2016年6月17日(金)
きょうの潮流
始まりは24年前の夏でした。舞台はかつて福岡市内にあった平和台球場。1軍の打席に立った高卒新人の鈴木一朗選手はライト前に安打を放ちました。それが後に数々の偉業を打ち立てる最初の一歩となりました▼初々しさの残る18歳の青年には信念がありました。指導陣から否定された振り子打法を磨き、登録名を「イチロー」に変更した94年からヒットを量産。四球より打つことを貫き、この年早くもシーズン200安打を達成しています▼2001年に米大リーグ入り。日米プロ野球で成し遂げたことは数多くあれど、野球にのぞむ姿勢に変わりはありません。走攻守すべての面で、グラウンドで最大限のプレーができるよう、いまも体を鍛えて節制に努めています▼一打席一打席にベストを尽くす。そうやって25年間積み重ねてきた4257安打。ついにピート・ローズ氏の大リーグ最多記録を超えました。失敗や変革を恐れず、つねに挑戦してきた結果です▼これだけの大記録を日米合算だからと認めない声があります。ローズ氏自身も異議を。しかし日本の投手レベルや野球の進歩を見ても、イチローのそれは勝るとも劣らない金字塔です▼チームの仲間は「彼には一貫性、取り組む姿勢、敬意、そして正しいたたかい方のすべてを見いだすことができる」と賛辞を送ります。国の狭い枠にとらわれず、“世界記録”という評価も。いずれにしてもさらなる高みをめざす42歳。野球界の宝は、前人未到の足跡を球史に刻み続けるでしょう。