「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2016年6月8日(水)

日本発新元素名称案発表へ 今夜

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

写真

(写真)3個目の113番元素の合成に成功した後、報道関係者に実験装置の説明をする森田浩介さん=2012年9月26日、埼玉県和光市の理化学研究所

 理化学研究所の実験チームが合成に成功して発見者として認定された、原子番号113の新元素の名称と元素記号の案が9日未明に発表されます。理研によると、国際純正・応用化学連合(IUPAC)が日本時間の9日午前0時に発表。5カ月程度の意見公募を経て、審査で妥当と認められれば正式決定されます。元素周期表に、日本発の元素名が記載されるのは初めて。

 113番元素は、理研チームが加速器実験で2004年に初めて合成に成功。05年と12年にも追加し、計3個を合成しました。ロシア・米国の国際共同チームも発見者に名乗りを上げていました。

 昨年末、新しい元素や化合物を認定するIUPACが、理研チームを発見者と認定。命名権を獲得した理研チームが今年3月に原案を示していました。

 元素名の候補は、日本にちなむ「ジャポニウム」や理研所長を務めた故・仁科芳雄博士を冠した「ニシナニウム」などが取りざたされていますが、理研は明らかにしていません。

 理研チームは、加速器を使った実験で、亜鉛原子(原子番号30)をビスマス(同83)に衝突させ、核融合反応で113番元素を合成しました。約500分の1秒(3個の平均)で崩壊します。

“努力の結晶”周期表に

日本の科学者の悲願

 いよいよ具体化される新元素の命名作業。元素周期表に刻まれるのは、日本の科学者の“夢と努力の結晶”です。ここまでの新元素探索の道のりは、困難の連続。あと一歩のところまで迫りながら果たせなかった、日本の科学者の長年の悲願ともいえるものです。

 1908年、小川正孝博士が留学先の英国で、鉱物から43番元素を発見したと報告。「ニッポニウム」と命名されたものの、別の元素(75番元素=後にレニウムと命名)だったと判明し、幻に終わりました。40年には、仁科芳雄博士が加速器実験で93番元素(後にネプツニウムと命名)を生成していたとみられますが、化学分離ができず新元素発見には至りませんでした。

◇――◇

 理化学研究所の実験チームを率いる森田浩介グループディレクター(九州大学教授兼任)が、新元素の発見をめざして準備を開始したのは80年代のことです。装置の設計・建設を終えて、2003年9月、113番元素に狙いを絞って実験を開始しました。04年には初めて113番元素の合成に成功。05年には2個目を合成しました。

 しかし、データ数が少ないことなどを理由に、国際機関による新元素の認定は先送りされました。新元素合成の証明では、崩壊のしかたを確認することが重要です。理研チームは、09年には追加実験で、113番元素が既知の原子核に崩壊することを裏づける重要なデータを得ました。一方、3個目の合成にも挑み、12年にようやく合成に成功。最初の2個とは別の崩壊パターンを観測することで、113番元素の合成を疑う余地なく証明しました。たった3個の合成に費やした実験の衝突回数は400兆回、9年間に及びました。

 一方、別の実験方法で発見者の名乗りを上げたロシア・米国チームも、実験データを補強し、多数の113番元素をつくったと主張。どちらが発見者として認定されるかは予断を許しませんでした。

◇――◇

 1869年、ロシアの化学者メンデレーエフは、元素の化学的性質に周期性があることに気づいて、周期表を発表しました。科学的社会主義の創始者の一人、フリードリヒ・エンゲルスは著書『自然の弁証法』でその業績を絶賛しています。

 当時、知られていた元素は60種類ほどでした。その後150年間で加速器などの実験技術が進歩。原子番号92のウランよりも大きな、自然界にほとんど存在しない元素も、人工合成で次々と“発見”されてきました。

 原子番号104以上の「超重元素」は、生成量が少なく短時間で崩壊してしまうため、新元素であることを証明するのは簡単ではありません。理研チームは、この困難を見事に乗り越えました。

 昨年末に113番元素と同時に正式認定された3元素を合わせると、周期表の第7周期までの118元素がすべてそろいました。

 理研チームを含む世界の科学者は、すでに119番以上の新元素探索へ始動しています。さらに重い未知の元素のなかには、比較的安定なものも存在するという理論予想もあります。新しい物質世界の探求は続きます。

(中村秀生)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって