2016年6月11日(土)
きょうの潮流
窒素や酸素は空気、ナトリウムは塩、リチウムは電池、銅は10円玉…。私たちの身の回りにあるモノはあらゆる物質の基になっている元素が結びついて形作られ、人体も例外ではありません▼太陽のような星の内部や、超新星爆発の際に多くが生まれた元素。最初の発見として記録されたのはマッチの材料となったリンで、1669年のことでした▼その後、自然界に存在するほとんどの元素は発見され、いまの新発見は人間が最先端の技術で合成させたもの。それを国内で作り出すことに成功し、日本に初めて命名権が与えられたのが113番元素「ニホニウム」です。亜鉛とビスマスという金属を高速でぶつけました▼元素を「あいうえお…」に例え、物質の文字だという専門家も。私たちは文字を組み合わせて言葉を交わし、文章を書き、文学や歌も生み出します。さまざまに組み合って数千万種類もの物質を作る元素も同じだと▼自然界の法則が隠されている周期表に名が刻まれたニホニウム。その寿命は1000分の2秒だとか。研究チームの森田浩介・九大教授は「日常生活には役に立たないが、118種類しかない元素の一つを日本が発見したということに大きな意義がある」▼ノーベル物理学者の小柴昌俊さんは基礎科学について語っています。「人間がいままで知らなかったことが分かったという喜び、すぐに役には立たないけれども、新しいことを知った喜び」。それは、宇宙の解明にまた一歩近づいた喜びなのかもしれません。