁が却下した17日、支援者らに安堵(あんど)と喜びが広がりました。
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女性(62)=彦根市=は「司法の独立を貫いてくれて感動しています。エネルギー政策転換の一歩になってほしい」、男性(73)=大津市=は「国民の生命を選んでくれた。勇気づけられました」、自営業の女性(42)は「稼働している原発を止めた仮処分決定のあと、圧力もあったと思います。まともな判決にほっとしました」と語りました。
記者会見で井戸謙一弁護団長は「福島第1原発事故の原因究明が完遂していない状況では新規制基準に適合しても安全性が確保されたとみるべきでない、と改めて確認された。市民感覚に沿った価値ある決定です」と語りました。
福井原発訴訟(滋賀)の辻義則原告団長は「命、暮らし、琵琶湖を守りたい、との県民の願いにこたえる決定を再び勝ち取ることができました。異議審・本訴でも『再稼働まかりならぬ』の決定・判決を勝ち取るため頑張ります」と語りました。
解説
度重なる判断 関電は受け止めよ
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、大津地裁(山本善彦裁判長)は今年3月、「過酷事故対策などで危惧すべき点があり、津波対策や避難計画にも疑問が残るのに、関電は主張を尽くしていない」として、運転中の原発では初めての運転停止を命じる仮処分の決定を出しました。
同じ山本善彦裁判長が今回、この仮処分決定の執行停止を求めた関電の申し立てを退ける決定を出しました。決定は、仮処分を命じた内容と重なります。
関電側が立証を尽くさなければ「安全性に欠ける点が推認されるといえる」と指摘し、関電側の主張では「仮処分決定の取り消しの原因とはならない」としています。
また、具体的現実的危険性はないとする関電側に対し決定は、東京電力福島第1原発事故の原因に関する資料は不足し、「現状では原因究明が完遂したと一応にしても認められない」として、原子力規制委員会の新規制基準にもとづいて許可を得ただけで「安全性が確保されたとみることができない」と判断。「少なくとも原発の設計や運転の規制がどう強化され、それにどう応えたかの主張を尽くすべきだ」としています。
関電は、執行停止と同時に仮処分そのものの取り消しを求めて異議申し立てをしており、第1回審尋が5月に開かれ、即日終結しています。
いずれにしても関電は、司法の度重なる判断を重く受けとめ、再稼働を断念すべきです。
(「原発」取材班)